第8話
午後二十時ちょっと前
「……飽きた」
私はキーボードを叩く手を止めた。それほど急ぐ必要の無い仕事だったけど他にすることもないから、という理由でやっていた仕事も作業的過ぎて飽きてしまった。
「次のシフトは広野准尉の番……」
昼間、彼についてはさんざん考えた。その結果、いろいろと決めたのだ。少しだけ自分の中で特別な存在になった彼に対してだ。
「こんなに気にするのは私も特別だからなのかな」
自分で言って可笑しくなる。自分で自分のことを特別なんて言うのだから。
「そうね、彼とお話もしたいし……もう少し頑張ろっと」
そう言って私はパソコンに向かいなおす。大した仕事じゃないけど私じゃなきゃできない仕事だ。
それが私、シェンツァ……いえ、サルヴァトーレとしての役目なのだから。この先、最後の仕事も
午後二十時四十五分
「それでは引継ぎ、よろしくお願いします」
「はい、お疲れ様です」
俺達は待機部屋に今はいる。
「じゃあ最初は広野准尉とイェーガー准尉が廊下で待機。次からは私、蛍倉曹長、新井軍曹の順番で一時間毎に一人ずつ交代のシフトで任務にあたり――」
「あら、間に合ったみたいね」
椎名少尉の説明を遮って研究室側の扉が開く。当然、出てきたのはシェンツァだった。
「おいおい、お姫さんの登場かよ……」
ラディが呆れたように言う。俺以外は突然のシェンツァの登場に驚きを隠せないでいた。
「私はお姫様なんて立場じゃないわよ。そうね、救世主様とでも呼んでもらおうかしら」
「これは手厳しい救世主様だな。俺を助けてくれないとは」
シェンツァの言葉にラディは普段と同じように言い返す。
「あら、今回は言い返したのね。そうじゃなきゃ弄りがいがないわ。ま、それはそれとして……」
シェンツァがテクテクと俺の方に歩いてきて指さす。
「彼、借りていってもいいかしら?」
俺の了承はとらずに椎名准尉に尋ねた。
「……広野准尉はこれから任務です。ですので――」
「私が研究室の警備を彼に命じた。これなら借りていけるわね」
「そ、そう言われると……」
「じゃあ決定」
そして歩き出す。俺は椎名准尉に視線を送ってから彼女の後を追う。
「いらっしゃい。適当に座って」
そういうとシェンツァは近くにあったイスに座る。俺は座る事無く壁によりかかる。
「……座ってと言ってるのだけど」
「仕事中だしな。それに他に座るところなんてそのモニターの前のイスかベッドしかないじゃないか」
「別に気にしないから。上見て話すと首が疲れるの」
「はいはい」
そして俺はベッドに腰を下ろす。一応、拳銃はすぐに取れる位置に置く。
「で、シェンツァは何の用があって俺を呼んだんだ?」
「ちょっとお話したいだけ。その前にちょっといい?」
「何?」
「あなたのことは広野って呼ばせて」
「別に構わないが……」
特に呼び方にも呼ばれ方も気にしていないので俺はすぐに頷いた。だがシェンツァは俺の反応が気に入ったのか嬉しそうに笑うとイスを立って俺の隣に座った。
「あ、悪いけど反対に座ってくれるか?」
「どうして?」
「そっちに座られると銃が抜きにくいんだよ」
「広野は気にすぎ。そんな気にしなくても安全なのに……」
そう言ってシェンツァはベッドの上を移動して反対側に座りなおした。
「ほんと、これが俺より長生きしてる救世主様ね……」
「見た目に合った行動でしょ。それに、遊べる時には遊んでおかないとね」
「はいはい……」
「そういえばお昼、ずいぶんと楽しそうだったじゃない。何してたの?」
「あれか……射撃訓練の後、俺の歓迎会だそうだ……」
「お疲れさま。イェーガー准尉相手じゃ大変だったでしょ」
「ああ、ほんとうにな。で、お前はこんな世間話がしたかったのか?」
「んー、少し早いけどま、いっか。話したいことっていうのはね――」
そこでシェンツァは一度立ち上がり俺の前に立って少し腰をかがめて俺の顔を覗き込む。そして
笑顔で、思わず見とれるくらいの笑顔で
「私は――――」
彼女は告げた
「もう、いらない存在なの」
彼女に未来がないことを
はい、カイトです
ここから第1部は急展開。作者が限界だってことはありませんよ。ただ第2部についてはまだ試行錯誤中です
ようやく話が動き出した、といった感じです。長かった……
本当はもっと水樹を動かしてやりたいんですけどね。それはまだお預けです
実は第1部はサブタイもあったのですがあまりにもネタバレすぎるので消しました。2部あたりで発表します
さて、前回どおり今回投稿周期が短い理由は簡単
来週忙しいです
なので上げれるうちにあげておきます。ブログもあるので
では、短いですがまた次回
ここまで読んでくださった皆さんに感謝を