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2話

「いや、ちょっと待ってくれ……やっぱり待たなくていい」


「なんじゃいそれは。おぬし今、わしに何か質問でもあったんじゃないのか? 遠慮なく聞いてくれてよいぞい。わしがおぬしの立場じゃったら色々聞いておるじゃろうしな」


「いいんだ。俺は考えるのをやめたんだよ。質問しようと思ったら色々考えなくちゃいけないじゃねぇか。だからいいんだよ」


 何も考えないという縛りを破るつもりはない。俺はこれからの人生何も考えずに生きていくと決めたんだよ。だから、この爺さんがどこの誰だろうが、このよくわからない場所もどうだっていいんだ。俺に何か不都合が発生しているわけでもないんだしな。


 しっかし、俺のみたことのない場所だな。

 どうでもいいことだ。何か起きてからでも十分対処は間に合うはず。無駄に考えても何一ついいことなんてないんだ。


「やはりおぬしはおかしいぞ。そもそも、死んだ理由も赤信号を故意に無視してトラックにはねられたんじゃぞ。誰が考えてもおかしいってわかるじゃろうが。小学生でも赤信号を無視してはいけないってことくらい理解してるじゃろうが」


「俺が死んだってどういうことだ? つまり俺は死んだのか。確かに、思い出してみれば赤信号を何も考えずに渡ったような気がする。その時に運悪くトラックにはねられたんだな。ははっ、何も考えずに生きていこうって決めたばっかりで死んだって言うのかよ。わらえるじゃねぇか」


「狂っておるぞ。そもそも、運が悪かったのはおぬしじゃなんくて急に飛び出してきたおぬしを轢いてしまったトラックの運転手じゃろうが。おぬしは何の罪もない一人の人間の人生を奪ったのじゃぞ」


「いや、俺だって人生奪われてんじゃん。お互い様だろ。そうだ、そのトラックの運転手も何も考えずに生きて行けばいいんだよ。そしたら俺を殺してしまった罪なんて気にならなくなるじゃないか。もう俺は死んだことも、トラックの運転手に殺されたことも気にしてないぜ」


 まさか、死んでしまっていたとは驚きだ。だから、こんな見知らぬ場所にじいさんと二人きりでいたってわけだな。

 ほら、何も考えなくてもどんどん状況が理解できていくじゃないか。これで俺が何も考えずに生きても問題ないってことが証明されたな。いや、俺既に死んでたわ。死んだ後に証明されるとは間が悪いな。トラックの運転手も間が悪かったと割り切ってくれるだろう。


「それで、死んだ俺がここにいるってことは……なぜだ?」


「おぬし、少しは自分で考えようとかそういう気は起きんのか? この状況に少なからず疑問を覚えるのが普通じゃろう?」


「いいや、俺はそういうのはないな。じいさんが説明してくれるっていったんじゃないか。それなら、俺はおとなしくその説明とやらを待つだけだな。早く始めてくれ」


「なんとも調子が狂うわい。おぬしと話しておったらわしにまであほが移りそうじゃ。勘弁してほしいのぉ」


「誰があほだ。俺は馬鹿だが、あほじゃねぇ!! 次言ったらじいさんも殺してやるからな。もう、俺は死んでんだ。何をしようが罪に問われることもないければ、これ以上失うもんはない。その恐ろしさを披露することにならないように気をつけろよ」


 俺に向かってあほだなんてな。この命知らずのじいさんには呆れたもんだぜ。

 ふざけるのも大概にしてほしいもんだ。確かに、俺は勉強のできない馬鹿かもしれないが、決してあほなわけじゃない。あくまで俺ができないのは勉強だけであって、それ以外なら特に問題はないんだ。


「おっかないのぉ。それじゃあ、説明に入るとするかの。おぬしがいらんことばかりいうから時間がかかったじゃろうが。まず一つ目じゃが、ここは死後の世界じゃ」


「それは、さっき言ってただろ。俺が死んでるんだからそれくらいのことは理解できる。舐めんなよ」


「さっきからちょっと喧嘩腰なのはなぜじゃ? 二つ目じゃが、おぬしには新たな世界へ転生してもらうことになったんじゃ。これは予想しておらんかったじゃろう? どうじゃ、わしに感謝の念が浮かんでこんか?」


「本当か? それじゃあ、早速やってくれ。どうせ、俺は何も考えないんだ。ここで、無駄に何かする必要もないだろ。それならそうと早く言えよな。俺も大人げない態度をとっちまって悪かったよ。大人な俺が先に謝ってやる」


 この爺さんは俺を転生させてくれるということだな。そして、そのために俺はここに呼び出されている。はぁ、これ以上何かあるのか? 考えないとわかりそうもないな。まぁ、これから説明してくれるだろうよ。


「まぁ待つんじゃ。おぬしにはもっと説明しておかんといかんことがあるんじゃよ。そもそも、なんでおぬしを異世界に転生させると思う? 少し考えれば何か理由を思いつかんじゃろうか?」


「知らねぇよ。俺に心当たりはないし、考えるつもりもない。もったいぶらないで話を進めろよな」


「まったく張り合いがないのぉ。おぬしには異世界に転生して魔王を討伐してほしいんじゃ。魔王じゃぞ、どうじゃ? ワクワクしてこんか?」


「魔王って言うと……何だ?」


「モンスターを統べる王のことじゃ。つまり人間の敵じゃというわけじゃよ。こいつが厄介でのぉ。この世界の人類を滅ぼしてしまいそうな勢いなんじゃ。このまま放っておけば数年以内に人類は絶滅、もしくはモンスターどもの支配下になるじゃろうな。そこで、神であるわしらが人類を救済しようとしたわけじゃよ」


 へぇ、人類を救済ねぇ。それでどうしておれが呼びされたんだろうな。魔王を討伐なんて、何も考えないだけの俺じゃあ無理だろうしな。まったくわからない。

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