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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

サンタさんがいないとでも思ったか!!!

作者: カオス

どうも

またしても勢いで短編を書いてしまった男カオスです。

彼女なんて画面の中にしかいないので、クリスマス・イヴも寂しく小説を書いてました。

宜しくお願い致します。


※文字数多めです。

『お姉ちゃん、だあれ?』


 雪が積もる街で、ボロボロの服を纏う子供が一人。今はもう夜中だ。察するに帰る家がないのだろう。明日を生きる食べ物すら持っているかも怪しい。


 そんな彼に、ミニスカサンタ服を纏う美女と、トナカイのコスプレをする俺が一人。


『私はサンタだ。お前にプレゼントをやろう』


 サンタ美女がそう言うと、袋の中から四角形の光の塊を出して、それをプレゼントボックスの形に変えた。


『これをくれてやる。開けるといい』


 子供はプレゼントボックスを開けると、手袋と新品のシャツとコート、更には食べ物や土地の権利とその土地に建つ空き家の所有権、そしてありったけの株式証券、最後にサンタ美女のブロマイドが入っていた。


 いや、最後のなんだよ。


『ええーーーーーーー!?』


 子供は貰ったプレゼントに驚愕した。それはもうめっちゃ良いリアクションをしてくれた。まあ無理もない。明らかにオーバーキルかってくらい貰ってしまったからな。


 というか、土地と家と株に関してはもう、どうすればいいか理解できないのでは?


 そう思っていたが、


『ヒャッハーーーーーー!!!!! これで俺は大金持ちだああああああああああ!!!!!』


 めっちゃ意味分かってた。そして貰った瞬間、人が変わったように狂喜乱舞を披露した。大丈夫かこの子。


『これで色んな女を俺の物にできるし、俺をコケにしたあのクソゴミ野郎をぶちのめせるぞーーー!!!』


 なんかヤバいこと言ってる……。助けない方が良かったのでは?


『ヒャッハーーーーーー!!!!! これでマッチ配ってる女を救うことができるぞおおおおおお!!!!!』


 良い奴だった。でも、マッチ配ってる女限定なの?


『ヒャッハーーーーーー!!!!! これで恵まれない子供達を助けることができるぞおおおおお!!!!!』


 お前もついさっきまで恵まれない子供だったんだが。


 あとヒャッハーヒャッハー言いすぎだろ。お前は世紀末世界の人間か。


『ありがとよ!!! ねーちゃんにトナカイの兄ちゃん!!! この恩は忘れねえ!!!』


 子供は、おっさんみたいな感謝の言葉を放った後、その場をあとにした。


『ずいぶん切り替えが早い小僧だったな』


 あの子供に対する素直な感想を呟いた。


『まあ、何にせよ、あの子供はこれで救われた。きっと将来は起業家になり、たくさんの人間を救うだろうよ』


『何で分かるんだ?』


『なんとなくだ。次行くぞ』


『お、おう』


 サンタ美女は、()()()()()()を作り出し、次の目的地に向かって、飛び込んだ。


 そのホールの中は、四方八方何もかもが宇宙空間を映し出しており、その光景に反して、酸素はあるし、重力が乗った透明な足場が存在する。


『次はどこに行くんだ?』


 この異空間ホールは、開いた本人が行き先を決めた時点で次のホールが開くようになっている。


『そうだな……次はちょっと複雑な世界に行くか』


 この異空間ホールは、どんな世界にでも行ける。別の世界線や時代を超えることもできる。そんな無数の世界の中でどう選ぶかと言うと、この美女サンタの“人が心の底から求める物”を察知する能力で決めている。


『そうか』


『お前もずいぶん慣れてきたな』


『そうか?』


『そうさ。あの頃は取り乱して、()()を受け入れなかったじゃないか』


『そういえばそうだったな……懐かしい……』


 俺が何故こんなふざけたコスプレをしているのか。それを少しだけ語ろうじゃないか。


 《出会い》


 サンタさんはいる!


