やられたらやり返せ
凛の家から一緒に登校した僕は彼女のいう通り作戦を実行に移す。
金持ち令嬢、金城志津が教室に入ると、いつもなら僕を除くクラスの全員が彼女に挨拶をする。
しかし、この日は誰も寄ってこない。
戸惑う志津だがビルのように高いプライドが邪魔をし、自分から挨拶することが出来ず静かに自分の席につく。
休み時間になっても志津の近くには誰も寄ってこない。
昼休みには彼女の周りを囲むように人が集まるのだが、今日はやはり一人だ。
彼女はなにが起きているのかわからずおどおどしている。
が、彼女には身に覚えがあるはずだ。実際彼女が僕に対してやったことなのだから。
放課後になっても教室に残っている志津を眺めながら二人きりになるのを待つ
教室から最後の一人が出ていったあと、周りを見渡し志津が僕に近づいてくる。
「あなたの仕業ね」
志津の氷のような目から殺気が漂う。
僕は無視する。
「最近他のバカ共をいいなりにして調子に乗ってるみたいだけど」
普段はクールな女が感情的になっている。
他にも「あんな貧乏人たち」「友達の振りをしてやってただけ」だの、強がりを並べる志津。
予定以上の収穫だ。僕はあるボタンをおす。
「あなたの仕業ね」「最近他の~」「あんな貧乏人~」
志津が放った言葉がそのまま志津に返っていく。
これが凛から聞いた作戦だった。まずはクラスメイト達に志津を無視するよう仕向ける。これはいまや僕のいいなりになっている「いじめてくるランキング」元ランカー達が役立った。
特にパラレルワールドでは「お漏らし番長」として落ちぶれたが現実世界では「にゃんにゃんし出した番長」である桜の力は絶大だった。
プライドの高い志津は絶対に他の人間の前では僕に話しかけてはこない。二人きりになったときに、ボイスレコーダーを作動。弱味を握る。ここまでうまくいくとはね。
「…ちょっと!それどうする気」氷のような目が溶けて冷や汗を流し出した志津。
君の本音を皆に教えて上げよう。と言うと彼女は、まだ溶けきらない氷の目で僕を見下す。
「あんたの言うことなんて誰が信じるのよ。そのレコーダーだって私の声だという証拠はないわ」
「あら、私も聞いてたわよ」
凛がここで登場する。
「凛!なんであなたが…」
生徒会長である凛の言葉なら皆信じるだろう。そう悟った志津の目から氷が溶け、冷や汗を流し出した。
「悪かったわ。謝るから許して」
僕の腕にしがみつき控えめな胸を擦りつけながら甘い声を出す彼女。昨日までの僕ならそれで許していただろう。
彼女の胸を振りほどき、凛を抱き寄せる。凛は勝ち誇ったような顔を志津に向けた。
「土下座でもさせる?」
凛の提案に僕が答える前に志津は頭を地面につけていた。
「裸でに決まってるでしょ」
「そのまま男子トイレにいくわよ」
凛の暴走が止まらない。
しばらく、放っておいたが心配になり男子トイレに行ってみると志津は個室の扉を開け、泣きながら自分の身体を弄んでいた。
その様子を笑いながらムービーに納めている凛に僕は最大の恐怖を覚えた。




