憎愛 2話
大学卒業を間近に控えた1月、私は、写真部の部室で後輩と話をしていた。
その後輩の女子とは特に仲が良かったわけではないが、時々話す程度だった。
その子はアニメが好きで、私はあまりアニメには詳しくなく、その子がハマっているアニメの話をただにこにこして聞いているだけであった。
しかし、その子が何の話の流れか、鞄のなかから1枚のポストカードを出してきたのだ。
「君島先輩、たしか演劇好きって言ってましたよね」
流れるようにポストカードを私の手に握らせる。
「友達に貰ったんですけど、なんだか有名な俳優さんのパーティーがあるらしいですよ」
私は、カードに目を向ける。
「秘密のパーティー
俳優を目指す方に向けて、森に隠れたレストランでパーティーを行います
未来の演劇界を担う若人のみなさん ぜひお集まりください」
あまりの胡散臭さに私は笑ってしまった。
「ねえ、これってセミナーとかじゃない?
よくわからない壺を買わされるやつ」
その後輩も笑った。
「私も絶対怪しいって思うんです。
でも、友達に押し付けられちゃって」
私はもう一度カードに目を通す。
「2月18日 日曜日 19時より
場所は、このカードをタクシーの運転手にお見せください」
場所すら秘密のパーティーなのか。
一体何をするのだろう。
「たぶん行かないと思う。
でも、面白いものをありがとう」
後輩に礼を言って、私はそのカードをリュックのなかに押し込んだ。