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2 勇者秋葉剛

自分の進むべき方向性を失いながら、いつものように訓練を終えたある日の帰り道、道端に女性ものの衣類が散乱している事に気がついた。


「あっ……」


そして服の落ちている場所のさらに奥には裸の女性が気を失い倒れていた。

この状況は間違い無い。勇者の仕業だ。

周囲を見回すが勇者らしき奴は見当たらない。

あの時の全身を焦がす怒りが再び湧いてきた。

許せない。絶対に殺す! 殺してやる!

本当は女性を介抱すべきなのだろうが、俺には二年間貯め込んだこの怒りを抑える事はもはや出来なかった。

俺は気を失っている女性に落ちていた服を掛けると、犯人である勇者を求めて道を全速力で走ったが、しばらく進むとフラフラと道を歩く黒髪の男の後ろ姿が見て取れた。


「おい! 止まれ! お前がやったのか?」

「あ〜? お、お前誰だよ。俺が勇者の秋葉剛様と知って声をかけてんのか? ヒック」


こいつ、酔っているのか。さっきの千鳥足といい、喋り方といい完全な酩酊状態に見える。この男酔った勢いであの女性を……


「お前があれをやったのか?」

「は〜ぁ? あ、あれってなんだよ。無礼な奴だな。ック」

「この道の手前に若い女性が倒れていたが、あれはお前がやったのか?」

「ああ、そんな事か。ちょっと気分が良かったからな。目の入った女の相手をしてやったんだよ。ック、勇者様の相手が出来たんだ、あの女も喜んでるだろ。結構良かったぜ。ヒック」


勇者秋葉剛のふざけた物言いを聞いて俺の中の理性は完全に吹き飛んだ。

こいつは俺の妹を死に追いやったあの勇者では無いが、本質は全く同じ。

絶対に許す事は出来ない。こいつを野放しにすればまだ誰かが被害に遭う。

俺が……俺がこいつを殺す。こいつを止める。


「もうしゃべるなこの豚野郎! 人のなりをした獣め! この豚野郎! お前は俺が殺してやる」


俺は腰に下げた剣を構えて豚野郎に向けた。


「おいおい、まじかよ。この勇者様にそんななまくらが通用すると思ってんのか? こっちは来たくもないこの世界に来て戦ってやってるんだ。女の十人や二十人なんて事ないだろ。飯だってまずいし、酒でも飲まねえとやってられねんだよ~このボケが~!」


勇者秋葉が、フラフラしながらも腰に下げていた剣を構えてこちらを向く。

構えはすきだらけ、基本の型も何もあったものではないが、こちらを向くだけで、感じた事のないプレッシャーが襲ってくる。

これが勇者か……

酔っぱらったこの状態でこの圧力。間違いなく化け物だな。

俺も剣術仲間とこの二年の間にゴブリンを討伐した事がある。

最下級モンスターであるゴブリンだが、ステータス値は概ね五十程度あり、一般人よりも遥かに強く、俺の限界値をも上回っているので数人がかりで囲んで倒した。

あの時もかなりのプレッシャーを感じたが、今のこれはその時のものとは比較にならない。


「おおおおおおおおぉぉお〜!」


俺は雄叫びを上げ萎縮する自分の身体に気合を漲らせて、秋葉に向かって全速力で駆けて行く。

間合いに入り、秋葉の頭部に向けて俺のこの二年、いやこの十八年の人生を賭けた渾身の一撃を放った。


【読者の皆様へお願い】


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