生徒会2
「次期生徒会長、ですか?」
私は彼の言葉が聞き間違いであって欲しいと願いながら聞き返した。
「そう。僕の跡を継いで欲しいんだよね」
そうサラリと返してくるマクルスは断られる可能性なんて全く考えていないのだろう。
「・・・申し訳ありませんが、お断りさせて頂きますわ」
「え・・・?」
私の返答にマクルスはきょとん、とこちらを見たまま固まってしまったようだ。そんな彼の隣では、だから他の人間にしろと言っただろう、などとルピナスがぶつぶつとマクルスに文句を言っている。
「それよりも、先輩方はそろそろ教室に戻られなくてよろしいのですか?」
小首を傾げて問えば、私の返答に固まっていたマルクスがほとんどの生徒がすでに教室に戻っていることに気づいて慌てたように出口に向かう。
もしかしたらこの後は実習の授業なのかもしれない。
「ラナンキュラス嬢、僕は諦めないからね!」
戸口で、そう叫ぶとマクルスはルピナスと共にカフェテリアを後にした。
「・・・はぁ」
そんな二人がいなくなり、私も待っていてくれたプリシアと共に教室に向いながら、ため息をつく。
「さっきの最後の一言、変な誤解を招いてしまいそうですわね」
「本当ね・・・」
あそこだけ聞いたら、とても生徒会への勧誘の話とは思えないだろう。マクルスやルピナスに好意を寄せているご令嬢は本当に多いのだ。こちらとしては出来ることなら彼女たちとは関わることなく穏やかに過ごしたい。
彼らに心酔している者の中にはカルミアの様な盲目的な者がいないとも限らないわけだし・・・。
とはいえ、リリアーナの場合と違いレティーナは公爵令嬢。
彼女より高位貴族の令嬢は学園にはおらず、その為、露骨な嫌がらせを受けるということはないのだが、それでも揉め事の種は無いに越したことは無いのである。
大体、生徒会に入ったら攻略対象(攻略者=プレイヤーです)の二人と嫌でも接点が増えてしまうし。いくらヒロインであるリリアーナがレティーナに懐いているとはいえ、どんなゲーム補正が起こるか分からない。
それに、ゲーム補正が無かったとしても、生徒会長なんてやりたくないのよね。自由にできる時間が減ってしまうし・・・。表だって色々やるよりも裏で指示を出したりする方が性に合うし・・・。
だから、私以外の誰かを指名してくれないかしら・・・。
生徒会に関わって、余計なフラグ立てたくないのよね。
しかし、そんなレティーナの願いは虚しく、マクルスとルピナスは彼女の元に日参するようになったのだった。




