律動の朝
初投稿させていただきました、鷹隼 籠と言います。本小説を見に来てくださりありがとうございます。
それゆえ、おそらく不定期投稿となりますがあしからず。
至らぬところがn個くらいあると思いますが、どうぞ寛大な心で許していただけると。
僕の自己紹介は後に回しまして、物語の始まりです。
その日、俺はたった一人の”家族”を失った。
「おーい、おにいちゃーん。朝だよー。起きて―」
窓から差し込む明るい光と妹の声が覚醒を促す。俺は黙って起き上がると眼を擦った。狭くぼやけた視界に映るのは、俺の部屋と俺を起こした張本人だ。
「むぅ…」
「おはようお兄ちゃん♪」
「おはよう、紗奈。…しっかり7時15分に起こしてくれたのか。サンキュ」
枕元の目覚まし時計を見るとそれはジャスト7時から1/4回ったところを指していた。一度伸びをすると短い欠伸が出て、それと同時に意識がどんどん覚醒していく。たっぷり十数秒をかけて頭の中ににかかった靄を振り払うと、よりはっきりと目の前が見えるようになった。俺を起こしてくれた我が妹、社 紗奈は、ご飯作ってあるからねと言い残して部屋を出ていってしまう。その後ろ姿を見届けると、ベットから這いずり出てクローゼットを開ける。おっと、着替えの前に顔も洗わなければ。今日は新学期の始まり。二度寝という甘美な欲望を理性と水で打ち据えて、タオルで顔を拭いてワイシャツに袖を通していく。
「だるいな、学校…」
かと言って休むわけにもにもいくまい。黒のズボンに足を通して、ベルトを締める。今日は比較的暖かい方だし、冬場お世話になったブレザーは必要ないだろう。軽いカーディガンを羽織ると、昨日準備しておいた学生鞄を持って朝食が待つ階下のリビングへ。ドアを開けるとともにオムレツのいい匂いが漂ってくる。たかが朝食だと言うのに、紗奈はいつも手を抜かずに作ってくれる。なんといい妹を持ってしまったのか。いつにもまして手の込んだオムレツをありがたく頬張った。うまい。
俺たちに親はいない。厳密にはここにはいない。母さんも父さんも世界的に有名な学者で、今はおそらく西洋のどこかにいることだろう。多忙を極めているのか連絡を取ることすらままならない。たまにメールが来るのと、生活金が口座に振り込まれるぐらいだ。個人的には父さんが書類のベットで寝ていないか心配なのだが。ソースは3年ほど前に日本に戻ってきていた時のことだ。
なんとなくポケットから取り出したスマートフォンで、今日のニュース統合サイトを開いた。銀行強盗、従業員1名が軽傷。高速道路にて衝突事故、運転手二名が意識不明の重体。いつものように過激な見出しがついた一覧ページを下にスクロールしていく。もっと行先の明るいニュースをやれよ。たとえば”画期的○○、いついつ発売”とかさ。関係ない人間が死んだとしても読者には何も伝わらないだろうに。そんな中一つだけ、俺の興味を引く記事を発見。見出しには”獣人現る!?ケモナーのお前らならこの凄さ、わかるよな?”と打ちつけられていた。
「獣人?ラバじゃあるまいし、そんな異質な存在がいるのか?」
身だしをタップ。記事を読み込んでいくと、結局のところコスプレした女性だったのだが、一見では分からないほどのクオリティということで脚光を浴びたようだ。
なんだつまらん。結局どこのまとめ記事も落ちがチープだな。
ニュース統合サイトのタブを消すと、端末をスリープ状態にしてポケットにしまった。
にしても、俺を起こしてくれた張本人の姿が見えない。朝食の称賛を雨のように浴びせてやろうと思ったのだが。寝起きの言葉から察するに、先に学校に行ったという線が濃厚か。時間もぼちぼち危なくなってきた。食べ終わった食器を軽く水で濯いで食洗機の中へ。時間がないときは本当に便利なそれの設定を終え、再び鞄を携えて家を出ることにする。
