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この世界では鬼が嗤う−桃太郎rebirth  作者: 弁財天睦月
「目覚め」

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目覚め 1-1

1


7月。

学生たちはすでに夏休みに入っている。

そして今年もすでに猛暑だ。


JR中央線三鷹駅のホームに東京行きの特別快速が入ってきた。

1日の中で最も暑くなる午後3時になろうかとする時だった。


平日の昼すぎではあるが人はそれなりに多い。

夏休みだからか子供たちの姿もチラホラとある。

ホームの後方に3人の若い男たちが電車を待っていた。

特に怪しさがあるというわけではない。

だが会社勤めの雰囲気はない。

学生という感じでもない。

つまり何の仕事をしてるのかは見た目からはわからないといった3人だ。

でも生活はできているという東京ではよくいる人種のようだ。


電車のドアが開いた。

開くと同時に誰よりも早く乗ろうとしたのが3人組の中の最も若い金髪の男だった。

無理やり乗ろうとした金髪の男に飛び出してきてぶつかってきたのは子供。

おまけに足の脛も蹴られている。

その子供は止まることもせずに小走りだ。


チッと舌打ちした金髪の男はその瞬間に憤怒の形相。

頭にくる血が昇りやすいらしい。

その表情にはまだ幼さがある。

この男も未成年かもしれない。

すでに両足は動いている。

反応は素早い。

他の2人は無表情でいる男とやれやれといった表情の男。

金髪の男よりは年上だと思われる。


「おい、待てこら」


金髪の男はぶつかって知らん顔で逃げていく子供の腕をムンズと掴んだ。

追いつくのは簡単だった。

その子供の顔を見た瞬間、女の子かと思った。

金髪の男はちょっと引いてしまった。

女の子だったら苦手だ。

軽く文句を言って終わりだ。

だが小柄で華奢な体型ではあったがどうやら男の子のようだ。

それなら話は別だ。

この時点ではそれだけのことだった。


その小柄な男の子は何歳くらいかはわからない。

中学生くらいか?

へたすると小学生かもしれない。

少年はチラッと金髪の男を一瞥した。

そして無言で表情の変化もなくまたスタスタだ。

この態度で金髪の男がピキ〜ンと切れた。


「おいこら、ちょっと待てや。

人にぶつかっておいて無視かよ。

謝りもしねぇのか?」

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