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教師たちの反応は生徒たちとは異なるものだ。
運動はダメだがとにかく成績は良い。
全国模試なら総合で上位30位内に入ってしまう。
そんな優秀な生徒に対しての差別意識はある。
絶対に学校にいてもらいたい生徒であると。
進学校でもある高校である。
この少年の成績なら日本国内で不合格になる大学はない。
医学部を受験してもすべて合格になる。
担任教師は変に思うどころか個性的な生徒だという認識でいる。
少年は一軒の家に入った。
表札は酒井とある。
少年の名前は北見沢涼華。
名前だけ見ると女の子だと思われる。
だがれっきとした高校2年生の男子だ。
涼華の両親は亡くなっている。
14年前、涼華が3歳の時に両親とともに車に乗って外出。
日曜日で仕事も休み。
昼前に涼華の父親がハンドルを手にした車は大型ショッピングモールであるららぽーと横浜に向かっていた。
当時の北見沢家は神奈川県に住んでいた。
ららぽーと横浜までは緑産業道路を利用していた。
ららぽーと横浜の前にある神奈川県道6号線だ。
あと少しで到着というところで大型トラックとの衝突事故が起こってしまった。
原因としては大型トラックの運転手による居眠り運転だ。
ほんの一瞬ではあったが眠気に耐えられずに目を閉じて運転してしまったことが原因だったらしい。
死亡者は涼華の両親も含めて4名。
重軽傷者はトラック運転手も合わせて9名。
かなりの大事故になっていた。
涼華も重体として救命救急センターへ運ばれてきた。
かなり危険な状態で生還できないのではと医療関係者たちは怯えながらも懸命な治療を進めていた。
予断を許さない状態が続いていた。