ビキラ外伝「待ち合わせ」の巻
「遅いですねえ、ビキラさん」
待ち合わせの時計塔の傍らで、古書ピミウォと共に待っている素浪人ププンハン。
駅前中央広場は、にぎやかだった。
時計塔の台座である高いステンドグラスが、真昼の陽光を浴びて、地面に虹色の影を落としている。
色影踏みをしている子供もいた。
「まだ五分過ぎたばかりじゃ。気長に待とう」
ププンハンの肩に立つピミウォが言った。
時計塔の周辺には、幾人もの人間、魔人が待ち合わせをしていた。
男の二人連れ。
女の三人組。
ぽつねんとお爺さん。
颯爽とお婆さん。
親子連れ。
若いカップル。
独りの女の子も居た。
その娘はフリル付きのピンクのブラウスに、ミニスカートだった。
「あの娘さん、そう言えばもう、三十分くらい独りでいますね」
「そうじゃな。ププンハン殿のように、早く来すぎたのかも知れぬな」
「背格好がビキラさんに似ていますね」
「髪の色が違うがのう。ビキラは虹色じゃ。しかし背丈は同じくらいじゃな」
「ビキラさんのことを考えているからか、小柄な女の子を見ると、皆んなビキラさんに見えてしまいますね」
と笑うププンハン。
「ビキラさんもお粧しをすると、あんなに可愛くなるんですかねえ」
「うむ。ビキラも年頃の、二百才じゃからのう」
「に、二百?! 私よりは年上だとは思っていましたが」
「いや、三百だったかも知れん。定かではない」
ピミウォはよく分かっていなかった。
「遅いですねえ、ビキラさん」
ププンハンが、さらに十分ほど経って、またそう言った時、ピンクのブラウスにミニスカートの女の子が近づいて来た。
その子がツインテールのカツラを取ると、下からよく見知った顔が表われた。
虹色の髪の少女、ビキラである。
「あっ、ビキラさんが付けまつ毛?! なんとバッチリ目で可愛いことに!」
「あっ、ビキラ。ピンクの唇に頬紅?! なんと女の子らしいことに!」
驚くピミウォとププンハンに、ビキラは、
「あたしのことを、豪傑オーラが出ているからすぐ分かる、とか言ってたから確かめたのよ」
カツラをくるくる回しながら言った。
「全然駄目じゃん、あなたたち! 見かけにてんで騙されてるじゃん!!」
それからププンハンとピミウォは時計塔の前に正座させられ、魔人ビキラに懇懇と説教された。
ミニスカートから出ているビキラの健康的な素足は、ププンハンにはとても眩しかった。
(確かめに粧した)
たしかめに、めかした!
少し長い「ビキラ外伝」でした。
次回、「魔人ビキラ」本編は、日曜日のお昼、12時前後に投稿予定です。
明日は、「続・のほほん」を、朝の7時前後に投稿予定。
すでに完結済みの作品が、同サイトにあります。
「風骨仙人の旅路」全4話。
「異物狩り」全4話。
「のほほん」全111話。
よかったら、覗いてみて下さい。
ほなまた明日、続・のほほんで。




