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第五十九話「悪寒らしい知らん顔 (おかんらしいしらんかお)」の巻

魔人ビキラがスーパーの飲食コーナーで、買ったばかりの駄菓子をむさぼっている。

するとそこに、駄菓子袋を手に下げた猫耳のサヨが入って来た。


無料で飲めるお茶が入った紙コップを持っている。

そのお茶は、ビキラのテーブルにもあった。

「おう、分家のあたし。お買い物?」

  とサヨ。

「うん。ピミウォがね」

  とビキラ。

「あたしが一緒だと、駄菓子ばっかり買おうとするらしいから」

「あ、一緒ね。あたしも同じ理由で、ここで待つように言われたの」


ビキラが居るテーブルの椅子に腰をおろし、今しがた買った駄菓子の袋を開けるサヨ。

「『ぶっとび! ブンブンせんべい』か。一枚ちょうだい。あたしの駄菓子もあげるから」

「同じものを交換してもつまらん」

「しょうがないわね、好みが一緒で」


「ところでサヨちゃん。あたしのことを『竹馬(ちくば)の友』だと、勇者団(ブレイバース)の人たちに言ってるそうだけど、どうしたの?」

「うん。だって、生まれた時から知ってる気がしてるから」

  そう言って、一呼吸置き、テーブルに身を乗り出すサヨ。

「実はね、ある時、竹馬の友の話になっちゃったのよね」


「ふうん」

  興味なさそうに、ブンブンせんべいを頬張るビキラ。

「出世を、竹馬の友と誓い合って、生まれ故郷を出て来た。って人がブレイバースにチラホラいるのよ」

  負けずにブンブンせんべいを食べるサヨ。

「へええ」

  と少し驚くビキラ。

「じゃあ、妖艶のユービさんなんかも?」


「その呼び方、やめなさい。ユービさん怒るわよ」

実はユービさんの肢体(したい)がうらやましいサヨであったが、

(それは分家のビキラも同じはず)

  と分かっているので、口には出さなかった。

「あのね、ユービさんは保育園の保母さんになりたかったんだって」

「おお、意外。あの、ばいんばいんボディで」

「だからそう言うのやめなさいって。おせんべい取るよ」


せんべいを守りながらビキラは、

「竹馬の友の話になった時に、『自分にもいるよ』って、あたしの名前を出したのね、あなた」

「そうそう。他にチクバもトモもいないし」

  と言って腕を組むサヨ。

「だからさあ、チクバを少し深めるために、なんか誓い合わない? あたしたち」


「また面倒臭いことを考えたわね、サヨちゃん」

  ビキラも負けじと腕を組んだ。

「あなたと違ってグループ生活だから、色々あるのよ。人への見栄とか虚栄とか」

  と正直に語る猫耳のサヨ。

「うーーん。(ひと)りと一冊の気ままな野良の旅だからなあ」

  腕を組んだまま、スーパーの天井を見上げるビキラ。


「あたしはね、人と魔人の長閑(のどか)を守るために一匹でも多くの悪党を退治したい」

「おお。勇者団らしいお言葉」

「冷やかさないでよ。だからこの、『一匹でも多く悪党を倒す』を競い合ってみない?」

「いいけど、自己申告よね、それって。数を誤魔化せるわよ」

「あたしはあたしの分身を相手に、そう言う(ずる)は出来ない」


「ふうん。あたしは出来るわよ」

  そう言って、ツイ! と横を向くビキラ。

「髪の毛、逆立っているわよ、分家さん。そうやって、嘘ってすぐに暴露(ばれ)るじゃん」

  と鷹揚(おうよう)にうなずくサヨだった。

「好んで()く嘘は問題ないけど、気持ちに反して吐く嘘は、全身に悪寒が走って、知らん顔しても分かっちゃうのよね」


「そ、そうなのよ」

  腕組みを解き、両腕を(さす)るビキラ。

意にそぐわぬ嘘を吐き、全身に鳥肌が立ってしまったのだった。


「じゃあ、竹馬の友の誓いは、『どちらがより多く悪党を倒すか競う』で良いわね?」

「それで良いわよ。あたしの仕事は悪党狩り、賞金稼ぎだし」


「サヨさんお待たせ」

飲食コーナーに、買い物を済ませたサプリメントブルーのローブを着た女性が顔を出した。

  氷結系妖術師のユービさんだ。

「あら、ビキラちゃん。その節はお世話になりました」

  と、(そつ)なく妖艶に頭を下げるユービさん。

何が「その節」なのか分からないままに、

「いえ、こちらこそ」

  と負けずに言い頭を下げるビキラ。


立ち上がるサヨに、

「ビキラちゃんと何のお話?」

  と他意なく話しかけるユービさん。

博打(ばくち)の話よ。幼馴染(おさななじ)みのバクチ話」

  ニヤリと笑ってみせるサヨ。

「あら、何かしら。良いわね、幼馴染みって。何か賭け合ったわけ?」


「うん、竹馬の友だから」

  ビキラも笑って付け足した。




(竹馬の友との博打)

ちくばのともとの、ばくち!





次回、第六十話「奇遇ですね、お嬢さん」の巻。

は、ププンハン編の初期に書いた話。少し長いです。

日曜日の、お昼の12時前後に投稿予定です。


明日は、「続・のほほん」を、明日の土曜日の朝、7時前後に投稿予定です。


「風骨仙人の旅路」全4話。

「異物狩り」全4話。

「のほほん」全111話。が完結済み。

よかったら、読んでみて下さい。

感じるものがありましたら、「いいね」をお願いします。

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