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シェンツァ  作者: カイト
9/13

第9話

「……どういう意味なんだ」


 理解できなかった。彼女の言葉が。その言葉の意味が。

「そのままの意味よ。私はもういらないの」

 俺は黙ったままだった。そして彼女は話し出す。

「再生計画は既に最終段階へ突入した。後はこの環境を維持していく。そしてこれからは地球外へ生活の場所を広げる必要がある。

 だけどそこに私はもう必要ない。

 すでにサルヴァトーレとして多くの時間を研究に費やした私は以前ほどの知識を持っていない。その私がこの先の計画を進めていくのは難しいことなの。

 そこで上層部は第二世代を生み出すことにした。既に私のデータがある以上、私以上の素体が作れる。

 いえ、既に新しい素体は作られている。もう数年もすれば私の役目は終わり」

 

 そこでシェンツァは言葉を切る。

「だけど……お前がいらないなんてことはないだろ」

「ううん。いらないのよ。能力が落ちてもそれはサルヴァトーレとしての話。それ以外なら十分価値はある」

「それなら尚更必要あるじゃないか」

 シェンツァは首を横に振る。

「より優れたモノがつくれるなら昔のモノはいらない。むしろ敵対勢力にとられる可能性がゼロじゃない以上……いるだけ邪魔なの」

 その言葉に俺は何も言えなくなる。

 能力が落ちていても彼女は他では使える。だがツィオーネからすれば旧式はいらないということなのだ。だから、他にとられる前に……

「ごめんなさい。こんな話をしてしまって。だけど……誰かに伝えたかったの。シェンツァという存在が消えることを」

「……いつなんだ」

「さぁ、明日かもしれないし明後日かも。それは分らない」

「お前はそれで――!」

「いいのよ」

 つい強くなった俺の語気を抑えるかのように静かな声で彼女は告げる。その目には強い意志があった。

「私はそれでいいの。生み出してもらって、そして生んでもらった恩返しはできた。だからこれでいいの」

 シェンツァがどれだけ強い意志があるのか。それが分ってしまった。だからこそ、もう俺は何も言えなかった。

 だから俺は黙って部屋を出ることにした。彼女もそれを止めない。


 俺は無力だった


 あの時と、何一つ変わってない


 結局、何も守れないままだった




 部屋を出たところで俺は椎名少尉に頼んで任務を抜けさせてもらった。シェンツァも気をつかってくれたのか研究室の薬品を吸って気分が悪くなったと言ったようだ。

 自室に向かう途中で相良中佐に声をかけれ、司令室に一緒に向かった。


 司令室には厳島副司令がいた。俺は促されるままソファーに腰を下ろす。

「……彼女から聞いたのか」

 相良中佐が確認してくる。俺は黙って頷く。

「なぜ、そんな様子なのか話してもらえるか」

「……中佐は知ってますよ。きっと」

「ヨーロッパ戦線の時の話か……」

 そこで場が静まる。相良中佐がその理由を知っているのは確実だ。厳島副司令が何も言わないのはおそらく彼女も知ってるのだろう。

 少しの間、沈黙が続いた。静寂をやぶったのは相良中佐だった。

「……守りたいのか、彼女を」

「ああ」

「それなら……この先、お前が彼女を守れよ」

 そう言って、厳島副司令はノートパソコンの画面を俺に見せた――



「不思議なものね……なぜか安心してる自分がいる」

 彼が去った部屋のなかで一人、私は呟く。

「それにしてもなんで彼があんなに動揺していた意味がわからない……」

 知りたい。

 でも、それを知るための時間は少ないのだろうか。わからない。

 ついさっきまではいつ死んでもいいと思っていた。

 けれど今は違う。

 なぜか、私は死んでしまうことへの覚悟が揺らいでいた。

そろそろサブタイをしっかりとつけたいカイトです


9話です。第1部完までラストスパート……かな?


一応続きが書けたらの話を……いや、書きますよ。なんとかして

第1部が終わったらとりあえず連載を完結し新たに「シェンツァ2(仮)」で新たに連載再開という形にするので第1部が終わってそのまま読まなくなる……だけは勘弁してください

それ以前にこの第1部を終わらせなきゃだめなんですけどね


さて、ちょっと長めの今回。シェンツァは彼にどんな気持ちを抱いているのか、自分もわからないです


それでは、また次回

ここまで読んでくださった皆さんに感謝を

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