 純粋だった頃の俺はサンタの存在を百パー信じていた。


 クリスマスになると、枕元には必ずプレゼントボックスが置いてあって、それがただ嬉しくてしかたがなかった。何よりサンタという神秘的で不思議な存在にわくわくしたもんだ。


 親はサンタさんが来て、プレゼントを置いていってくれたんだよ、と言っていたが、もちろんそれは嘘だ。


 普通に親がデパートでプレゼントを買って、普通に夜中に枕元に置いただけだ。


 知らん大人が不法侵入してプレゼントを置くって、よくよく考えたら倫理的に大問題だし、全国の子供達に一人残らずプレゼントを送るなんて現実的ではないだろう。


 サンタさん=保護者。この式が崩れることは未来永劫ないだろう。そう思っていた。


 しかし、ある日それは突然現れた。


『初めまして。私はサンタだ』


 俺の部屋に不法侵入するサンタ姿の女が、意味の分からない自己紹介をした。


 なんだこのふざけた女は。と思ったが、よく見ると結構美女だったので、通報せずに思わず話を続けてしまった。


『お、俺は家馴(やなれ)鹿夫(ししお)だ』


『知ってるよ』


『何でだ?』


『家馴の馴に鹿夫の鹿で馴鹿(トナカイ)と読めるからだ』


『俺を知ってる理由になってねえよ。それと名前いじるの腹立つからやめろ』


『何を言う。私の言うトナカイは馴鹿ではなく、助手(トナカイ)だ』


『何を言ってんのか、よく分からんのだが』


『では最初から説明しよう。トナカイ君、きみは――』


 それから話してみて分かった事は、俺は社畜になりすぎて過労死したこと。転生前の俺はサンタの助手(トナカイ)に選ばれたと。その女は生まれながらの使命を背負って、ずっと昔から人にプレゼントを配っていたそうだ。


 とても信じられなかったが、サンタさんは本当に実在した、というわけだ。ただの概念なんかじゃなかったんだ。


『じゃあ俺も今までクリスマスにアンタからプレゼントを貰ってたのか』


『ああそうだ。でも、私の存在が企業秘密になる故に、親が枕元に置いたことにしたんだがな』


『記憶改ざんもできるのか?』


『ああ、魔法でな』


『魔法?』


『そうか。()()()()()()魔法は存在しないのか』


 まるで他の世界には魔法が存在するような言い方だな。


『魔法はな、この世界ではファンタジーに思うかもしれないが、“魔力”さえあれば誰にでも使うことができるんだ』


『ほう、魔力か』


『そうだ。その魔力は人によって量が異なる。トナカイ君の場合は異常に魔力が多い』


 俺にそんな才能があったのか……まあ、気づくわけないが。


 てか、トナカイ君って……もう早速助手(トナカイ)扱いされとる……。


『あぁ、だから俺が選ばれたのか?』


『そうだ。私一人の魔力では全ての子供たちの願いを叶えることができない。だからトナカイ君、君の力を借りたいというわけだ』


『なるほどな』


『まあ、どの道お前には断る選択肢は実質ない。なぜならお前の次の転生先は……また社畜だからだ』


『なんでまた社畜なの?』


『知らん。神はどうしてもお前を社畜にしたいんじゃないか?』


 神よ。俺に何の恨みがあるんだ。


『その点、うちなら心配ない。完全週休二日制、有給休暇あり、年2回賞与あり、もちろん保険も完備している。実にアットホームな職場だ』


『アットホームな職場って言ってるところは大抵黒いぞ』


『黒? 今日の私の下着のことか?』


 サンタ女は服を脱いで上半身を顕にした。


『おい、やめろ脱ぐな』


『服のままがいいのか、変わった趣向だな』


『そういう意味じゃねえよ!』


『まあまあ、あとでいくらでも聞いてやる。それよりも初仕事だ。行くぞ』


 黒いホールが目の前に出現した。異空間ホールというらしい。


『は? なんだあれ?』


 サンタ女は説明義務を放棄し、俺の腕を掴んで黒いホールに飛び込んだ。


 そして、俺は断る間もなく、子供たちにプレゼントを配るという仕事を毎日させられた。


 それから3ヶ月が経過した。



 《現在(いま)


