ビキラ外伝「関所別室の怪・その他」の巻
ビキラ外伝「関所別室の怪」の巻
県境の関所にて、別室へと案内される魔人ビキラ。
(通行手形のない古書ピミウォが、ついにヒトモドキと暴露たのかしら?)
と、気が気でないビキラ。
「とにかく、じっとしててね」
と、小脇にかかえた古本にささやく。
「もちろんじゃ。ワシはただの古本じゃ」
と返事する、世捨て人の魂を宿した古書ピミウォ。
そこへまた、部屋に入って来る者があった。
その人物を見るなり、
「うわ、イカガワシイ人?!」
と言ってしまうビキラ。
「誰がイカガワシイ人か?!」
その人物はそう言うなり、顔じゅうシワだらけにして、プッ! と烏賊墨を吐いた。
頭部がイカ。
背中の切目から、鷲の翼を出した奇怪な着流し魔人だった。
その後、怒角鷲之介は、見た目が変わっているが、ただの素浪人。
魔人ビキラは、ただの野蛮な賞金稼ぎと分かって、無事に関所を通過した。
「またね、鷲之介さん」
「うむ。お主も元気でな」
変な者同士、親近感を覚えながら、別れを告げる二人であった。
(烏賊が鷲い皺が怪)
いかがわしい、しわがかい!
*** *** ***
ビキラ外伝「沖の島まで」の巻
魔人ビキラは、離島に出没する魔獣退治を引き受けた。
島民の船に乗って、沖の島まで揺られて運ばれるビキラと古書ピミウォ。
「霧が出ておるが、凪いでおるで、問題ないだよ」
「なあに、すぐ着くだよ」
「安心して船酔いしておりゃ良いだよ」
「あっ、前から何か来てない?!」
がば!
と見を起こし、叫ぶビキラ。
「うお。霧で気がついてねえだか?!」
「ありや、ダルマ船でねえだか?!」
「霧笛霧笛霧笛!」
とビキラが叫ぶが、
「うんにゃ、ダルマ船にはエンジンがねえでな」
「知らせても、自力で移動できねえだよ」
と言う島民たちの返事であった。
「ありゃ、漂流ダルマ船だ」
「あっ、船のエンジンが止まっただ」
「手で掻くだ」
「間に合わねえだ」
「衝突するだ」
「わあ、迫る迫る迫る!」
ビキラは、動揺して叫んだ。
(ダルマ船迫るだ)
だるません、せまるだ!
本編「魔人ビキラ」の前書きに書いている、ショートショートショート版ビキラです。
「ビキラ外伝」として、時々、本編に割り込ませることにしました。
本編の、前書きビキラ話は次回12日投稿分から無くなります。
本編「魔人ビキラ」は、12日(日曜日)のお昼12時台に、
第三十六話「続・ダイガウバー」の巻、投稿予定。
ではまた、12日、日曜日に。
「魔人ビキラ」第37部分の、誤投稿「のほほん」を、
ビキラ外伝「その名は大言海」と差し替えました。
短い作品ですが、よかったら読んでみて下さい。