家の玄関を出ると、桜の木と花びらが俺を迎えてくれた。今年はだいぶ遅咲きだったようで、今がちょうど満開の時期。始業式、入学式には持って来いの気象設定と言えるだろう。ピンク色の群れを横目に駐車スペースを除くと、やはり俺の自転車しか置いていなかった。これで紗奈は先に出発したことが確定した。俺も自転車を運び出して跨る。
学校までの道のりは約20分と平均的だし、いまから出れば余裕で間に合うだろう。家の鍵を閉め忘れていたことに気付いて施錠し直すと、相棒のペダルを踏み込んだ。
俺が住むこの町、神夜町は干拓によってできた大きな町だ。なんなら街と言っても差し支えないだろう。干拓地といえば日照りがきつかったり、土壌の海水浸食によって植物が育たなかったりと暑がりにとっては地獄の大釜のように聞こえるらしいが、この町は時代の最先端を行く技術を大胆に用いてインフラを整えた。たとえばいたるところにある機械仕掛けの風車。いわゆる風力発電機などとは羽の数が文字通り桁が違う。まるでタービンだ。これを用いることで、疑似的なエアフローを町全体に作りだし、熱気がこもらないようにしている。もう一つ上げろと言われるとマイナーどころになってしまうが、縁の下の力持ちで (この町の住民の中では)有名な海水濾過、および生活排水の浄化だ。驚くべきことに、この町の生活水すべてが浄化海水で賄われている。おまけにその浄化水の一部が別のパイプを通って、町内の植物たちにも供給されているのだ。この時点で驚きは天を突くのだが、これだけで飽き足らず、巨大なラジエーターを地下深くに搭載し町内を下から水冷すると言う機構まで整えられている。暑がりなお前ら、夏を楽しみたければここに来い。
当然それらのインフラは詳細なオンオフが可能なので、常駐設計技師が毎日その日の気象情報に合わせて設定している。文明の街であるここは正式名称よりもこの過ごしやすさからついた?”楽園塔”と呼ばれることが多い。ちなみになんで塔なのかは知らない。主席設計技師が中二病をこじらせまくった少女だとかなんだとかで、そいつがアヴァロンだの、ロンゴミニアドだの言いまくった結果という説が最も有力らしい。つまらんw。
おっと、そこの角、曲がるんだった。流石に1ケ月もいかなかった場所となると道を忘れるものだ。俺の老後が危ぶまれる。転回して所定の位置を曲がるとすぐに学校が見えてきた。
「おっはよ、やしろん。今日も仏頂面で何考えてんのー?どうせまた”つまんねー”とか言ってたんだろうけど」
「ほんとお前はつまんねーな。毎回俺の思考を読もうとするなって」
徒歩通学の女子高校生が自転車で登校する俺に挨拶をしてくる。川瀬 雛朶。幼馴染だ。1か月前のロングとは違って、すこし茶色がかったセミショートを大人っぽくセットしている。小学校のころから違うクラスになったことがないと言う圧倒的運命力が(雛朶曰く)俺たちの絆らしいが、俺はそんな安っぽい言葉を信じるつもりは毛頭ない。
「ま、腐れ縁だしな。おはよ、ヒナ」
「おー、今日は新学期初の登校ということもあって物腰が柔らかいですなぁ。ちょっと前は”おまえ”とか”てめぇ”とか”こいつ”呼ばわりしてたのに、ずいぶんと私の株が上がったんだねー」
「いつも通り、お前の株は下落中だぞ」
「なんと!?!?」
急ぐ理由もないのでヒナの歩くスピードに合わせる。なんと女性思いな人間か。とはいっても旧知の仲だ。これくらいの暴言は冗談だと分かっているし、流してもらえる。現にヒナはおどけたように見せただけで、いまは自然体だ。二人で”神夜中学高等学校”と書かれた校門を通ると、校舎までの道半ばにある掲示板に学生の群れが形成されていた。いくら初登校でクラス分けが張り出されているからと言って、この集まり方はおかしい。ヒナに目で詳細を知っているか聞くが、帰ってくるのは肩をすくめて”さぁね”の返答だ。実態が目の前にあるわけだし、百聞は一見にしかず。自分の目で確かめることにする。
