第三章⑦
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事態が収束した後、レオンハルトは床に散らばった帳簿を見て、感嘆のため息をついた。
「いやはや、『灰色で無骨な騎士』と見くびっていたよ。キミ、相当な使い手だね。というか、なぜ衛兵団なんかにいるんだ?」
ライエルは剣の血を拭い、鞘に納めながら、レオンハルトを一瞥した。
「貴様に答える義務はない」
「フン!何を言う、騎士!この『黒鮫』など、このロードの『終焉の力』にかかれば一瞬だったものを!貴様、手柄を横取りしたな!」
詠美は、ライエルのあまりの強さに動揺しているのを隠すため、普段以上の威勢で文句を言った。
ライエルは、そんな詠美の木の枝の剣を、そっと奪い取った。
「……詠美。お前の『不治の病』の原因である『黒鮫』は討伐した。これで病は治ったな」
「な……ッ!まだ治っておらん!胸の疼きがまだ残っているぞ!貴様の手柄に、私の病が『拗れた』に違いない!」
詠美の「不治の病」は、ライエルの強さを見てさらに悪化していた。
その様子を見たレオンハルトは、ロープを解かれた手で、深くため息をついた。
「ハァ……やれやれ。キミの『ロード』としての設定は、本当に厄介だね。でも……このキミの力、そしてあの騎士の腕。ちょっと面白くなってきたよ」
レオンハルトは、深紅のローブを脱ぎ捨て、詠美が着ていた地味なワンピースと自分のローブを交換するようライエルに指示した。
「悪いが、これで借金はチャラだ。僕は自由だ。ただ……そうだな。キミたちの道中、見ていて飽きなさそうだ。それに、僕の魔術があれば、あの『灰色で無骨な騎士』の腕と合わせれば、どこへだって行ける」
レオンハルトは、ウィンクしながら詠美に囁いた。
「『王』には、僕のような『白薔薇の魔術師』が、『装飾』として必要だろう?」
「な……ッ!」
詠美は、突然のイケメンからの仲間宣言に、またもや胸がズキンと痛むのを感じた。
「フン!仕方ない!貴様の『白薔薇の忠誠心』、このロードが認めてやろう!だが、貴様は『予備の眷属』だ!心得るがよい!」
こうして、「不治の病の王」と「冷徹で最強の騎士」、そして「打算的な白薔薇の魔術師」という、最悪の三人が、マルツァの街から次の目的地へと旅立つことになったのだった。




