表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/117

第五十五話「本物のププンハン」の巻

「で、今度のププンハンは本物なんでしょうね」

  見知らぬ街で、ばったり出会うなり、魔人ビキラは言った。


「『で』ってなんですか? 『で』って?!」

(数日ぶりに会えたと言うのに)

  と、ププンハンは少しムクれた。


古書ピミウォが、九尾の妖狐の、

尻尾(しっぽ)が人間に化ける新しい技」

とやらに(たぶら)かされた話をすると、素浪人ププンハンは、

「それは災難でしたね。私は三日ほど、シッポさんの散歩に付き合わされましたけど」

  と笑った。


「『こうした方が、早く見聞(けんぶん)を深められる』とか言ってましたよ、九尾さんは」

「まあ、巣でお昼寝してて、九箇所も一遍に他所へ行けるのなら、そうかも知れないけど」


「サヨさんとテレパシー通信は出来ぬのか?」

   と、今さらに言うピミウォ。

「出来ません!」

  きっぱりと否定するビキラ。


「サヨさんと言うのは?」

  新しい名前を気にする素浪人。

「あたしの分身。まあ、気にしなくていいから」

(うあ。ビキラさんも分身の術、使えるんだ)

  と、内心、(おのの)くププンハン。


そこへ現れる荒くれ者ふたり組。

  しかし、ただの人間だ。

「おうおう。街ん中でいちゃいちゃと」

「真っ昼間から見せつけてくれるじゃねえか」

  さっそくに因縁(いんねん)をつけてくる(ポン)目当ての荒くれ者たち。


(そろ)いのスキャンダルブラックのジャケットが自慢なのか、必要以上に胸を張っている。


「いや、そんなんじゃないよ。気を悪くしたんなら、ごめんよ。ただの立ち話だからお構いなく」

  ププンハンは相手を人間と見て、受け流そうとした。


「なんだ、おっさん。オレらが怖いのか?」

「いいから()び料を置いて行け」 

  荒くれ者たちは、図に乗って言い立てた。


ププンハンが気にしてビキラを見れば、作り笑いを見せながらも、ひたいに青筋を浮かせていた。


(あっ、マズイ。ビキラさん、怒ってる。巻き()えはイヤだ)

「あの、悪いけど少し離れてくれますか?」

  慌てて距離を取ろうとするププンハンだった。


「ああ? なんだとう?」

ププンハンの凶悪色(バッドプラック)のロングコートと(すさ)んだ顔は見掛け倒しと見て、荒くれ者はすっかり調子に乗った。

「大人しく金を出さねえと、彼女が痛い目を見るぜ、おっさん」


「あたしが何だって?」

ビキラはププンハンの前後に立つ荒くれ者に向けて、回文妖術を射った。


「メガトン咎め (めがとん、とがめ!)」


ビキラの詠唱に応じて、メガトン級の「(とが)め」が、ププンハンと荒くれ者二人組の真横に降り立った。


「うわっ?!」

「うひゃあ?!」


「ヒイィ!!」ププンハンも荒くれ者に負けずに叫んだ。


「悪い子! 悪い子! 悪い子はお仕置き!」

具現化したトガメは、荒くれ者とププンハンに対して、したたかに仕置きを始めた。


「一人くらいは、巻き添えになると思ったわ」

  ビキラには、想定内の出来事であった。


ププンハンは、なまじ丈夫であったため、気を失うことなく荒くれ者の何倍も、仕置きを受け続けた。

  その頑丈さは、ビキラを安心させ、感心させた。


そして「ヒイィ」は、ププンハンの「大丈夫宣言」だと認識するビキラであった。



(良い人ひいい)

いいひと、ひいい!!






次回、ビキラ本編、第五十六話

「フェイクブレイバーズ」の巻は、日曜日(1月28日)に投稿予定です。


サヨの再登場は、小吉か大凶か?!

本格的にビキラに絡み始める前触れか?!

その馬鹿馬鹿しさは、本格的に覚悟して待て!!


明日は木曜日は、「続・のほほん」を朝の7時前後に投稿予定です。

ではまた明日、のほほんで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