 今日も俺達はホールに入っては子供達の部屋に不法侵入して、四角形の箱を置いていく作業をひたすら繰り返した。


『ふぅ……さすがに疲れたな』


 今日だけでもう30件は配った。魔力を消費すると疲れやすくなるが、それだけではなく、家に入る度に申し訳ない気持ちになりながら、起こしたら終わりというプレッシャーもあって、かなりしんどかった。


 もう疲れたよパ◯ラッシュ。


『次で最後にしよう』


『あぁ……』


 疲労が強すぎて、雑な返事しかできない。


 そして、本日最後であろうホールの中に足を踏み入れた。


 特に変わった世界ではないが、極寒の地だったのでめちゃくちゃ寒い。今回の目的地は町外れにあるごく普通の家だ。


『さっさとプレゼント置いて帰ろう』


『プレジデント置いて帰る?』


『プレゼントな。聞き間違えで世界的な一大事を起こすな』


 しょうもない雑談をしながら目的地にたどり着く。


『あれ? なんかあの家襲われてね?』


 目的の家は既に強盗二人組に襲われている真っ最中だ。


 家は火に襲われ、父親と母親と思われる二人は血を流して倒れている。


 中を見ると、子供が強盗二人組に抵抗している。


『よくもお父さんとお母さんを!!!』


『てめえが弱えから悪いんだよ、このクソガキ!』


 強盗の一人は子供に強い蹴りを入れた。


『金目のものはおおよそパクった。町の連中に気づかれる前に、さっさとズラかるぞ!』


 強盗二人組は車に盗んだものを積みに行った。


『おい、早く助けに行かねえと!』


 だが、サンタが俺を制止するように手を前に置いた。


『待て』


『何言ってんだよ!』


『私達の任務はあくまでプレゼントを贈ることだ』


『それどころじゃねえだろ!』


『勘違いするな。助けないわけじゃない。サンタの仕事というのはな、心の底から望んだ物を贈るんだよ』



 《まだ幼き子の嘆き》


 僕は無力だ。僕の力ではあの強盗2人を止められない。


 お父さんとお母さんが大事にしていた物を全部盗られて、家まで燃やされてる。


 今お父さんとお母さんも血を流して倒れてる。幼い僕にだって分かる。このままじゃ2人は死んじゃう。まだまだ話したいことがあるのに、大きくなった僕を見てほしいのに。


 だから、サンタさん! 助けて下さい!


 僕へのプレゼントはいらないから、二人を助けて下さい!


