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ビキラ外伝「実験地帯」その他

回文ショートショートショート

ビキラ外伝その1「実験地帯」の巻


閑静な土地柄だった。

「この辺りじゃ。革命前夜、細菌兵器が使われたという地区は」

古書ピミウォが、魔人ビキラの肩に立ち、ウンチクを吐く。


「怖いわねえ」

  と、辺りをうかがいながら、ビキラ。

「でも、もう残ってないのよね、その細菌は。だって、百年以上昔の話だもんね、使われたの」


「うむ。自由な往来が許されておるからのう。大丈夫じゃ」


「あっ、お昼過ぎから雨だそうですよ」

庭で洗濯物を干そうとしているおじさんに向かって、声を掛けるビキラ。

「かまわん、かまわん。汚れが落ちて良い」

「ノンキな御仁(ごじん)じゃ」

  感心するピミウォ。


「あら。空き地で空を見上げている人がいるわ。何を見ているのかしら?」

ビキラは小手をかざすが、青い空と、たゆたう千切(ちぎ)れ雲しか見えない。

「月の昇り来る方角じゃな」

  と、ピミウォ。

「今夜は満月。月の出を待っておるのじゃろう。風流な御仁じゃ」

「うわあ。さすがピミウォ、物知りねえ」


今度はボンネットバスを押している一団に出会うビキラたち。

「どうしたんですか?」

「なあに、燃料切れだよ」

「だから次の停留所まで、皆んなで押しているんだ」

「手伝いましょう」

  と言って、皆んなに混じってバスを押し始めるビキラ。

「うむ、そうしよう。行き掛けの駄賃じゃ。急ぐ旅でなし」

  (からだ)(かど)でバスを押し始めるピミウォ。


百数十年前に使われた細菌兵器、ノンキーナ菌はまだ生きているようだった。



(菌の感染専科呑気)

きんのかんせんせんか、のんき!



    ***     ***     ***



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ビキラ外伝その2「湯葉お菓子」の巻


「なはははははは!」

魔人ビキラは、湯葉(ゆば)お菓子の店内で、突然笑い出した。

「や、やめてよね、こういうお店でくすぐるの!」

  頬を桜色に染めて、肩の上の古書ピミウォを(にら)む。


「ワシはずっと肩の上におったぞ」

  本の口を(とが)らせて言い返す古書ピミウォ。

「えっ。じゃあ一体、誰が?!」

ビキラは狭い店内を見回したが、客はビキラたち以外、居ない。


ただ、かさこそと何かが走り去る音が聞こえた。


(今の音、ネズミ?!)

  とビキラは思ったが、さすがに口には出さない。

何の姿も見てないからだ。


「申し訳ございません、お客様」

  カウンターの中の店員が、赤い顔をして頭を下げた。

「ウチの湯葉っ子に、悪戯(いたずら)好きがいるものですから」


(なるほど、何かのカスが服の脇腹に残ってる)

  脇腹を見て思うビキラだった。

(お()びに、お菓子がもらえるかも知れない)

ビキラは自分でも浅はかと思いつつも、込み上げて来る笑みを抑えられなかった。

(だって、買ったら高いんだもん!)


駄菓子ではないので、お金を出し惜しむビキラだった。



(こそばゆい湯葉そこ)

こそばゆいゆば、そこ!

次回、回文妖術師ビキラの冒険ファンタジー、

「魔人ビキラ」本編、「ベータム市の食い逃げ犯」の巻、

は、明日12月3日のお昼ほぼ12時台に投稿予定です。


修羅道の王、アスラを具現化させる食い逃げ犯に、果たしてビキラはどうやって勝つのだろうか?

「どうせ、ロクに戦わないんだろう?!」

という真実を突くのは、無しだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ノンキーナ菌は現代にこそ必要な細菌兵器かもしれない(笑)使いようによっては毒にも薬にもなりそうだ。
[良い点] ノンキーナ菌、エエ仕事してはる。 ピミウォはことさら免疫が無さそう のんきって良いなぁ。
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