第七十七話「遠慮のカタマリは、無い」の巻
街で少額賞金首を見つけた魔人ビキラと猫耳のサヨは、早速に共同作戦に出た。
ビキラが、
「嘔吐魚 (おうとうお!)」
だの、
「木霊な真蛸 (こだまな、まだこ!)」
だの、
「真空管買う君子 (しんくうかんかう、くんし!)」
だの、
たわいもない回文の具現化物で賞金首の注意を引きつけておいて、
「わーーはははは! そんなヘナチョコ妖術でオレ様を捕まえられると思ったか、小娘っ」
と、調子に乗って隙を見せたところを、サヨが死角から襲って難なく倒した。
「ふん。ヘナチョコなのはどっちよ」
足下にだらしなく伸びている賞金首のニヒャルを見下ろして、ビキラが笑った。
ニヒャルはデマ流し魔人で、ネガティブキャンペーンが過ぎて賞金を掛けられたのだった。
「口は災いの元」
を絵に描いたような、一本シッポの魔人であった。
「ヘナチョコなだけあって、賞金も少額じゃがのう」
と、古書ピミウォ。
「公番で賞金もらったら、お昼も近い事だし、パーーっと食事に使っちゃおう」
と言うサヨの提案に、大きくうなずくビキラとピミウォだった。
近くの公番にニヒャルを突き出し、賞金を受け取ると、早々に目についたファーストフード店に入ってゆくビキラとピミウォとサヨ。
店内は明るく、軽快な音楽が流れていた。
店員や客にあふれている笑顔。また笑顔。
「こういうお店は、雰囲気が良いわよねえ」
と、ビキラ。
「うん。釣られてこっちまで楽しい気分になっちゃうわね」
と、サヨ。
だが、注文した食べ物には問題があった。
飲み物とフライドポテトはそれぞれに注文したから良いとして、賞金額の関係で、ひとつにしたフライドチキン大盛りは、十四個入りだったのだ。
三人居るのに、三で割れない!
「あーー、誰が遠慮するのかなーー」
と、ピミウォを見るビキラ。
「大丈夫、大丈夫。あたし、万能ナイフ持ってるから」
ローブの内ポケットから刃物を取り出すサヨ。
「よくあるのよ、こういう事。九人で食べ物を分配しているとね」
そして、フライドチキンを切り始めるサヨだった。
「集団生活の知恵かのう」
と、ピミウォ。
ビキラと二人だけだと、ナイフがあるにも関わらず、「残り福」はビキラに食べられていたからだ。
(こうやって、分身のはずのビキラとサヨは、少しずつ性格が違ってゆくのだろう)
と、ピミウォは思った。
(ケンタッキー切ったんけ)
けんたっきー、きったんけ?
個人的に、とても気に入っている回文です。
こーゆーの、短い方が良いですよね。
次回、「魔人ビキラ」は、来週に金曜日に、
第七十八話「月見の夜」巻、を投稿予定です。
時間は、夕方の5時前後になるかと思います。
明日は「続・のほほん」を、午前中の12時前後か、夕方の5時前後に投稿予定してます。
両方はないと思います?
ほなまた明日、続・のほほん、で。




