引っ越しすることになりました。
私たちの反応に満足そうだったお祖父様は、しかし真面目な表情に戻すとお父様とお母様を見据えました。
「隠せはするがこれもずっとは、無理じゃ。このペンダントを外せばまた色は戻ってしまうからのぅ。だから、レティは領地で過ごさせてはどうじゃ?」
お祖父様の言葉にお父様とお母様は、そう言われることを予想していたのでしょう。少しだけ寂しそうな表情をしながらも同意しました。
私としては領地も好きですがお父様やお母様、お兄様と離れて暮らさなければいけないのはとても寂しいことです。
私はお祖父様の膝から降りるとお母様に抱きつきました。
「レティ、一緒にいれないのは寂しいけれど、ずっと会えなくなる訳ではないのですから泣かないで」
そう言ってお母様は私の頬を伝う涙を優しくハンカチで拭ってくれます。
「そうだよ。僕も会いに行くから」
お兄様もそう言って頭を撫でてくれます。
お父様はそんな私たちをギュッと抱き締めてくださいました。
その後は怒濤のように色々と決まっていきました。
私と一緒に領地に戻る使用人をどうするかとか、発露した魔力を誰に頼んで封じて貰うとか…。
結局、あまり大人数を連れて帰るのもよくないと言うことで、侍女のエミリアと私の乳兄妹のルドベキスとプリシアが領地に行くことになった。
子供たちだけが付いてきていいのかと二人の親に問えば、元々二人は私に仕える予定だったのだから気にするな、と言うことだった。
…ホントにいいのだろうか?
まぁ、我が家の領地とはいえ年に1、2度しか行かない私には領地での友達などはいないから、二人が一緒に来てくれるのはすごく心強いことではあったのだけれど。
それと、私の魔力はお祖父様の伝で口の固く信頼できると言う魔術師に封じをかけてもらった。
これで、よほどのことがない限り魔力の暴走が起きたりすることはないらしい。
ただ、完全に封じてしまうと学園に入るために封じを解いたときに感覚が狂ってしまうから、それを防ぐためにも、簡単な基礎魔法くらいは使える程度の魔力は引き出せるようになってるんですって。
そんな面倒そうな封じをする役目を担ってる魔術師の方々ってどれだけ能力と技術があるのかしら?
すごいわよね。
とりあえず、そんなこんなで、1週間もかからずに私が領地へと向かう準備は整ったのだった。
ちなみに、第二王子の件は、お祖父様にペンダントを頂いた翌日にお会いして、丁重にお断りしました。
だって、王子妃なんて興味ないし、何よりそんなことになったら、それこそゲームのシナリオ通りになってしまいそうじゃない!
私はそんなのに縛られたくないし、好きなことをしたいんですもの。
まぁ、まだ自分が何が好きで何が向いてるかなんてわからなかったりもするけれど、それは大きくなればわかってくるでしょうしね。
そう言うわけで、私はお祖父様と一緒に領地へと引っ越したのでした。