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10話

「タロウさんだからできることだってそれは。俺みたいなただの駆け出し冒険者にできることじゃないんだってば。それよりも、何か技とか何をして修行してきたとか具体的なことを教えてくれよ」


 無視しようか。もうこいつのことを無視しても俺は怒られないんじゃないだろうか。これだけ、俺の強さの秘密を隠すこともなく教えてやっているというのにそれを一切信じようとせずに、しつこく聞いてくるんだぞ。

 確かに、俺が強さを手に入れることができたのはじいさんのおかげだが、そこに至るまでにはこの何も考えないというのが根底にあったんだよ。これがなかったら今頃俺は、普通の高校生としてのほほんと生きていただろう。


「もういいじゃない。タロウさんは強くなるべくして強くなったってだけよ。私たちみたいな凡人に同じことができるわけないわ。ゴゴもいい加減諦めて真面目に修行しなさいよ」


「そうだよ。私たちは地道にコツコツ強くなっていきましょう。それしか道はないんだから」


「……そうだよな。できないことに駄々をこねてるだけじゃ何も変わらないよな。ありがとうございますタロウさん。俺は自分の力で方法を見つけて見せます。どんな方法があるか、何をすればいいのかなんてさっぱりわからないけど、模索し続けます」


「いいんじゃないか。そうだ、それがいいと思うぞ」


 何も考えていなかったのでとりあえず、賛成的なことを言っておく。

 勝手に盛り上がっているところ悪いが、俺は早く町へ行きたいということしか頭にないんだよなぁ。この三人組とも町についてしまえばそこでおさらば。もう二度と話すこともないだろう。俺もこいつらにかまってやれるほど暇じゃないからな。魔王を倒すためにはそれなりに準備も必要なはずだ。まずは、俺の代わりに戦略なんかを考えてくれる強いやつを探すところからだな。俺は、何も考えずに戦うだけの存在としてパーティーを引っ張って行こうじゃないか。そうだ、背中で語るタイプということにしておこう。それのほうがなんかカッコいいしな。


 しっかし、森を出てから歩いているが一向に町が見えてこないのはなぜなんだ? 30分くらいで着くっていう話だったし、そう遠くはないはずなんだけどなぁ。徒歩で30分ということは、俺の家から高校までの通学路と同じくらいのはず。それなら、もう町が見えてきてもいいころなんじゃないだろうか? まさか、森を出るところまでは良かったけど、また見当違いの方向へ進んでるとか言わないよな? 流石に二回目は俺も切れるぞ。


「報酬は何に使おうか。とりあえず装備を新調するか?」


「それもいいけど、宿のほうをグレードアップするって言うのも捨てがたいわ。毎日の生活の満足度はパフォーマンスに直結すると思うの」


「私は、美味しいものが食べたいかなぁ」


 今度は、今日の報酬の使い道で盛り上がっている。まったく忙しいやつらだ。

 こんな調子だということはさっきの俺の心配は流石に考えすぎだというころでいいよな。能天気なふりして誤魔化してるとかそんな冗談みたいなことありえないよな。まずい、何も考えないはずが無駄にこいつらに考えさせられている……俺は黙ってついて行くだけでいいんだよ。こいつらが勝手に町まで俺を連れて行ってくれるんだ。何を考える必要があるってんだよ。


「お、見えてきたぞ。タロウさん、あそこが俺たちが拠点にしている第7の町です」


 本当に良かった。ちゃんと町が見えてきた。ゴゴが何か言っているが、俺には町が見えてきたって言うことで頭がいっぱいになってしまっていて耳に入ってこない。もうこいつらを見捨ててダッシュしたい気分だ。

 そんな気分を何とか抑え込み、俺はゆっくりと歩いて町へ近づいて行く。


「それにしても、なんでゴブリンがあんなに集団で行動してたわけ? 普通ありえないわよね?」


「ああ、ゴブリンは多くても5匹で行動するって言う話をはじめにされたよな。おかげでひどい目にあったぜ」


「ほんとだね。もしかして、何か森で異常事態でも起きてるんじゃないかぁ」


「それは考えられるな。一応、ギルドでそのことも聞いてみるか。俺たちの提供した情報が有益なものだったら報酬の上乗せなんてことも十分あり得るよな。まあ俺は善意から報告するつもりなだけで、報酬目当てとかでは絶対にないけどな」


 なんてしらじらしい嘘なんだろうか。

 こいつ絶対に金のことしか頭にないって顔してとんでもないことを言ってやがる。駆け出し冒険者で稼ぎが少ないのかもしれないが、もう少し慎みというものを覚えてほしいものだな。俺なんて生活できる必要最低限の金さえあればそれ以上を望む気はないぞ。使い道を考えるのが面倒だ。


「報酬はともかく、ギルドに報告する必要はありそうね」


「そうだよな。俺たちみたいに、何も知らない低ランク冒険者たちが同じ状況に遭遇しちまったら大変だ。タロウさんみたいに誰かが助けてくれる可能性も低いだろうしな」


「俺もギルドについて行ってもいいか?」


「もちろん。タロウさんみたいに強い人は冒険者になるべきだよ。なぁ、二人とも」


「そうね。この町の冒険者のレベルが上がるのはいいことよ。タロウさんなら冒険者になった瞬間からこの町最強の冒険者ね」


「私もいいと思います」


 三人の賛成も得られたことだし、金と仲間探しのために冒険者になるとするか。


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