最終決戦【現実世界】(パラレルワールドの僕)
さて、凛をどうやって躾てやろうか。
麻里から聞いた情報によれば僕は今、孤立無援の(いじめられてるランキング)断トツ一位だ。そんな僕一人で(東高校権力ランキング)一位の凛に下克上を果たすのは無理だ。
まずは下僕達を取り戻そう。パラレルワールドの住人である僕は彼女達が“彼”のことを心底愛していることを知っている。
凛に脅されて離れていっただけなら必ず僕に味方してくれるはずだ。
そう決心し、目の前で寒そうに凍える麻里を抱きしめる。
裸のまま屋上まで連れてきてしまったので、せめて暖めてやろう。
麻里は困惑している。現実世界の彼ではないと薄々気づいている彼女はこのまま抱かれていいのか悩んでいるようだった。
僕は麻里の身体に巻き付けた手を緩め自分の着ていた制服を彼女に着せた。
「……しないの?」
つるぺたロリっ娘の彼女は精一杯艶っぽい声を出した。
「今日はね。今度いっぱいしよう」
今度、彼にいっぱい愛してもらえばいい。今は復讐への準備が先だ。
「麻里。僕を信じてくれ。凛を堕として元通り、僕らの学園を造る」
「………はい!ご主人様」
僕らは教室へと戻った。全員の視線が僕に突き刺さる。
それもそのはず、僕は肉食獣をさらけ出したままだ。
(クラスメイトの声)
「ありえなくない」
「けーさつ呼ぼうよ」
ごちゃごちゃと騒ぎ出す二軍三軍達。
「うっせーんだよブスッ」
僕の下僕に戻る決意を固めた麻里は毒舌ロリっ娘の本領を発揮する。
「お前らみたいな顔の奴らに使うわけないでしょ。勿体無い」
「お前はまずその出っ張った腹をどーにかしろよ。女として終わってんよ」
「ここの男どもの粗末なやつでも舐めさせてもらえば」
~~~
止まらない。いつもの麻里だ。しかし、流石にクラス全員相手に押しきれるだろうか、そう思ったとき一人の女が机を蹴り上げた。宙を舞い長い滞空時間を経て教室の真ん中に落下する机。その衝撃音が無音を作り出す。
彼女に集まる視線。
「お前らいつまでしゃしゃってんだ?潰してやろうか?」
それは女番長桜だった。「お前ら」とはクラスメイトに向けて言っているようだ。そういえば、こちらの世界では麻里になついていた彼女だ。麻里の勇姿を見て番長の血が騒いだのだろう。
これは謀反だ。学園の女王、凛への反逆。女が一人、教室から出ていこうと扉に向かう。反逆者の報告に向かうつもりか。彼女より素早く動き扉の前に立ちはだかる里美の姿が目にはいる。
里美はこちらを見て頭を下げ、僕への忠誠心を表した。
一華と二葉は、その辺にいた冴えない男の服を脱がし僕に持ってきて、目の前で膝まづく。
皆、我慢の限界だったのだ。ひとつのきっかけで僕らはまた一つになれた。
彼女達がその気になれば凛に一泡吹かせられるはずだ。
もらった他人の制服を着込んだ僕は黙り込んだクラスメイトを置き去りに、凛のいるクラスへと下僕達を引き連れ向かった。
逆転への兆し。心に広がる高揚感。しかし、そこに志津の姿がないことが気掛かりだった。




