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1時間ほどで多少の痛みは治まったようだ。

のそのそと立ち上がってゆっくりと歩き始める。

ショルダーバッグは肩からかけ直す。

歩くとその振動でズキンといろんなところが痛む。

なのでゆっくりゆっくりと足を進めていく。

痛みからくる冷や汗と情け容赦なく照りつける暑さの汗もあってダブルで全身汗だくだ。

それに汚れもある。

掃除もされてない建物の床に転がったりしたからだ。


建物の外に出ると人の目がある。

行き交う人はちょっと驚いたような目を少年に向ける。

中にはどうしたのと声をかけてくる人もいる。

親切心から心配して声をかけてくれている人たちなのだが、少年はそれらの声をことごとく無言で通りすぎていく。


少年は三鷹駅には向かわない。

元々はこの駅で降りるつもりだった。

向かってる先は自宅だ。

三鷹駅と武蔵境駅の間あたりに帰るべき家がある。

痛くても汗びっしょりになっても時間をかけて三鷹駅から続く桜通りを進んでいく。

野鳥の森公園、西久保公園を通りすぎたら自宅には近い。

一軒家だ。

周囲は住宅地でそれほど高い建物はない。


少年には痛みがまだある。

腹を中心に顔なども痛む。

腫れているのがわかる。

こういった暴力は何度も経験していた。

小学生の頃はごく普通の平穏な日々を送っていた。

中学生になるとその平和な状況が徐々に崩れていった。

学業における成績は良かった。

トップ3の常連だった。

学業としてはどんどん伸びていくのだが、それに反比例するかのように身体的な成長がない。

周りとの差はどんどん開いて行くばかり。


中学校に入ったばかりの頃は普通だった。

だが1ヶ月もすぎるとちょっと浮いた存在になっていた。

少年は大人しすぎるというか感情の起伏がほとんど見られなかった。

自分から話しかけることはなく、話しかけられても無言でいるかたまにひと言だけ返すといった有様だった。

これではまともな会話が成立しない。

だから友人はできない。


そして少年の家庭環境についての噂もクラス中に広がった。

少年には両親がいない。

兄弟もいない。

真相がわからないまま様々な尾ひれがついて広まってしまった。

中学生ともなると異端者を排除しようとする者も現れてくる。

それがいじめに繋がったりもする。

ただ予想外に少年の学業での成績が良かったためなのか、露骨ないじめには躊躇する者も多かった。

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