第1話:霊喰らいの陰陽師たち
風が静かに木々を揺らし、朽ちかけた神社の鳥居が軋む音を立てる。ここはすでに神の加護を失い、荒廃した霊場となって久しい。夜の帳の中、異様な瘴気が漂う――まるで何かが忍び寄ってくるかのように、空気が重くなる。
「気配、強まってるな。」
佐久間 昴が静かに呟いた。手に握る呪符が淡く光り、戦闘の準備が整う。彼の背後には、仲間たち――松永 修、篠宮 凛、風間 透、相沢 さくらが立っていた。それぞれが霊符や術を手にし、悪霊の襲撃に備える。
「この廃神社、昔は強力な守護霊がいたらしいけど、今はただの霊の巣窟ね。」
篠宮 凛が霊視をしながら呟く。
「で、その悪霊をぶっ潰して、俺たちはさらに強くなるってわけだ。」
松永 修が拳を鳴らす。
「慎重に行ったほうがいいわ。吸収するとはいえ、無茶をすれば逆に取り込まれるかもしれない。」
相沢 さくらは警戒心を強める。
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、神社の奥から不気味な呻き声が響き渡った。
突然、闇の奥から数十体の悪霊が飛び出した。半透明の人型をした者もいれば、獣のような姿をした怨霊もいる。それらは人間の形を保ちながらも歪んだ顔を持ち、爪を伸ばして襲いかかる。
「来たな…!」
佐久間 昴が呪符を掲げる。
松永 修は霊気を拳に込め、一撃で悪霊の頭部を砕いた。黒い霧が舞い、砕けた霊が地に溶ける。それと同時に、松永 修の身体が淡く光り、倒した霊の力を吸収していく。
「吸収完了。次!」
風間 透は精密な結界術を操り、悪霊の動きを封じる。彼が手をかざすと、空間に金色の紋様が浮かび上がり、霊の足を止めた。そこへ佐久間 昴が呪符を放つ。瞬間、大地が静かに震え、淡い緑の霊力が奔り出る。悪霊の足元から細かな蔦が芽吹き、ゆっくりと絡みつく。
それは抵抗する間もなく、静かに吸い上げるように霊の力を浄化し、空へと還していった
「連携も悪くないわね。」
篠宮 凛がニヤリと笑う。彼女は鋭い霊視の力を使い、敵の動きを先読みしながら的確に呪符を投げつけた。
相沢 さくらは後方から冷静に状況を見極め、霊の力を吸収する最適なタイミングを計る。彼女が霊気を操ると、倒された霊たちの怨念は空気中に散らず、五人の陰陽師へと流れ込んでいった。
「今回は順調ね。でも……。」
相沢さくらは何かを感じ取ったように目を細める。
「この神社にはまだ、もっと強い霊がいる気がする。」
佐久間 昴は静かに周囲を見渡し、低く言った。
「確かに……これはただの前哨戦だな。」
風間 透が持っていた霊符を取り出し、神社の奥へと向ける。すると、霊符はびりびりと震え、まるで何か強大な存在が眠っていることを示しているようだった。
「確かに……まだいる。」
佐久間 昴の手の呪符が急に燃え上がり、異変を告げる。
霊気が渦を巻き、神社の奥の社から巨大な影が現れた。
「ここに封じられていた守護霊……いや、もはや呪われた地縛霊か。」
風間 透が冷静に分析する。
赤黒い肌、獣のような四肢、歪んだ仮面の顔――この霊はかつて神の加護を受けた存在だった。しかし、長い年月を経て神を見捨てられ、怨念に変わった。
「地縛の鬼……強いぞ、気を引き締めろ!」
佐久間 昴が呪符を展開する。
松永 修は拳を構え、霊気を纏わせる。
「こんな奴、一発ぶちかまして終わらせる!」
篠宮 凛が霊視を行う。
「弱点は……胸部に封じられた霊核ね!」
相沢 さくらは式神を召喚する。
「白霊、援護!」
地縛の鬼が咆哮し、大地が揺れる。陰陽師たちは連携して攻撃を仕掛ける。
霊符と術が交差し、式神が飛び回る。松永 修の拳が霊核に打ち込まれると、鬼が苦しげな声を上げる。
「今よ!」
佐久間 昴が最後の呪符を投げた。
「破邪滅陣――神木断滅!」
佐久間昴が深く息を吸い込み、両手を広げると、轟くような霊気が大地を揺らす。
その瞬間、神樹のごとき巨大な木霊が彼の背後に顕現した。揺るぎない翠の力が渦巻き、鬼の怨念を呑み込む。その枝葉が空へと伸び、無数の根が地を這うように広がると、鬼の肉体を貫いた。
悲鳴を上げる間もなく、怨霊の力は吸い尽くされ、やがて塵となって風に散る。
残されたのは静寂と、昴の掌に宿る揺るぎない霊気のみだった――。
「……終わったか。」
息を整えながら、陰陽師たちは改めて決意する――さらなる力を求めて、彼らは次なる地へ向かう。
この神社の戦いはただの序章に過ぎない。
彼らを待つのは、恐竜の霊が巣食う未知の領域――呪・ラシックパークだった。