プロローグ
こんにちは。こんばんは。
この作品を今から読もうと思う方、読もうか悩んでいる方、そんな皆様にまずは見つけてくださったことを、感謝したいと想います。
前書きまで読んでくださっている方、本当にありがとうございます。
ここで、この話がどうとかこうとか説明しません。取りあえず、読んでみてください(笑)
最後まで読んでくれると嬉しいです。
この世界には、上下関係というものが存在する。
だが、その関係に見合わない人物というのも、必ずというほど存在する。
公立の中学校。創立100年と伝統ある学校。
──市立島ノ瀬中学校。
このような古くさい学校に通わなくてもいいのに、と言える才色兼備の少女がこの学校にいた。
勉学・運動能力・お金・性格・外見
全てを持ち合わせた少女。
「新入生代表挨拶、1-2 富貴珠咲さん。」
「─はい。」
富貴珠咲。元華族の娘。
いわゆる令嬢というものだ。
華族という言葉はもう耳にしなくなってきたが、このように今もまだ歴史というものは残っているのだ。
だがそんなこと、生徒や先生が知るはずもない。
ただ彼女は、お金持ちの女の子というどこにでもいそうな設定だ。
彼女は真新しい埃一つ無い制服をぴったりのサイズで着こなしている。
懐かしいとでも思うようなセーラー服だが、彼女が着るとまるで、天の羽衣でも着ているかのようだ。(少し大げさかもしれない…。)
また、壇上へ歩いていく一歩一歩の踏み出しでさえ美しく、体育館中に響く。
セーラー服の上から見えるわけではないが、すっと伸びた背中のきれいな筋までも透けて見えそうだった。
彼女は舞台に立ち、全校生徒に一礼をした。
その姿ですら、目にしてはいけないようなものを見るような視線でもあった。
「遅咲きの桜が私達に春を呼んでいます。
今年度は桜の開花時期が早いためか、ほんの少し滲んだ桜でも、愛しく感じてしまうものです。
さて、私達一年生はこの度、市立島瀬中学校に入学しました。
心から嬉しく思います。
この先の中学校生活がどのようなものになるのか。そこには不安感、期待感、高揚感など、人それぞれの感情が存在します。
それでも、学び、辛きことも乗り越え、大切なものを一つ一つ自らの手で、探していきたいと思っております。
先輩方。私共一年生に厳しく、正しき道をお教え願います。
そして、この日を思い出として語れる日を迎えられることを心から望んでおります。
一年 新入生代表 富貴珠咲。」
会場の生徒は文字に置き換えられない驚きを感じたのか、ただおもむろに力強い拍手、よく響く拍手、音のこもる拍手など、多彩な音が聞こえたのは確かだった。
彼女の“挨拶”とはこのように堅苦しいものなのか、いやこれほどまでに美しいものなのか、と口に出てしまいそうになったのは生徒だけではない。
教師たちも固まるほどのものだった。
担任の先生、八槙先生が彼女に近寄ってきた。
八槙は見た目からして低身長。150あるかないかのとても小さい人だ。
従って、なのだろうか。
胸はとてもなだらかだ…。
「珠咲ちゃん。ありがとねー!ほんと、ヨシとヒロとは違うしっかり者ねーっ!」
ヨシとは、珠由。
ヒロとは、珠広のことだ。
彼らはとても似た双子だ。
八槙は去年、珠咲の双子の兄、ヨシの方の担任だった。
昨年と一昨年はヒロの担任だった。
「いいえー。兄は私より仕事が早いので…。」
謙虚なところがどこか可愛らしい。彼女を目で追っていた者は、その姿に一人、彼女の今の表情だけをひたすら脳内で想像していた。
「それは2人合わせてだからねー。」
珠咲のボケには少し華がある。やはり、お嬢様らしいところが見える。
「止めてくださいよ?せんせ~。兄に勝ちどころがなくなってしまいます(笑)」
一応、正直者のようだ。
「そうだねっ☆」
八槙と彼女の会話は周りから見ると“兄というつてで先生に気に入られようとしている”というようにも見えた。
だが、あの挨拶を聞いたからか、そのように思う人間はほんの一握りに過ぎなかった。
非の打ち所のない少女。
だが、彼女がこの島ノ瀬中学校に来た理由は、兄がいたから、先生に気に入られるため、全校生徒からの支持がほしい、恋愛がしたい、中学受験を受けられなかった、といった理由ではない。
彼女には、この学校にしかない兄が造り上げた世界にいきたいだけだ。
その世界に3年間を懸けようと入学する前から決めていたのだ。
最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。
感想や、誤字、アドバイスなど、皆様と一緒にこの作品を創り上げたいと思っています。
また、この続きを読みたいと思ってくれている方、共感してくださった方、心から感謝します。