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この世界では鬼が嗤う−桃太郎rebirth  作者: 弁財天睦月
「目覚め」

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2-2

比呂樹の父親は神奈川県に本店を置くホテルチェーンの経営者。

全国展開するほど大きくはない。

それほどの家なら涼華1人を引き取ることなど簡単なことではないのかと疑問をぶつけた。

それに対して長沢弁護士の返答は、言いにくいことですがと前置きがあってちょっとぼかしたような説明があった。


その説明を要約すると跡目争いや財産分与などの親族間での大問題が発生してしまうため北見沢の家としては引き取りは拒否したいということだ。

その代わり養育費の支払いは毎月行なっていくと提示された。


月に50万円、年で600万円の養育費を受け取るという条件で酒井の家で北見沢涼華を引き取ることにした。

酒井の家は決して裕福とはいえない。

月に50万円がプラスされたら家計としてはどんなに助かるだろうかとの打算が確かにあった。


現在の酒井家は叔母である歌澄、48歳。

叔父の勇輝、47歳。

そして1人娘の愛奈まな18歳で高校3年生。

涼華とは違う高校に通っている。

酒井の家族と涼華との折り合いは良いとはいえない。

その原因のほとんどは涼華にある。

とにかく無口、無表情、無感情などの無い無い尽くしのオンパレード。

最初のうちは、それでも両親を亡くしたりしてかわいそうだと気を使っていた。

年月が経っても涼華は一向に変わらない。

感情の起伏などはまったくない。

体の成長も小学生時点で止まったようである。

高校2年生にもなる男子で身長148センチは明らかに異常だ。

今では必要最低限の接触しかしなくなった。

薄気味悪さも感じていた。


涼華は起きてまずトイレに入った。

上はTシャツを着ているのだが妙に突っ張る。

真夏で起きた時からすでに汗ばんでいたからだと思った。

トイレから出て水分補給のためにキッチンに入った。

エアコンもつけてなくて部屋も締め切っているのでただ暑い。


冷蔵庫から冷たい飲みものを取り出そうとした。

奇妙だ。

変な感じだ。

具体的に何がってわかったのは冷蔵庫を開けた時だ。

目線の位置や伸ばした腕の位置ではっきりとわかった。

その前にも変だとは感じていたがはっきりと気づいたのはこの時だ。


身長が伸びてないか?

体も大きくなってないか?

この疑問はその通りで正解だった。

148センチの身長はたった一晩で155センチまで伸びて体も一回りは大きくなっていた。

だからTシャツのサイズが合わなくなっている。

たった1日寝ただけで急成長している。

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