表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/117

第五十八話「ある朝の出来事」の巻

魔人ビキラと古書ピミウォは、とある商店街で喫茶店を探していた。太陽は登っていたが朝はまだ早く、モーニングサービスを食べようとしていたのだ。


そしてバッタリと出会う猫耳のサヨ。


「あらサヨちゃん。今日は(ひと)り?」

  サヨはサンバピンクのローブを着ていた。

その姿で、今もフェイクブレイバーズの一員として活動しているのが分かった。

「ええ、まあ、ちょっと出稼ぎに」


人の通りがあるので、隅に寄って雑談を始めるサヨとビキラたち。

通りに自販機(パーピリオン)が立っていたので、缶ジュースを(おご)らせるのを忘れないビキラ。

「大所帯じゃものなあ、ブレイバーズは」

  と同情するピミウォ。

「日々のご飯も大変じゃろう」

「それにお仲間があの腕では」

  と、冷たい目で笑うビキラ。


「何を勝手なことを言ってんのよ。メキメキ上達してるんだから、一部の人は」

  サヨはムキになって言い返したが、それは本当だった。


やがて人間火炎放射器(ヒューマンファイヤーマシン)人間吹雪(ヒューマンブリザード)人間台風(ヒューマンタイフーン)と称される強力な妖術師たちが誕生するのだ。

ビキラ、ピミウォは言うに及ばず、サヨもまだ全く予感出来ていなかったが。


「で。出稼ぎって、何?」

「この街に、軍事政権復活団の大幹部が逃げ込んだというウワサを聞いたのよ。で、探してるとこ」

「あらそう、目的は同じね。あたしたちもその大幹部を捕まえに来たのよ」

  と、咄嗟(とっさ)に嘘を()くビキラ。

さらにそのまま、

「捕まえるのを手伝いたいと言うなら、拒否はしないわよ」

  などとマウントを取りに行った。


「それはこっちの台詞(せりふ)よ。探しているというその大幹部の名前、言ってみなさいよ」

サヨは自分の性格は分かっているので、ビキラの嘘を即座に見抜いたのだ。

ビキラが返事に(きゅう)しているのを見て、

「ほら、こいつよ」

とローブの前を開き、サヨは内ポケットから手配書を出した。

  自分を追い詰めても面白くないことに気がついたからだ。


「このステテンコって奴を探しているのよ」

「あーー、そうなんだ」

  と言って、商店街を行き交うまばらな人々を見るビキラ。

「あのボヘミアンブラックのコートのおじさんなんか、目鼻立ちが似てるわね、ほら」


「あーー、でも背が高いわ。手配書には中肉中背とあるわよ」

「竹馬みたいなシークレットシューズを()いているんじゃないの?」

「あんな仙人のような(あご)髭はないわよ」

「付けヒゲなんじゃないの?」

「ひたいに(つの)が三本もあるわ。手配書のステテンコは一本ヅノよ」

「二本は付けヅノなんじゃないの? ほら、左右の二本のツノは、中央のツノと色も形も違うわ」

「あーー、そう言えば、左右の二本はパーティグッズにあるような安っぽいツノね」


会話が聞こえたのか、ビキラたちに向かって来ていたボヘミアンブラックの男が、(きびす)を返して去って行く。


「あら、怪しい。向きを変えちゃったわ」

  そのサヨの言葉が終わらぬうちに、ビキラは、


「すってんころりにリロコン徹す(すってんころりに、りろこん、てっす!)」


  と、回文を詠唱した。

すみやかに具現化するイエローウォーカーの作業服を着たリロコン。


「吾輩がリロコンである。貴様か、天下に(あだ)なす不届き者は?!」

叫ぶなりリロコンはダッシュし、コートの男の手前で、すってんころり! と転んだ。

その転倒に巻き込まれて、すててこてん! と倒れるステテンコ。

「いたたたた。なんなんだお前は」

  言いながら立ち上がるステテンコ氏。


転んだはずみに、付けヅノと付け髪が取れてしまっていた。


「見ての通りの前方回転体だ」

宣言して再び、すってんころり! と転んでステテンコを巻き込み、ダメージを与えるリロコン作業員。


「まだるっこしい攻撃ねえ」

  サヨが苛立(いらだ)った様子で言ったが、

「商店街だし、まばらだけど人も通ってるじゃん。建物や人を巻き込んだら、後の賠償金が怖いじゃないの」

さる事件で賠償金をたっぷり払ったばかりのビキラが震えながら答えた。

「うん。それもそうね」

  同じ痛みを知るサヨは納得した。


「見物人が見守る中、ステテンコは転びに転び、ついには服もズボンもほころび始めた。

「それにしても、転んでも転んでも立ち上がって、凄い根性よね、あいつ」

  と、感心するビキラ。


「復活団の大幹部じゃからな。意識高い系で、倒れたままが嫌なんじゃろう」

「分かった、アレだ!」

  ポン! と手を打つサヨ。

「起き上がり小法師(こぼし)の生まれ変わりなんだわ、きっと!」

「そんな馬鹿な」

  ビキラとピミウォは同時に叫んだ。


当然のことながら、大幹部ステテンコのスタミナも無限ではなかった。

衣服のヒザとヒジに大穴を開け血を流し、気を失ってしまったのだ。


転び大道芸人と間違えられ、投げ銭をもらって、浮かれるビキラたち。

それはモーニングを食べる前の、朝もまだ早い時間の出来事だった。




(叫ぶ今朝)

さけぶ、けさ!





次回、「魔人ビキラ」本編、第五十九話

「悪寒らしい知らん顔 (おかんらしい、しらんかお!)」の巻は、水曜日のお昼12時前後に投稿予定です。


タイトルが回文なのに、覚えのない話だった。

サヨがまた登場していた。

一枚目しか読み返してないが、オレも期待したい。


明日は、「続・のほほん」をお昼の12時前後に投稿予定です。ではまた明日、のほほんで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