 そう祈り続ける僕の元に、光り輝くプレゼントボックスがゆっくりと落ちてきた。


『なに……これ……?』


 おそるおそる開けてみると、そこには――


『こ、これは!?』



 《一方、強盗は》


『よーし、これで全部積み終わったな』


『ふぅ、なかなか骨が折れたな……』


 家に大量の高級品や重い金塊まであったので、大人の男2人が運ぶのにかなりの時間を要した。


『まだ町の連中は気づいてねえみてえだが、早く行こう』


『そうだな』


 2人が車に乗り込もうとしたその時――


 どこからか飛んできた銃弾が車のタイヤに穴を開けた。


『うわっ!? な、なんだ!?』


 燃え盛る家の中から拳銃を持った子供が現れた。この子供は先程強盗に蹴られた子供と同一人物だ。


『あのガキ!』


 激昂した強盗の一人が子供めがけてナイフを突き出す。


 子供は杖を取り出し、凶暴そうな犬を召喚する。子供が命令するように腕を振り下ろすと、犬は強盗のナイフを持つ方の腕を噛んで妨害する。


『なんだこの犬っころ! 離しやがれ!』


 そうしている間に子供は更に犬をもう一匹召喚し、強盗を再起不能にさせるまで攻撃させた。


『ああああああああああああああああああ!!!!!』


 もう一人の強盗は仲間を見捨てて、逃げようとしたが、子供は今度は大きな()()()()を召喚し、逃げ場を塞ぐように道に置かせた。


 強盗ザマァだけど、ドラゴンはいくらなんでも過剰戦力(やりすぎ)だと思わなくもない。


『あ……あぁ……なんだ……これ……』


 強盗はショックのあまり意識を失い、道の真ん中で倒れた。


 だが、これで終わりではない。


 子供は杖で血まみれで倒れている両親を治癒してから、雨を降らせ、家を消火した。


 さらに家を元通りにする魔法も使うと、杖も銃も役目を終えて消えていった。それと同時に召喚したモンスター達も光の粒となり、空へ還るように消え去った。


 こうして一家に平和が戻った。



 陰でサンタとトナカイは見守る。


『これにて一件落着だな』


『なるほど、今回はあの子に杖と銃をプレゼントしたんだな』


『それだけじゃない』


『どういうことだ?』


『考えてもみろ。せっかくのプレゼントなのに、これではマイナスから0になっただけではないか』


 強盗が来ない平和な日々を0とするなら、確かにそうだな。


『マイナスを打ち消すのはもちろん、サンタからのプレゼントはプラスでなければならない。見てみろ』


 サンタから家の中を壁越しに覗ける双眼鏡を貸してもらった。犯罪に使っちゃダメだよ。


『これは……!』


 机の上には、大きなケーキ、チキン等の料理。さらに子供が好きそうなおもちゃと、子犬が置いてあった。


 子供は満面の笑みで子犬と共に駆け回った。もちろん両親も嬉しそうだ。心の底から幸せな笑顔を見て、俺の目尻は熱くなり、胸も歓喜でいっぱいだ。


 ちなみに、いつの間にそんなにプレゼントが置いてあって、3人共何も不審に思わないのは、この世界の人々が、サンタクロースに対して強い信仰心を持っているからだそうだ。きっと神のように崇めているのだろう。


『もしかしてまたプレゼントを……?』


『ああ、そうだ』


『二重のプレゼントなんて、そんなイレギュラーもあるんだな』


『いや、私はあくまでその場を切り抜ける使い捨ての道具をあげただけだ。(サンタ)のプレゼントとは別物だよ』


『な、なるほど』


 よく分からんが、分かった。


『それに、やっぱり子供には笑顔になってもらいたいからな。それが私への最高のクリスマスプレゼントさ』


 優しい顔でそう言った。その顔があまりに美しく、見る者を魅了するだろう。しかし――


『お前……なんてベタなセリフ……』


『うるさい、別にいいだろ』


『いや、だってよ……』


『あんまり言うと、お前が生前とってあった秘蔵の円盤と画像のリストを全人類にプレゼントするぞ』


『ちょっ! おい、それだけはやめろ!』



 ――――――――――



 それから、俺達は異空間ホールからこのサンタ女の家に帰ってきた。


 俺はトナカイになってから、サンタ女の家で厄介になっている。


『今日も疲れたなぁ……』


『明日も仕事あるからな、たらふく飯食ったらしっかり寝ろよ』


『へーい』


 俺は言われた通りに夕飯を平らげた後、与えられた部屋のベッドに寝転がった。


 正直、毎日大変だけど、プレゼントを貰った子供たちの笑顔を見るのは悪くない。


 転生前はマジで何の取り柄もなかった俺でも人の助けになるんだ。人を笑顔にすることができるんだ。まあ、サンタ女(こいつ)も一緒に居ることが前提だがな。


 サンタの助手(トナカイ)なんて最初は本当に訳が分からなかったが、これからも頑張れそうだ。


 突然死んでから始まったサンタの助手(トナカイ)生活。これからも続くだろう。俺達がプレゼントを贈って多くの人を笑顔にしていく物語が、いつか本棚には収まりきらない程に溢れることだろう。


『メリークリスマス』


 ただしリア充、テメーらはダメだ。

最後まで見て下さり、ありがとうございます。

いかがでしたか?

皆様が楽しめたのなら幸いです(^^)


それでは、最後に“あの言葉”を言いましょう。クリスマスにまつわる“あの言葉”です!


皆さん、準備はいいですか?

せーの、


リア充爆発しろ!!!!!!

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