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学園

私が馬車から降りるとそこかしこからタメ息が聞こえた。

これもこの学園に入学してから5年。

いつものことなのでもう馴れてしまったが、周りの生徒たちからすると私たち3人の組合せは思わず感嘆の息が漏れてしまうものらしい。


あまり目立ちたくない私としては遠慮したいことこの上ないモノだったのだけれど、こればかりは仕方がないと諦めることにしている。


少し前まではお兄様も在学していたから、私の外見でそこまで騒がれるなんて思っていなかったし、実際私1人ならそこまでじゃない。


ただ、ルドベキスとプリシアが一緒だとそうはいかない。

2人ともすごい美貌なんだもの。


「レティ、おはよう」


そう言って私たちを遠巻きに見ている生徒たちの間から抜け出して私の隣に来たのは同じクラスで伯爵令嬢のアイリス・ローダンゼだ。


「相変わらず人の目を集めるわねぇ」


私たちを遠巻きに見ている生徒たちを尻目にからかうように言ってくるアイリスに私は軽く肩をすくめて見せた。


「まあ、それも殿下が登校してくればすぐ収まるんでしょうけど」

「そうね」


アイリスの言葉に私は微苦笑を浮かべて頷いた。

貴族から平民まで、身分関係なく在籍するこの学園内では外の階級は関係ない。

あくまでも生徒たちの身分は同じだ。

規則としては、だが。

実際は貴族階級の子女たちは平民の生徒を軽んじ、同じ貴族でも自分の階級より下の者は見下し、上の者にはおもねる。


ちなみに、下心からレティーナに近付いてきた者たちは(ことごと)くルドベキスとプリシアのグオリオ兄妹によって返り討ちにあったため、今レティーナの周りにいるのは下心などなく、身分も関係ない彼女の友人と呼べる者だけだった。


「毎朝、毎朝、飽きないのかしら…」


4人の後ろでさらに大きなざわめきが上がっていると思っていたら、そこから抜け出してきたのだろう、ぐったりとした声がレティーナとアイリスの背中にかけられた。

二人は足を止めるとまだ1日は始まったばかりだというのに疲れ切った顔をした少女をねぎらう。


クレア・アングレカム。

 

彼女はアイリスと同じレティーナの数少ない友人の一人だ。


「また、一緒に登校なさったの?」

「…みたいよ。おかげでこっちは朝から人込みをかき分けなきゃならないからいい迷惑だわ」

「あまり大きな声で言わない方がいいですわ。誰に聞かれるかわかったものではないですから」


アイリスの言葉に頷いたクレアの唇の前に人差し指を出してプリシアが注意を促す。

そんな彼女の仕草にクレアの頬が薄紅に染まる。


まぁ、美少女にそんな可愛い仕草されちゃったら、そうなるわよね。

しかも、上目使い付き。


「相変わらず、クレアはシアが好きねぇ」

「や、やだ、レティ、なんてこと言うのよ。私が一番好きなのは貴女なんだからね!」

「あら、じゃあ、クレアは私とシアのことは好きじゃないのね?」

「残念だわ…。私はレティと同じくらいクレアのことも好きなのに…」


二人が悲しそうな顔を作ってクレアを見ると、クレアはあわあわと慌てだした。


「わ、私だって二人のことも好きよ!大好きに決まってるじゃない!」


必死に言い募るクレアの様子に二人だけでなくレティーナもクスクスと笑いだした。

それにクレアは怒ったように頬を膨らませる。


「また私で遊んだわね!もう、三人とも知らない!」


怒って先に教室へ向かうクレアを宥めながら私たちも教室へ向かった。


学園に入学して、とうとう今年ゲームのスタート学年を迎えてはいたが、私の生活はいたって平和だった。


やっぱり、婚約回避したのが大きかったのかしら?

今のところヒロインとの接点はないし、このままいけば、ゲームスタートすることなく卒業できる気がした。

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