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脱出2

結局二人は見張りを中へ誘い込むことにした。

二人とも、扉が開いたときに死角になる場所へ身を寄せると、無詠唱で風の渦を作り出す。二人で作り出した風がぶつかり合い、置かれていた家具をなぎ倒し、部屋中を荒らしていく。


「お前たち、何をしてる!?」


その音に見張りに立っていた男が声を荒げながら部屋へ入ってきた。

そんな男の首筋にギルバートが迷わず手刀を落とし、気絶させると、裂いて紐状にしたカーテンで念入りにぐるぐる巻きにして部屋の中へ転がした。


強度的に心もとないが、何もしないで部屋に転がしておくよりはマシだろう。

先ほどカーテンを外して気付いたことだが、すでに日は完全に落ちて外は闇に包まれていた。


捕らわれて、意識が戻るまでどれくらいの時間が経っていたのかは分からない為、ここが王都からどれくらい離れた場所なのかは分からない。けれど、モンステラ卿が態々出向いてきたことを考えても王都の端か少し離れたところだろう、と二人は辺りをつけていた。

元々公爵は社交の場も含め、屋敷からほとんど出ない。そんな人物が自分の目的の為とはいえ、長時間の乗馬や馬車での移動に耐えられるとは思えなかったからだ。


廊下に出ると、等間隔に置かれた魔法灯が灯されていた。それでも廊下は薄暗くレティーナたちの行く手を阻むかのように闇がわだかまっている。


見張りの男から失敬した長剣を手にギルバートが先を歩き、その後をレティーナが歩く。


頭痛は治まることなく、レティーナを苛む。

気が遠くなりそうになるのを、奥歯をかみ締め、堪えながら、なんとかギルバートの後をついていった。

気配を殺し、慎重に歩みを進めるが、誰に会うことも無く二人は屋敷のエントランスに辿り着いた。

そのことに二人は訝しげに眉を寄せる。

あまりにも屋敷の中に人の気配が無さ過ぎた。二人がこの屋敷の中で会った人間はたった3人。しかも、そのうち二人はすでにこの屋敷から出ているように感じた。

二人を攫い、閉じ込めていたにも関わらず、見張りは1人だけで、この屋敷内には他の見張りは1人も置かれていない。

にも、関わらず、全ての廊下に弱々しいとはいえ、魔法灯で明かりは灯されているのだ。

歩き回る人間がいないのに、である。

それとも、外から見られたときに人が滞在していると思わせる為なのか。


ここから出るために歩き回った印象としては、廃墟と言うよりも使われていない別邸、と言う印象を受けていた。

調度品は古く、埃を被ってはいたが壊れたものは無く、窓も汚れ、曇ってはいてもひび割れなどが入っているものは無かった。

定期的に手入れだけはしている、といった感じだ。その証拠に積もっていた埃はそれほど厚くはなかった。


「外を重点的に見張っているのかもしれないですね・・・」


ギルバートの声が思ったよりも大きく響く。それにレティーナは頷いた。頭痛は時間が経つほどに酷くなっているようだった。

外を見張りに囲まれているかもしれないこの状態で正面から出て行くなど愚の極みだろう。二人は、裏口を探すため、更に歩みを進めた。

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