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決闘を申し込まれました。2

「いけませんね、殿下。涙を流して嫌がる女性に迫るだなんて…。品性を疑ってしまいますわ」

そう言って、リリアーナからある程度の引き離してから、レティーナはハイドライドの口元を押えていた手を離すと、二人の間に立った。


…殿下から隠してくださっている?


レティーナが二人の間に立ったことで、リリアーナからハイドライドの姿は見えなくなった。おそらく彼からもリリアーナの姿は見えなくなっているだろう。


「レティーナ!なんで貴様がここにいる!?それにリリアーナは私の恋人だ!恋人たちの逢瀬を邪魔するなど、無粋にも程がある!」


ハイドライドの言葉にリリアーナは血の気が引いていくのを感じた。

そんな事実はないと言うのに、ハイドライドは声高にレティーナを糾弾し、リリアーナを彼の恋人だと主張してくる。

そんな事実はないし、今この場にいるのも彼に無理やり連れ込まれたからだ。なのにそんな風に主張されたらまるですでに二人は男女の関係のように思われてしまうかもしれない。それだけは本当にイヤだった。

世間は貞操に対して厳しい。すでに殿下に手を付けられたなどと噂になれば、リリアーナはもう誰とも結婚はできなくなる。それどころか愛妾としてハイドライドに囲われる生活を強いられることになるだろう。


…私は殿下のことなんてなんとも思ってないのに!


「逢瀬?でしたら、何故、リリィは青ざめて泣いていたのかしら?」


ハイドライドの言葉に、怒りと羞恥と絶望と…色んな感情がごちゃ混ぜになり身体を震わせていたリリアーナをレティーナは慰めるように抱きしめながらハイドライドに問いかける。

その声は静かだが、確かな怒りが込められていた。抱き寄せられ、その胸に顔を埋めるリリアーナからレティーナの顔は見えない。


「な、泣かしてなどいない!ただ、貴様に邪魔されることなく私と二人きりになれたのが嬉しくて感極まったのだろう!」


「殿下と二人きりで感極まる?寝言は寝てから言ってくださいな。恋人との逢瀬で恐怖で青ざめて涙を流すなどありえないではありませんか」


「恐怖だと!?リリィは奥ゆかしいだけだ!貴様はどれだけ私の恋人たちとの逢瀬を邪魔すれば気が済むのだ!」


怒りで顔を真っ赤にしながら怒鳴り散らすハイドライドにレティーナは辟易したようにため息を吐いた。

レティーナの腕の中、彼女の顔が見えるようにと身じろいだリリアーナはその言葉に内心で首をかしげる。


私以外にも殿下の毒牙に掛かりそうになった令嬢がいるのだろうか?


そう疑問に思いながらレティーナを見上げれば、彼女はその美しい紫暗(しあん)の瞳を剣呑(けんのん)に細めると一言言い放った。


『黙れ』


「?!」


先ほどまで怒鳴り散らしていたハイドライドは驚いたように自分の喉を押さえ、レティーナを見てくる。


「まったく、無駄吠えをする犬でもあるまいし…。少々騒々しかったのでお声を封じさせていただきましたわ。まぁ、1時間もすれば自然と解けますから安心なさって?」


そう言ってレティーナはハイドライドに可愛らしく小首をかしげて見せる。

ちなみに、小さく呟かれた、最初の一言はハイドライドには聞こえなかったようだが、抱きしめられていたリリアーナの耳にはしっかり届いていた。


レティ様、怒ると怖いわ…。今後も絶対に怒らせないようにしましょう…。


その声の低さに内心、戦々恐々としながらリリアーナは心に決めた。


「それにしても、貴方は全く学習と言うものをしないのですね。何度私の手を煩わせれば気が済むのでしょうか?」


 そう言って、レティーナは抱きしめていたリリアーナを離すと、ハイドライドに歩み寄る。それに彼は青ざめて後退した。ハイドライドの様子から彼はレティーナが何をしようとしているのかがわかっているようだったが、リリアーナにはもちろん分かるはずもなく、普段は近づくどころか避けているようだったハイドライドに歩み寄っていくレティーナを不思議そうに見ていた。


白くほっそりとした指がハイドライドの額に当てられる。


『この場で起きた事、見聞きしたことの全てを口外することを禁じます』


魔力(ちから)を乗せて言葉が紡がれると、淡い光が指先からハイドライドの額に吸い込まれるように消えていった。それにハイドライドは屈辱的に顔を歪ませる。


「あぁ、ここでのことは全て誰にも話すことはできませんから、不敬罪で訴えようとしても無理ですからね?」


そんなハイドライドにレティーナはさらりと伝えると、リリアーナを連れて教室を出ていった。

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