ビキラ外伝「へのへのモケケもん」の巻
おたずね者を倒しても、魔人ビキラの怒りは治まらなかった。
「人が丹精込めて作った回文『獣偏屁のモケ(けものへん、へのもけ!)』を、『へのへのモケケもん』なんて訳の分かんないモノに変換しやがってえ!」
「いや、ビキラさん。もう、おたずね者のアナグラム妖術師は倒しましたから、そう怒らないで」
と、素浪人ププンハン。
「あなたは良いわよ。いつもの三万匹の子ぶたシリーズを射てたんだから」
「はい。ビキラさんがおたずね者の気を引いてくれたお陰です」
ププンハンは神妙に言った。
アナグラムとは、文の文字を入れ替えて、全く別の意味に変換してしまう妖術のことである。
回文を放ってもアナグラムで変換され、役に立たないモノになるのはまだ良い方で、先ほどまで術師だった自分に、変換された元・回文が襲い掛かって来たりするので、ビキラは苦手なのだった。
「だいたい、瞬時にこっちの詠唱をアナグラムしちゃうじゃん」
「うむ。早業よのう」
と、古書ピミウォ。
「チートすぎない、アレ?!」
自分のチートを棚に上げて喚くビキラ。
「確かに神業的に早いですが、あれは鍛錬の賜物だと思います」
ププンハンは、なお神妙に言った。
「あっ、言うわね。三万匹シリーズに頼ってる妖術師が!」
「す、すみません。この口が悪かったです」
ププンハンは素直に、自分の頬をつねった。
空いているもう一方の頬も、即座にビキラがつねった。
「あだだだだだだ!」
ププンハンはビキラを怒らせまいと、神妙に痛がった。
(いやはや早い)
いやはや、はやい!
晩ご飯前の隙間に投稿。
ショートショートショート版、やってて良かった。
今年はもう、時間的にビキラ本編の投稿が出来そうにないので、外伝をちまちま投稿しようかと。
三十分かからずに投稿出来る短いのあるし。
ビキラの個性がちょっとでもプラスされれば、と思います。
同サイトにて、「異物狩り」全四話で完結。
モンスター物と言うには、派手さに欠け、インパクトも弱いかも。
タイトルを考える時に頭に浮かんだのは、平井和正さんの「死霊狩り(ゾンビハンター)」でした。
(無論、中身は全然違います!)




