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1話

「なんで俺がこんなしょうもない問題を考えなくちゃいけないんだよ!! どうせ、考えたってわからないんだ、それなら最初から考えないほうが時間を有効にに使えるってもんだろ」


 俺は家で課題のプリントを解きながら思わず叫んでしまった。

 自分の部屋だということをいいことに叫んでいるが、俺は別で物静かな真面目キャラで通っている。勉強できそうに見えてまったくできないのがそう俺だ。クラスでもエセがり勉というあだ名をつけられて親しまれている。果たして、これは俺を馬鹿にしているのか、はたまた俺の予想通り親しみを込めてそう呼ばれているのかはわからない。


 これでも、クラスでは一番下を争っているくらいには馬鹿だ。というよりも、学年で見ても俺はトップクラスと言えるだろう。

 勉強のできるできないは生まれ持ったものだと思っているので、今更色々考えて勉強したところで何の意味があるのだろうかという疑問しか浮かんで来ない。こんなやつが考えるなんて行為をすると思うか? いやいや、ありえないだろ。


「やーめた。これ以上考えてもわからねぇもんはわからねぇんだ。俺だってしっかり考えてみたさ。その結果がわからないんだから誰に文句を言われる筋合いがあるって言うんだよ」


 我ながらいいことを行ったと思う。

 これ以上の勉強は俺には不要だ。こんなことをしている暇があるんだったらアニメの一本でも見たほうが有意義だ。勉強は将来の役に立つ可能性は限りなくゼロに近いが、アニメを見ていれば将来の役に立つ可能性は無限大だ。


「よーし、今期最注目のゴルフしてたら隕石が振ってきて気が付いたら異世界転生していた件の最新話でも見るか。まさかの展開続きで目が話せねぇんだよな。今回も楽しみだぜ」




「おお、最高だったな。これ以上俺の予想の斜めを行き続けることがあれば、人生始まって以来の最高評価のアニメになる可能性すらあるぞ。こう言うアニメを待ってたんだよ」


 アニメを見終わり、感想を一人で語ってしまう。

 実は、この時間がひそかな楽しみだったりする。もちろん、誰かと語り合いたいという気持ちもあるんだが、いかんせん俺の周囲にコアなアニメオタクがいない。俺が知らないというだけの可能性もあるが、探そうとしたこともないし、今後そのつもりもない。


「まあ、いつか俺にもアニメを語れる同志ができりゃそれでいいや。今はまったりと一人で楽しんでるほうが性に合ってる気がする」


 友達がいない言い訳もしっかりはさみながら、次はどうするかを考える。

 いや、考えるのはやめよう。これじゃあ、勉強しているのと変わらないじゃないか。考えた瞬間に人生が色あせてしまうんだ。考えることをやめよう。何事も考えない。感じたままに行動するんだ。


「腹減ったし、コンビニに飯でも買いに行くとするか。よっしゃ!! そうと決まればダッシュだ。財布をポケットにイン!! 準備完了!!」


 俺は自分の部屋の扉を勢いよくあけ放ち、猛烈なダッシュで玄関まで走って行った。

 今から家を出る。今は俺しか家にいないからカギをかけるべきなんだろうけど……おっと、つい考えちまいそうになったぜ。鍵なんてかける必要ないだろ。俺が少し、家を出た間に泥棒に入られる可能性なんて無いに等しい。つまりそういうことだよ。


「どーん!! 生まれ変わった俺は一味違うぜ!! 行ってきまーーす!!」


 ドアを開けるのすら効果音を忘れない。

 周りの目を気にしていたらこんなことできるはずもない。俺はそれも考えていないから余裕でこんなこともできてしまうのだ。


「へいへいへーーい。こんにちはぁーー!! そこのおじいさんもこんにちはぁーー!!」


 満面の笑みを浮かべながら道行く人全員に大声で挨拶をしながら最寄りのコンビニを目指す。

 おっと、あれは横断報道じゃないか。しかも、タイミング悪く赤信号だって? ははっ、いつもの俺なら赤信号は止まれだからっておとなしく待つところなんだろうけどな。今日の俺はもう考えない。赤信号だろうが、青信号だろうが同じだ。俺の歩みを止める程のもんじゃない。そのまま直進だ!!


「いっけぇぇぇぇ!!!」


 ガシャッッーーーン!!!!


 なんだ? 一体何が起きたんだ? 俺の体が宙を舞ってる?


 そうか、俺は赤信号を無視して、渡って車にはねられちまったのか……我ながらついてないな。赤信号を無視したって、そこをちょうど車が通りかかる確率なんてそうないだろ。それを一発で引いちまった俺はとんでもない不幸の持ち主だな。


 まずい、このままじゃ病院送りだ……。


 薄れゆく意識の中でそんなしょうもない心配をしていた。




「早く起きんかーーい! こら、おぬしに言っておるのじゃぞ。赤信号で横断歩道を渡って車にはねられるなんぞ、いい年した高校生のやることじゃないわい。まったく、なんでこんな奴を転生させなくてはならんのじゃ。最高神様も何を考えておるんじゃ」


 俺を呼ぶ声が聞こえたような気がした。

 呼ばれた、つまり返事をしないといけない。それは世の中の節理だ。考える必要もないことだ。


「な、なんだよ」


 声が綺麗に出ないな。それもそうか、今ままで気を失って……そうだ、俺は車にはねられたんだよ。どうして、じいさんの声が聞こえてくるんだ? 入院した病院でじいさんと同室になったのか?


「やっと起きたかい。それでは、説明に入るとするかのぉ」


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