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82歳のおばあちゃん。  作者: Haru'''
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-Obachan of hatijunisai-

82歳のときめく乙女の物語。

  すぐ忘れてしまいそうなありきたりな調子のBGMが流れ、空間の半分以上を加齢臭が占めている喫茶店。私は昨日と同じようにここを訪れ、また昨日と同じように1日が終わろうとしていた。

 カウンター席の裏で食器を洗っている友蔵さんに今日もありがとうと伝えると彼は彼なりの優しい笑顔で

「明日も来てね、せっちゃん」

と言った。私はその言葉になんだか慰められたように感じつつカランカランと哀愁漂う鈴の音を鳴らし、外へ出た。私の家は喫茶店から歩いて5分。その手軽さが私があの喫茶店へ毎日通いつめているひとつの理由でもあった。家の前に着き、表札に書かれている名前が自分のものであるときちんと確認し、鍵穴に鍵をさし、カチリとまわす。ドアが開いた。

 

  私の名前は佐藤セツ子、82歳のおばあちゃん。おばあちゃんって言ってるけど、孫や子供がいる訳でもなければ、夫もいない、夫もいない。家についた解放感を感じつつ、足を振って靴を乱雑に脱ぎ捨て、お気に入りのぬいぐるみが置いてあるお気に入りのベッドへ2m前から跳んでダイブした。ばっふーん。玄関のすぐ前にベッドがある素晴らしさとそれを思いついた自分に自分で感心した。そして、全く反発しない枕に顔を埋めて今日の収穫を振り返る。斎藤さんは75歳にしては体ががっちりしてそうでよかったけど、まだ足りないし顔もダメ。杉さんはすっごい男前で笑顔にときめかされたけど、ちょっとひょろっちすぎるかな。他の男は..ただの加齢臭の発生源だったかな。やっぱり、今日も収穫はゼロだぁ。

  そう、私はあの喫茶店に意中を寄せられる男性がいないか、毎日探しに行っている。最近になって結婚願望が出てきた。案の定、もう子供は作れないけど体はすごい元気だ。2mのダイブが出来るおばあちゃんなんていないだろ!がっはっは!明日は3mにしようかな!HA!とにかく、私は結婚したい。そのためにも外ではきちんと気品を保ってる。理想はアーノルド・シュワルツェネッガーかな〜。Hehe~♪



  小さな街灯とまん丸のお月様だけが街を照らす時間になった時、神様は玄関のすぐ側に置かれたベッドでイビキをかきながら爆睡している1人の乙女を見つけた。神様はチンチロポンポンピナパーレと小さく唱え、その直後、一瞬だけだがその乙女の周りを小さな光がつつんだ。

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