最終回「守備隊のお姉ちゃん」の巻
ビキラは見知らぬ村を歩いていて、見知らぬ少年魔人に声を掛けられた。
「お姉ちゃん、昨日はぼくのデートに付き合ってくれてありがとう!」
そう言って、深々と頭を下げる、長袖に半ズボンの少年。
一本の尻尾がズボンの臀部から出ていた。
「えっ? えええっ?!」
ただただ驚き戸惑うビキラ。
身に覚えがなかったからだ。
「人違いではないかのう?」
ビキラの肩の上から古書ピミウォが言った。
ビキラの顔をまじまじと見て、
「そう言えば、今日は猫耳じゃないんだね」
と、少年は言った。
「ああ、サヨさんと間違っておるのか」
「そのお姉ちゃん、髪の毛が赤かったでしょ?」
と、自分の虹色の髪を摘み上げるビキラ。
「あっ、そうだった。雰囲気が一緒だから……地蔵違いかあ。ごめんなさい」
少年はまた、深々と頭を下げた。
「地蔵違いって、なんかよく分かんない話ね」
「友だちが、カノジョ連れて隣村のお祭りに行こうって言い出して、でもぼく、カノジョがいなくて困っていたら……」
「困っていたら?」
「お地蔵さんが女の子になって、デートに誘ったら承知してくれたんだよ」
「やっばりよく分かんない話ね」
「こっちだよ。昨日のお礼を言いに行くとこだったんだ」
と少年が言うのでついて行くと、森に沿って流れる川の土手に案内された。
土手には、川を背に小さな地蔵がまばらながら、一列に並んでいる。
「えーーっと、この辺のダイザに立ってたんだよ。どこだっけなあ」
空き台座は多かった。
「たしかこの辺だと思ったんだけど」
「立っておったのか? その娘は台座に腰掛けるのではなく?」
「ああ、分かるわ。こう言う台座を見ると、あたしもついつい立ってみたくなるもの」
と言って、空き台座に立ち、つん! と澄ますビキラ。
「わあ、そっくりだ。お姉ちゃん、どこの守備隊?!」
「守備隊? や、やっぱりよく分かんない話ね」
「守備隊のお地蔵さんが、ぼくを助けるためにお姉ちゃんになったんだよ」
少年期にありがちな思い込みだ、とビキラは思った。
「結局、友だちは妹を連れて来て、ぼくは鼻が高かったんだ」
「空き台座が多いのね」
「うん、身代わり地蔵だから、時々壊れちゃうんだ。村長さんの大病が治った時も、お地蔵さんがひとつ、壊れちゃったよ」
「へえ。便利じゃん」
「でも、ヨサンがないから、ホジュウできないんだってさ」
土手の地蔵の小路は、途中、大きな地蔵が行く手を阻んでいた。
「この二人のお地蔵さんだけ、背中合わせに立ってるのね」
「うん。ぼくらの村の道祖神様だよ。川上、川下、どちらからでもお参りが出来るようになっているんだ」
「なるほど。この小さな地蔵群は、道祖神様の守備隊じゃな」
「ああ、そういう守備隊」
と、納得するビキラ。
「猫耳じゃないお姉ちゃんも、一緒にお礼を言っとくれよ」
「ああ、うん、分かったわ」
と言って手を合わせるビキラだった。
少年は道祖神に、守備隊の地蔵をひとりデートに借りられて、とても助かった事を懇切丁寧に説明し、深々と頭を下げた。
少年のその信心深さに、ビキラとピミウォは舌を巻いた。
少年は、困った事があったら、道祖神にお願いに来ていたのだった。
その願い事は、自身の努力でなんとかなる事も多かったが。
そう遠くない未来に、少年魔人のたゆまぬ努力によって道祖神祭が復活するのだが、今はまだ沢山ある願い事のひとつに過ぎなかった。
ビキラが再びその少年に会ったのは、彼が村長になってからだった。
(この辺りかな借りたあの娘)
このあたりかな? かりたあのこ!!
「魔人ビキラ」第一部終了です。
第二部は、「新・魔人ビキラ」のタイトルで、いつかスタート予定です。
また、回文をオチとして、何という事もない短い話をダラダラ書きたいと思っています。
新連載の話は明日から。
「続・のほほん」は、また今日も明日も。
しまった。「完」にするの忘れた。
「完」にします。ただいま、奮闘中」




