第二十二話「パーリンさん危機一髪」の巻
魔人ビキラと古書ピミウォは、小さな丘が多いことで有名なオオオカの街を歩いていた。
すぐ前を歩くお婆さんと背の高い女性の会話が、自然と耳に入ってくる。
「来週も、雨と騒乱が降ったり止んだりらしいねえ」
「隣の県と、県境争いなんかしてるらか。困ったもんでねす。お婆まさ」
「自分たちが造った土地でもあるまいに、浅ましい話じゃて」
「県境のバランザの丘、昔は隣の県に在ったって、本当なんでしょかう? あの丘が争いの原因らしいですどけ」
「昔々のヨタ話。一夜にして丘が動いたの山が動いたの、あるわけがなかろうが」
「はあ、やっぱりそうですよえね。ムカウ列島のあちこちに同じような伝承があるそうだから、本当かなと思っちゃっわた」
「若いわねえ、パーリンさん。そんなこと言ったら、河童伝承なんか、列島中にあるわよ」
「あら、本当わだ」
と笑うパーリンさん。
パーリンさんもお婆さんも、まだ実際の河童を見たことがなかったのだ。
「時にパーリンさんや、幾つになったのかのう?」
「はい、今年で二十九になりすま。お婆まさ」
と、頭を下げるパーリンさん。
「なんと! それは大変じゃのう。なんじゃろうか。方言と低い鼻?」
お婆さんはパーリンさんの顔を見上げ、
「そんなもの、気にせんで良いのよ」
と言った。
盗み聞きをしていたビキラは、思わず口をはさんだ。
「お婆さん、二重苦じゃありませんよ」
(聞き違いガチ危機)
ききちがい、がちきき
一話完結形式のショートショート連載です。
回文妖術師・ビキラの冒険ファンタジー。
次回、第二十三話「バランザの丘」の巻。
ついにバランザの丘の謎が解き明かされる時が来た!
みたいに盛り上がる話だと良いなあと思います。
回文童話「のほほん」を、同サイトにて連載中。
短い話を(今のところ)毎日更新しています。
よかったら、覗いてみて下さい。




