第6話
「お待たせしました、少尉」
相良中佐との話を終えて部屋から出ると外で待っていた椎名少尉に声をかける。椎名少尉は「では分隊の方へ向かいましょうか」と言って歩き出す。
(…………中佐は何を考えているんだ。なぜあの話を俺に……)
俺はさきほど聞いた話の意図を理解できないでいた。内容もあれはまるで俺に――
「准尉?どうかしたの?」
「い、いえ。少し話が難しかったので考え込んでいただけです」
「……話せる内容なら話してるってことね」
「……すいません」
椎名少尉は相手との一線を上手く見極めてくる。こういう人間は戦場でもその感覚が役に立つ。だからこそ俺と同じ英雄などと呼ばれているのだろう。
一つ上の階に上がるとそこは分隊ごとの部屋があった。護衛任務を受けている分隊の部屋は階段のすぐ近くにあった。
椎名少尉がノックをして扉を開ける。そこには残りの3人の分隊員がいた。部屋の中央には机があり両サイドに質素なソファー、そして奥に事務ようの机が置かれている。
「今日付けでこのγ分隊の隊長への配属になりました。椎名伊織少尉です」
「同じく、広野水樹准尉です」
何度目か分らないあいさつをする。いつものことだが新しいところに配属になると同じ挨拶を一日中す
ることは多い。だが配置によってはまったく挨拶をしないこともよくあることだ。
「ども、副隊長のラディ・イェーガー准尉っす」
一番奥に座っていた長髪で金髪の男が最初に名乗った。敬語を使わないことに椎名少尉は嫌そうな顔をしたがイェーガー准尉は気にしていないようだ。
「蛍倉真曹長です」
右側のソファーに座っていた黒髪の男が今度は挨拶を返した。それに続いて反対に座っているこちらも黒髪をした女性も立ち上がる。
「新井香奈。軍曹」
それだけ言うと彼女はすぐに座った。無口なのだろうか?
改めて階級をみると士官が一人の准士官が二人もいる。普通の護衛任務では分隊をまとめる者が大尉などの士官なのはよくあることだが分隊の隊長、副隊長が士官レベルなのは珍しい。それだけこの任務が重要だと言うことを認識する。
「で、隊長殿にはこれらの書類のチェック頼んます。広野の方はそっちの二人と適当に話でもしててく
ださい」
「いきなり呼び捨てか、イェーガー准尉」
「同じ階級だし。俺のことはラディで頼むぜ」
「ああ、よろしく頼む」
椎名少尉とラディの話が終わるまで俺達三人は挨拶と軽い自己紹介をした。二人の話が終わり分隊内での各自の動きについての話し合いを始めた。
「まず各自の立場については私がこの分隊の隊長。それで副隊長がイェーガー准尉ってことに異論はないわね」
全員が頷く。階級が高い者が隊長に就くのは当然。そしてこの分隊で活動経験がある者が副隊長になるのだから俺は何も不満を感じない。
「戦闘時には私が指揮。副指揮としてはイェーガー准尉ではなく椎名准尉に取ってもらおうと思う」
「え、俺なんですか?」
思わず疑問が口に出た。副隊長がそのサポートとして指揮の副官になるのが普通なのだから。
「そこについては蛍倉と新井は知ってるけどな、俺の分野は情報系。つまるとこ後方支援が得意なんだよ。そんなやつが指揮するよりは実戦経験豊富な広野の方が適任だっつー結論だ。お前らもそれでいいだろ」
「ま、ラディ准尉は前もそうでしたからね。どうせそうなると思ってました」
蛍倉が同意する。新井も黙って頷く。
「というわけで、広野准尉。よろしく」
そういうと椎名少尉が手元のパソコンに打ち込む。俺としては別に立場なんて関係ないのだけどな。
「それで、イェーガー准尉は情報支援。蛍倉曹長、新井軍曹の二人は私達のサポートということで」
蛍倉は短く答え新井は頷く。
とりあえず今夜から既に警護任務が始まるので各自の腕前を確かめるということで射撃場に向かったのだった。
「もっと……出番欲しいわね」
「どうかしましたか?」
「ええ、メインヒロインなのにここまで出番がないことに愚痴を言ってたの」
「は?」
「ま、次回をお楽しみにね☆」
「あの……サルヴァトーレ、どうしたのですか?」
「な・ん・で・も・な・い☆」
お久しぶりです。カイトです。
色々ありましてずいぶんと投稿が遅くなってしまいました。これからは週2~3話のハイペースでいきますよ。今月中にそこそこ進めないとだいがくいってから大変なので
ようやく分隊配置ですね普通その日のうちに全部やるものなんですけどね。ま、特別なのでしょうがない。
さて、ここから話は進んでいきます。
ここまでフラグ立てて大丈夫なのか!?不安です!?
また次回!次回はシェンツァが主役です!
では、最後まで読んでくださった皆様に感謝を