思ったよりも大変なことだったようです。2
続きです。
そのまま固まってしまった私におじい様は、はっはっはっと何でもないことの様に笑っていらっしゃる。
いや、笑い事じゃないから!
王子様と結婚もイヤだけど、神殿に仕えるのもイヤだし!
なんか、規律とか戒律とか厳しそうだし!
そんなの精神は年食ってても5歳児の幼子には無理です!
っていうか、幾つだったとしてもそんなもの遠慮します!
思ったままを吐き出しそうになったのをなんとか、押しとどめて、私は瞳を潤ませながらおじい様を見上げる。
「おじいさま、私、しんでんも王子様とけっこんするのも、いやです」
へにゃん、と今にも泣きそうになりながらおじい様に訴えました。
一応、断っておくとこの表情は計算じゃないですよ。
いくら戻った記憶がアラサーのモノだとしたって、所詮ここではまだ5歳児も子供です。
感情をうまく隠すことなんてできません。
まして、まだ精神と身体がちぐはぐな感じがしますし・・・。こればかりはこれから徐々に慣れていかなければいけないのでしょうけど・・・。
そんな私におじい様は、よしよしと頭を撫でてくれます。
ちなみに両親は後ろで頭を抱えるようにしています。
おそらく、お兄様から話を聞いて私が王子様と結婚したくないのをなんとなく察していたのではないでしょうか。
そして、王族と結婚したくないらしい娘を、だからと言って神殿に預けるのは親としては避けたい、というところでしょうか?
まぁ、これでも貴族ですから娘の結婚は色々と使えたりもしますし・・・。
なら、王子に嫁がせればいいじゃないか、となりそうですがどうもそう簡単な話ではないようです。
きっと派閥だとか色々なしがらみがあるんでしょうね。
あくまで憶測ですけど。だって私にそんな政治の事なんかわかるわけありませんもん。
けど、小説や漫画にそういう設定あったりするから、そんな感じなのかな、と。
いや、ちょっと話が逸れました。
問題は、私の今後です、今後。
まさか5歳で身の振り方を決めなければならないなんて・・・。なんて無茶苦茶な世界なんでしょう。
「そうか、そうか。なら、いっそ隣国にでも逃げるか?」
はい?
「父さん!?」
「お義父様!?」
「おじい様!?」
あ、三人の声が揃った。って、違う。りんごく?隣国って何ですか?まさかの亡命!
「まぁ、それは冗談だ。わしも可愛い孫を遠くにやりたくはないからのぅ」
三人の反応におじい様は楽しそうに笑っております。
いや、それこのタイミングでいう冗談ですか!?笑えないんですけど!
「ハイドライド殿下の件はともかく、神殿から逃れるくらいはできるじゃろうよ。大体、過去にもそういう話はいくらでもあるしのぅ」
そう言っておじい様は私の首に子供が付けるには大きめなネックレスを掛けてくれました。
月長石でしょうか?いえ、光の具合で青くも輝くので、ブルームーンストーンかも。
思わず手にとって見ていると石から何かが流れこんでくるような感じがします。
不思議に思っておじい様を見上げると、おじい様は私に何が起きているのかわかっているのでしょう。
うんうん、と満足気に頷いています。それに問うような目を向ければ、おじい様はまた私の頭をわしゃわしゃと撫でてくれました。