表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/39

Prologue 紀元前115年 誕生

こちらも三日毎の更新になります。

 少女は祈っていた。


 ここは世界で最も信仰される『ヴィータ教』の総本山たる、グレーイル聖王国の大聖堂だ。

 多くの人々が見守る中、数年前に女神の神託を受け、聖王より聖女に任命された少女は、一心に祈り続ける。


 類稀なる魔力をその身に宿す少女は、人でありながら、既に人を超えた存在とされていた。


 多くの国が領土を争い戦争をしている、弱肉強食のこの大陸において、その力は生身で一国をも凌駕する。

 故に彼女の周りには人が集まった。

 庇護を求める弱者から、彼女を利用しようとする魑魅魍魎まで、色々な人がいた。


 女神から特別な力を与えられ、ただ人々を一人でも救けたいと祈った純粋な少女。

 しかし、周囲の様々な思惑が少女の祈りを歪めていった。

 救うべき人を救えず、ただ利権に翻弄される日々。


 いつしか少女の心に闇が生まれていた。


(くだらない、くだらない。私のやることなんて、何の意味もない。女神様は何を考えているの?)


 もはや信仰心も擦り切れている。


(くだらない。くだらない!)


 そして少女の心が闇に呑まれきったその時…。

 その強大な魔力は変質した。


 祈り続ける少女を見守る人々は、誰一人として気付かない。


 少女の祈りは続いた。

 しかし、今やそこにいたのは人ならざるもの。

 女神に仇なす『大いなる魔女』が生まれた瞬間だった。





 同じ時、遠い異国の小国にて。

 とある騎士が戦っていた。


 類稀なる高潔な精神と、強靭な肉体を持つ騎士だった。


 圧倒的な戦力差たる敵国に対し、人数でも装備でも練度でも劣る小国の軍を率い、たった一人で戦力差を覆す勇者。指揮を取れば自軍を必ず勝利に導く、一騎当千の騎士だった。


 敵を殺して殺して、殺し切ったとき、騎士は遂に力尽きて膝をついた。

 自分が死ねば、その武力によって何とか保たれていた祖国は滅びる。

 それが分かっていつつも、しかし己がもう死ぬと理解した、その時だった。


 目の前に女神が現れた。


『最強の騎士たる貴方へ、神託を授けます。魔女を滅ぼしなさい。今よりあなたは女神のしもべたる聖騎士なり。先ほど、強大な魔女が生まれました。世界を乱す魔女です。あなたはこれより老いず、死なず、戦い続けるのです。魔女を討ち果たした時、その魂は天上へと導かれ、我の祝福を授けるでしょう。いつの日か来たるその時まで、戦いなさい』


 こうして、『不老不死の聖騎士』が生まれた。

 女神に見出された、魔女の仇敵が生まれた瞬間だった。





 二人はまだ顔も、名前も、相手のことは何も知らない。

 しかしこの時、どちらかが死ぬまで殺し合う宿命が定められた。


 二人が最初に邂逅するまでに、数十年の時を要した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