第7話
午前10時01分32秒
私はいつものようにまずは前日の作業の確認を行う。
……うん。特に予定と遅れはない。むしろ予定より早いペース。
だけど早くやる必要なんてない。いえ、やる必要すらない仕事なのだ。これは。
『ここ数年の環境状況変化のまとめ』
こんなもの数十パターンも想定してある予想パターンに当てはまるものがあるのだ。
それでも私はこの仕事をしないといけない。ツィオーネの上層部からの指示。そして何より今後の変化を見守っていくのが私の最後の仕事なのだろうから。
「さて、今日のお仕事始めようかな」
こうして私の1日は始まった。
眠っていた間に収集したデータを簡単にチェックする。とくに漏れはないようだからチェックの項目はいくつか省いてデータの仕分けをする。
「はぁ、我ながらよくここまで回復させたわね……」
目の前に出ている数字の羅列を見て思う。私が活動し始めたときに比べると格段によくなっている。
しかし状況は下降気味。おそらくこれ以上の改善は難しい……いえ、不可能に近いのが本当だ。
わたしとは関係のないところで次のプランも動き出しているらしい。
私が知っているのはタイプセカンドと呼ばれる第二世代のサルヴァトーレに関することだけだ。それについても私の今までの観測データなどを参照しただけで詳しくは知らない。
(ま、そんなこと考えていても私の状況が何か変わるわけではないし)
そこで私は仕事の方に専念する。どうせ結論はでないことなのだから。
午後12時22分31秒
仕事に一区切りついたところで私は軽い空腹感を覚えた。
(毎回思うのだけど研究員の人も私が言うまでご飯について何も言わないのやめてもらえないかしら)
融通が利かない研究員にお昼のことを告げる。研究員が持ってくると言ったが私はそれを断って自分で食堂に行くことにした。
当然のごとくボディーガードがついて歩く結果になったがこれくらい気にしないことにした。
(あの部屋で黙々と食べるのつまらないのよね……ここぐらい騒がしい方が食も進むし)
さすがにカウンターまで行くわけにはいかないので適当な席に腰を下ろす。多くの人は12時前に昼食を済ませるだけあって席は結構空いていた。
しばらくまっていると頼んだメニューを持ってきてくれた。サンドイッチとコーヒーという簡単なメニューだけど私にはこれくらいで十分。
(あとはこの人たちさえいなければもっといいのだけどね……)
結局、私は静かに食べることになった。誰かと会話しながらご飯なんてもう長い間していない。せめて騒がしいところで食べれば気分は変わるかと思ったけどボディーガードが邪魔だった。
半分ぐらい食べたところで食堂の一角が盛り上がっているのに気がついた。
ボディーガードの間からその方を見るとそこでは昨日来た広野准尉と何人かが騒いでいるのを見つけた。
(広野准尉か)
昨日会ったときから彼に対して不思議な感情が生まれていた。なんて言えばいいのだろうか……
「…………好奇心?」
「どうかしまたか?」
「いえ、何でもないわ。お茶もらってきてくれない」
「はい」
(考え事を口に出すのは私の悪い癖ね……直さないと)
その後出てきたまずいお茶を一口だけ飲んで部屋に戻った。
午後5時55分55秒
「数字も響きも揃ったわね」
私は夕飯を持ってきてもらうように頼んですこしベッドに横になった。
(そういえば今夜の夜勤はγ分隊……)
頭をよぎるのは広野准尉だった。
(そうね。彼なら……話しても大丈夫かも。ううん。「かも」じゃない。大丈夫)
なぜだろう
彼になら伝えてもいいと思える。シェンツァというモノのことを
いったい何なのだろうか
彼に対するこの想いは
だから、話そう。きっと、そこから何かが始まるから
カイトです。ボカロではありません
今回はシェンツァ視点のお話。これぐらい入れとかないと本人に怒られそうなので……
前にも書いた気もしますがこの小説は全3部構成になっています
実際のところ、第2部でやってしまおうか悩んでいるのですが結局3部構成になりそうです。そこらは臨機応変に行こうと思います
さて、そろそろ更新頻度があがるかと思われます。できれば今月中に1部は終わらせて2部に入ろうと考えています
そしてskypeの方で「シェンツァの綴りってなに?」と聞かれたのでここで返事を
綴りは「 scienza 」です
イギリス英語からつけたのでアメリカ英語と表記が違います。赤線のチェックが入ります
次回は金曜か土曜です
では、ここまで読んでくださった皆さんに感謝を