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8話

「ちょっと本当にこっちであってるの? いつもだったらとっくに森を抜けていていいころだと思うんだけど、実は迷ってるんじゃない?」


 生意気なほうの女からとんでもないセリフが飛び出した。

 俺は何も疑問に思うこともなく、ただただ後ろをついて歩いていただけだから気が付かなかったというか、俺はいつも歩いているわけじゃないから気づくはずがないというか。それにしても、これは悪い予感が完全に的中してしまったということか? いやいや、まだわからない。なぁ、嘘だといってくれよ。


「仕方ねぇだろ。俺たちはゴブリンどもに追われて逃げてたんだから思ってた位置と地図とのずれがあったんだよ。俺にばっかり責任があるわけじゃねぇぞ。俺は悪くねぇ!!」


「それならすぐに言いなさいよ。なんで、そのまま何事もなかったように歩いてるわけ? 言ってくれれば私とポポで地図を見て道の確認もできたでしょ」


「いやそれは……あれだけ俺に任せとけって言った手前、誰かに頼るのは恥ずかしいなって。俺にもプライドってもんがあるんだよ」


 おーーい!! それじゃあ、俺はまだ町へいけないってことか? ちょっと待ってくれよ。プライドとかどうでもいいから三人でしっかり俺を町まで案内してくれよ。それが最優先だろうが。

 やらかしちまったぜこの男。俺は今、この世で一番怒っているといっても過言ではないほどに怒っているかもしれない。本当にかもしれない。別に怒っていないような気もする。何も考えないようにすれば怒りなんて湧いてくるはずがないじゃないか。そうだよ、何も考えちゃダメなんだ。こいつが道に迷ったことなんて何も考えなければ何ともない。


「ペペちゃんの言う通りだよ。こういう時は素直に頼らないと。結局みんなに迷惑をかけちゃったらそっちのほうが余計に悪いよぉ」


「悪かった。俺が変な意地を張ったばっかりに……今度からは二人のことを頼るって約束するよ」


「そうね。次に同じことをしないのが大切なのよ。でも困ったわね。これじゃあ、私たちが今どこにいるのかわからないじゃない。ちょっと地図を貸してちょうだい」


「ああ、もう俺が持ってても意味ないもんな」


 頼む、生意気な女。お前だけがすべての頼りだ。もしくはおとなしい女でも現在地がわかればどっちでもいいぞ。この状況を何とかしてくれ。


「えーと、ここがここで。あっ、こっちが……ダメね。わからないわ」


「マジかよ。ぺぺでもダメなのか……後は、ポポに頼るしかないな」


「わかったよ。私が見てみるから貸して」


 お前が最後の砦だ!! 俺を町まで全力で案内してくれ!!

 俺は望みをすべておとなしい女にたくし、祈る。これ以上ないくらいに祈った。頼む、この祈りよ届いてくれ!!


「うん。わかったよぉ。ちょっと西に方に外れちゃったみたいだから、ここからならあと10分くらいで森を抜けられそうかなぁ」


「おお!! でかしたポポ。俺のミスを帳消しにしてくれて本当にありがとう」


「やるじゃない。やっぱりポポは頼りになるわね。どっかの誰かさんとは違って」


「おい!! それってもしかして俺のことか? 俺が頼りにならないって言いたいのかよ」


「だってその通りじゃない。残念ながら、町に無事につけるとしてもゴゴのミスは帳消しになったりしないわよ。どう考えても時間ロスしてるじゃない。それは都合が良すぎるわ」


 生意気な女もたまにはいいことを言うじゃないか。

 その通りだ、こいつのせいでかなりの時間をロスしてしまっている。実際に、あの位置からどれくらいで森を抜けられたのかはわからないから、どれほどの時間を無駄にしたのかは俺にはわからない。まぁ、割と早い段階で発覚したおかげでそれほど大事にならずに済んだな。滅茶苦茶遠くまで来てるわけじゃなくて良かったぜ。


「大丈夫そうか? 町につけないんじゃないかってはらはらしたぞ」


「すいません。全部俺のせいです。こんなんじゃ師匠の一番弟子失格だ。俺もっと頑張りますから、まだチャンスをください」


「そもそも弟子にした覚えがないな。もっと見どころのある奴に成長した後に出直してくれ。俺は弟子なんて取るつもりはないんだ」


「そ、そんなぁ。これも、俺がミスしたからだよな。最悪だ、何もかもいい方向にいかない」


 落ち込んでいるところ悪いんだが、何を言いたいのかさっぱりわからない。自分の中だけで随分と話を進めたもんだよ。逆に尊敬しちまうな。俺にはできないことだ。それほどまでに考えることはしようとも思わない。


「森の出口が見えてきたわよ。ポポの案内通りね」


「たまたま今の位置がわかったからだよぉ。本当に今回はたまたまで次も同じことをしてなんて絶対に無理だからね。私だって、地図に強いわけじゃないから」


「謙遜するなって。実際、ポポがいなかったら俺たちはもっと森をさまようことになってんだぜ? それもこれも全部ポポのおかげだ。ありがとな」


 おお、やっと森から出られるのか。今度は流石に大丈夫だよな? 俺の期待は裏切られないよな?



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