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決闘

開始の合図と共にハイドライドが斬り込んできた。

それに観客席にいる生徒達からは感嘆の声が漏れる。

濃く赤みを帯びた金髪に碧玉を思わせる碧い瞳、均整の取れた肢体を包むのは金糸銀糸で飾られた黒の騎士服を模したもの。

彼の残念な中身さえ知らなければ貴族の令嬢でなくても思わす見とれてしまうのだろう。


残念ながらレティーナは彼の外見に心奪われたりなどしたことは一度も無いが。


「ヘデラに代役を頼まなかったんだな」


どこか馬鹿にしたように言ってくるハイドライドにレティーナは鼻で嗤って返した。


「殿下のお相手などルドにわざわざ頼むほどでもありませんわ」


その言葉にカッとハイドライドの顔が赤く染まった。


「貴様!どこまで私を馬鹿にする気だ!」


そう言って勢いに任せて斬り込んでくるハイドライドの剣をレティーナは冷静に弾き受け流す。ハイドライドの刀身が赤い輝きと熱を帯びていることから、彼が剣に付与したのは炎の属性なのは簡単に察することができた。

対するレティーナは取り合えずで土属性で刀身強度を上げている。

会場は二人が斬り結び、刃の弾く音と共に観客の声と熱気に包まれていた。

黄色い声援はハイドライドだけではなく、レティーナにも惜しみなく送られている。


金の髪に黒のハイドライドに対して銀の髪を翻すレティーナが纏うのは白い身体のラインの分かる細身のドレス。ドレスには太ももの辺りまで大きくスリットが入っており、その下には黒のパンツをはいている。足元は動きやすさを重視してるとは思えないヒールが高めのブーツを履いているのに、彼女の動きはまるで舞いでも舞っているかのように軽やかに見えた。


ハイドライドは力任せにレティーナに向かっていっているのに対し、彼女のそれは風か流れる水を思わせるほどに無駄な動きも力も感じさせない。


そんな二人のやり取りを観て各騎士団の団長、副団長はなんともいえない顔をしていた。


「ハイドライド殿下は剣術の練習をきちんとして・・・」


「ませんね」


近衛騎士団の団長の言葉を遮るように副団長が答えた。それに、他の団長たちも思わずといった感じで頭を抱える。


「せめて、武力ででも王太子殿下を支えられるようになって下されば、と思っていたのだが・・・」


「あの様子では無理でしょうねえ」


「あの方は、努力や我慢と言うことがお嫌いだからな。第二王子だからと周りが甘やかしすぎたか・・・」


「それにしても、ラナンキュラス嬢の腕は大したものだな。殿下は完全に遊ばれてるぞ」


「殿下と違って普段からきちんと鍛錬を積んでいるのだろう。息ひとつ切れていないしなぁ」


そんな騎士団長たちの様子に気付くこともなく、レティーナはハイドライドの剣を受け流しながら、もうそろそろいいかしら?とチラリと観客席で自分たちの様子を見ている国王陛下の方へ視線を向けた。


偉丈夫としても名高い今上陛下はその精悍な顔を微かに歪ませている。

果たしてそれが女相手に決闘を申し込んだ事に対してのことなのか、女相手にここまで軽くあしらわれていることに対してのことなのか・・・。


二人を囲んでいる観客の中でも剣術の授業も受けている男子生徒たちの中には二人の力量の差に気付き始めている者もいるだろう。


知らぬは本人ばかり、というところか。


ある程度、相手はしたのだし、そろそろ面倒にもなってきたので、レティーナはハイドライドの剣を返すと間合いを取った。


「やぁぁぁぁ!」


そんなレティーナに気合と殺気を込めてハイドライドが斬りかかってきた。


キィン・・・


甲高い音を立てて、ハイドライドの剣が折れ、弾け飛び、レティーナの剣の切っ先がハイドライドの喉元を捕らえていた。

折れた剣が触れたのか、レティーナが危うく目測を誤りそうになった為か・・・。

ハイドライドの頬に一筋の傷が出来ていた。


「しょ、勝者、レティーナ・ラナンキュラス嬢!」


審判の者が、動揺しながらも声高にレティーナの名を叫んだ。

直後、会場が大きな歓声に包まれる。


レティーナはその声に剣を鞘に収めると、二人の見届け役の陛下に頭を下げて、早々にその場を後にした。


後には、座り込んだまま動けずにいるハイドライドだけが残されていた。

半端な感じが否めなかったので、ここで一区切りになるように少々追加いたしました。

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