ビキラ外伝「懲りないガマ吉」その他
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その1「懲りないガマ吉」の巻
水田地帯の畦道を歩いていて、蛙たちの声を聞く魔人ビキラと古書ピミウォ。
「蛙と言えば、アイツ、どうしているかしら」
水の入った田んぼを渡って来る涼しい風を受けながら、ビキラがつぶやいた。
「ほらあの、蛙みたいな顔をしたガニ股のおっちゃん……」
「ああ。絵画怪盗のガマ吉じゃな」
ビキラの肩に立つピミウォも、のんびりとつぶやいた。
「さて、どうしておるのかのう」
ガマ吉は、こうしていた。
「あっ、こいつ卵を産んでやがる!」
「お前、メスだったのか?!」
刑務所の看守たちが、ガマ吉の部屋の前で立ち止まって叫んだ。
「違いますよ、看守さん。これは、ゆでタマゴでさあ」
ガニ股に溜めたゆでタマゴを手に取ってガマ吉は言った。
厨房から卵を盗んで来て股で温め、ゆでタマゴにしたのだ。
「おひとついかがですか?」
ガマ吉はどこに行っても、マイペースだった。
(固茹で卵股で豊か)
かたゆでたまご、またでゆたか!
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その2「その後のガマ吉」
ガマ吉は、ゆでタマゴを取り上げられ、ムクレていた。
「わたしの性格が歪んでも、知らないからね」
プンスカ怒っていた。
泥棒の性格が歪んだら、真人間になってしまうことには、まだ気がついていないガマ吉だった。
(曲がるガマ)
まがるがま!
*** *** ***
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その3「ビキラのアリス」
保育師補助のアルバイトで、保育園の子供たちに、魔人ビキラは「不思議の国のアリス」を読み聞かせていた。
「ベストを着たウサギが、穴の中に飛び込みました。
アリスは後先を考えず、続いてその穴に飛び込みました。
穴の中は真っ暗でした。さあ、大変!」
「ランプは持ってなかったの?」
「発光石は? ぼく、持ってるよ」
「アホちゃうん、アリス」
「分かった!キョウクンだ」
「うん、こんなアホになっちゃいけないよと言うキョウクンだ!」
教室の子供たちが口々に意見を述べる。
「アリスはアホではありませんでした。
すり足で、真っ暗な穴の中を進んで行きました。
すりすりすり、すりすりすり。
まだ出口が見えない。
すりすりすり、すりすりすり……」
ビキラは、すりすりすり! を繰り返しながら、子供たちが寝付くのを待った。
眠気と戦いながら。
(摺り足アリス)
すりあし、ありす!
「魔人ビキラ」本編は、日曜日(26日)の、
ほぼ12時台に投稿予定です。
読み返したら、タコ焼きを食べる話でした。
タコ焼きと言えば、スーパーに付属した小さな店が、6個100円で売ってるんですよ。
少し遠いんですが、散歩がてらに行くことがあります。
寒くなって来たし、食べると幸せな気持ちになります。
安くて、財布にやさしい幸せです。
同サイトにて、回文ショートショート童話「のほほん」が、
111話で終了しました。
よかったら、読んでみて下さい。




