ビキラ外伝「実験地帯」その他
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ビキラ外伝その1「実験地帯」の巻
閑静な土地柄だった。
「この辺りじゃ。革命前夜、細菌兵器が使われたという地区は」
古書ピミウォが、魔人ビキラの肩に立ち、ウンチクを吐く。
「怖いわねえ」
と、辺りをうかがいながら、ビキラ。
「でも、もう残ってないのよね、その細菌は。だって、百年以上昔の話だもんね、使われたの」
「うむ。自由な往来が許されておるからのう。大丈夫じゃ」
「あっ、お昼過ぎから雨だそうですよ」
庭で洗濯物を干そうとしているおじさんに向かって、声を掛けるビキラ。
「かまわん、かまわん。汚れが落ちて良い」
「ノンキな御仁じゃ」
感心するピミウォ。
「あら。空き地で空を見上げている人がいるわ。何を見ているのかしら?」
ビキラは小手をかざすが、青い空と、たゆたう千切れ雲しか見えない。
「月の昇り来る方角じゃな」
と、ピミウォ。
「今夜は満月。月の出を待っておるのじゃろう。風流な御仁じゃ」
「うわあ。さすがピミウォ、物知りねえ」
今度はボンネットバスを押している一団に出会うビキラたち。
「どうしたんですか?」
「なあに、燃料切れだよ」
「だから次の停留所まで、皆んなで押しているんだ」
「手伝いましょう」
と言って、皆んなに混じってバスを押し始めるビキラ。
「うむ、そうしよう。行き掛けの駄賃じゃ。急ぐ旅でなし」
本の角でバスを押し始めるピミウォ。
百数十年前に使われた細菌兵器、ノンキーナ菌はまだ生きているようだった。
(菌の感染専科呑気)
きんのかんせんせんか、のんき!
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ビキラ外伝その2「湯葉お菓子」の巻
「なはははははは!」
魔人ビキラは、湯葉お菓子の店内で、突然笑い出した。
「や、やめてよね、こういうお店でくすぐるの!」
頬を桜色に染めて、肩の上の古書ピミウォを睨む。
「ワシはずっと肩の上におったぞ」
本の口を尖らせて言い返す古書ピミウォ。
「えっ。じゃあ一体、誰が?!」
ビキラは狭い店内を見回したが、客はビキラたち以外、居ない。
ただ、かさこそと何かが走り去る音が聞こえた。
(今の音、ネズミ?!)
とビキラは思ったが、さすがに口には出さない。
何の姿も見てないからだ。
「申し訳ございません、お客様」
カウンターの中の店員が、赤い顔をして頭を下げた。
「ウチの湯葉っ子に、悪戯好きがいるものですから」
(なるほど、何かのカスが服の脇腹に残ってる)
脇腹を見て思うビキラだった。
(お詫びに、お菓子がもらえるかも知れない)
ビキラは自分でも浅はかと思いつつも、込み上げて来る笑みを抑えられなかった。
(だって、買ったら高いんだもん!)
駄菓子ではないので、お金を出し惜しむビキラだった。
(こそばゆい湯葉そこ)
こそばゆいゆば、そこ!
次回、回文妖術師ビキラの冒険ファンタジー、
「魔人ビキラ」本編、「ベータム市の食い逃げ犯」の巻、
は、明日12月3日のお昼ほぼ12時台に投稿予定です。
修羅道の王、アスラを具現化させる食い逃げ犯に、果たしてビキラはどうやって勝つのだろうか?
「どうせ、ロクに戦わないんだろう?!」
という真実を突くのは、無しだ。




