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王子様がきました。

「レティ!今の光は一体なんだい!」


そう言いながら勢いよく部屋に入ってきたのはお兄様、とその後ろを私と同じくらいの年頃の少年がお兄様に続いて入ってくる。

廊下で待つように言われたのか、彼の護衛だろうか?少年と言っても差し支えなさそうな青年の姿がチラリと見えた。


「光ですか?」


私はお兄様の言葉を反復する。そしてすぐにそれが何を指しているのかを察した。

どうやら、先ほど瞼越しに感じた光は思ったよりもずっと規模が大きかったようだ。


私としては指先に光が集まっているくらいだと思っていたのに…


「…多分、これのせいですわ。どうせ消えないならせめて見苦しくなければいいかと思いましたの」


そう言って少しだけ寝巻の襟を緩めてお兄様にだけ見えるように傷のあったところを見せる。


「…まだ、自分では確認していませんの。少しはマシになっています?」


傷跡を見たまま固まってしまったお兄様の様子に不安になってきて、私は襟をもとに戻しながら恐る恐る聞いてみた。


…やっぱり、思いつきでやってもダメよね。

けど、これで貴族令嬢としての体面を繕えるならそれに越したことはないと思ったのだけれど…

そしたら、王子様からの求婚も断れるかと思ったのに…


お兄様の反応の無さに、自然に顔は下を向き、しゅん、と俯いてしまう。


「い、いや、そんなことないよ!あんまりにも変わっていて驚いただけだから」


そう言って私の頭を優しく撫でると、「見てごらん」と、ベッドサイドに置かれていた鏡を手渡してくれた。どうやら最初に目覚めたときに使った鏡はずっとそこに置かれていたらしい。

自分の部屋のことなのに全く気付かないあったのは、うん、色々思い出して気が動転してたからってことにしておこう。

そんなことを思いつつ、手渡された鏡を覗き込む。


うん、実はさっきからこっちを見ている少年が気になってもいるんだけど、まずは傷跡がどうなったか確認しないとだしね。この出来次第で断れるかにかかってるんだし。

まぁ、こんな傷一つで第二子とはいえ王子が求婚に来るなんてゲームではそうだったかもしれないけど、現実にあるわけないわよねぇ。

なんて、現実逃避な思考に捕らわれつつ、覗き込んだ鏡に映る肌に思わず目を見張って、お兄様に目を向けた。


「…お兄さま、普通傷跡ってこんな簡単に形を変えられるものですの?それに、それに、目の色が…」


私の言いかけた言葉をお兄様はそっと唇に指を押し当てて遮る。

その時になって、お兄様の後から入ってきた少年の姿を私の方からは見えるけれど、彼からは私の顔が見えないようにお兄様が彼を視線を遮ってくれていることに気付いた。

お兄様は私が気付いたことに気付いたのか優しく頭を撫でながらさり気なく前髪で目を隠した。それからそっと体を離すと後ろを振り返った。


「殿下、申し訳ありませんが妹は先ほど目覚めたばかりですので、今日はご遠慮願えないでしょうか?」


お兄様の『殿下』という言葉にピクリと体が感応する。


まさか、本当に求婚しに来たの?

道理で、お兄様が見えないようにしてくれていたはずだわ。

きっとシスコンなお兄様のことだ、断ってくれていたのだろうが、断り切れなかったといったとこだろう。

いくらお兄様が王太子殿下と仲が良いとは言っても相手は年下でも王族である。臣下の立場になるお兄様としては立場を出されては断りきれないだろう。

まして、うちは公爵家で第二王子と私は同い年、見た目はお兄様と似ているから不細工ってことはないわけで…

彼の婚約者候補の一人に挙げられても元々おかしくはないのである。

それが怪我をさせたという醜聞が原因とはいえ、色んな家から権力闘争を考えつつ他の婚約者を宛がうより、レティーナにしてしまった方が楽というのもあるのだろう。

まして、国王陛下と父であるラナンキュラス公爵は旧知の仲である。

なんでも、学生時代からの仲らしい。

魔力の無い二人が通っていたのは騎士学校らしいが。

なんで、国王陛下が騎士学校に通っていたのか、とか突っ込みたいところも無くはないが、とにかく二人は仲がいいのだけは確かだ。


あ、騎士良いかも。

騎士だったら怪我して当たり前だし、この傷だって気にならなくなるだろうし…

いいな、女騎士。

婚約解消されて、国にいられなくなったとしても剣があれば商隊の護衛とか、傭兵…は無理かもしれないけど、とりあえず職に困ることはないだろう…

なんなら貴族のご婦人やご令嬢の護衛なんて仕事もできるだろうし…


「し、しかし…」

「それに、ご心配には及びません。傷跡はキレイに消えていますから。殿下が責任を感じる必要はありません」


つらつらとそんなことを考えてる間もまた王子様は部屋を出て行っていなかったらしい。

お兄様の背に隠すようにされている私のことが気になるのだろうチラチラとこちらに視線を向けていることは分かった。


「それに、いくら殿下といえども面識のほとんどない女性の部屋に無断で入って、寝起きの令嬢に会わせろ、とはいささか乱暴かと思いますよ?」


「…っ。ラナンキュラス令嬢、今日は失礼いたしました。後日改めて会いにまいります!」


お兄様の言葉に言葉を詰まらせた後、王子様はそれだけ言うとくるりと踵を返して部屋を出て行った。

そして、それを見送るお兄様…。

仮にも相手はこの国の第二王子。

お見送りとかしなくてよろしいんですか?お兄様…。

書き進めてたら、階級で不都合が出そうだったので、ラナンキュラス家を公爵家に訂正いたしました。


他にもおかしな点がありましたら、ご指摘いただけるとありがたいです。

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