「やしろやしろ…お、あった。えっと2組か」
「あー、やっぱりおんなじクラスだったねぇ。私も2組―」
どうやら圧倒的運命力の前では確率すら捻じ曲がるらしい。とは言ってんも特段嫌だと言う訳でもないし、むしろ相談できる人間がクラスに必ず一人いると思えばありがたいことだとすら思える。実際ヒナは成績優秀者によく名を連ねているし、勉強のことならこいつに頼るのが一番だろう。そう昔から決めていた俺にとっては嬉しいことの一つだ。
さて本題に入ろう。掲示板にはクラス分け以外に特に人目を引くような掲示物はない。ということはやはりクラス分けが人目を引いているはずなのだが…。
「なんかおかしいところあるか?」
「いやぁ、私にもこの謎は難解で解けそうにないなぁ、ワトソン君」
俺がワトソン役なのか。絶っ対つまらないアニメになるぞ。心中だけでそう突っ込みを入れてから、周囲の誰かにこの事態の原因を聞くことにする。近くにいた男子生徒にそれとなく話しかけてみた。
「なぁ、一体なんで掲示板の前にありえない数の学生が来てるんだ?」
「お前知らないのか?今日見知らぬ女の子がうちの学生服を着て学校に入ってきたって新聞部が号外出してるぞ?」
親切に教えてくれてありがとう。
「なるほど」
そりゃここまでの騒ぎになってもおかしくないわな。転校生がやってくると言うのは、毎日登校して、授業を受け、メシを食って、授業を受け、帰るだけのルーティンワークには強すぎる劇薬だ。それも女子となればなおさらだろう。
「で、その女の子の名前をみんなで必死になって探している、というわけか」
「そ。その通り。ちなみにおたくは何組だ?カップルの組み分けっていうのは案外面白いところがあるからな。爆死はよ」
どうやら俺とヒナをカップルと見たらしい。あり得ないことだが、そう映ってしまってもおかしくはない。だから
「2組だが」
「2組だよー」
二人で同時にそう返す。当然心の中ではしてやったりと大笑いだ。
「はぁ!?おまえら少しは聴者目線で答えろよ!嘘でもいいから、1組と3組って答えろ!リア充死すべしフォ○ウ」
「言い直してもいいが、それでお前の心は救われるのか?」
「救われる訳ねぇだろ!?死ね!」
唾を飛ばしながら俺に罵詈雑言を浴びせる男子生徒は置いておいて、そういうことなら2組のクラス名簿だけでも見ていってやろうと思う。これまたヒナに視線でそれを伝えると、二人して迅速に行動。
対象者 | 俺 | ヒナ
秋月 数也 | 知ってる | 知らない
雨峰 零都 | 知ってる | 誰お前
恵志 和哉 | 知ってる | しらないよぉふぇぇ
大垣 大成 | 知ってる | ???
「お前、友達いる?大丈夫?」
「失礼な!男子のことなんて知ってるわけないでしょ!あの三枝君とかなら分かるけど」
「あんなイケメンみて何が楽しいんだ」
どうやら二人の知り合いに偏りがあるようなので、男子っぽい名前は俺が、女子っぽい名前はヒナがチェックしていく。か行…さ行…た行…な行…
「おいおい、ついにや行まで来ちまったぞ」
「これ、2組にはいないオチじゃね?」
「よし諦めよう。つられクマー」
「うむ。クマー」
調査結果:2組に転校生はいない(推定)
第一、中学生か高校生かもわからないし、どちらかに絞れたとしても各学年40人×4クラスとして1/12×1/40=1/480を探しだすのは無茶だ。そんな情報にうろうろするぐらいだったら教室で寝てた方がマシに決まっている。それこそホームルームになれば分かることだ。ヒナはすでに教室に向かって歩き出しているし。万が一ということもある。近くになるということを想定して、や行だけは見ておこう。
“35番 社 狐白”
ん?ちょっとまて。”社 蒼輝”という父さんの圧倒的中二ネーミングセンスによってつけられた俺の名前の上に疑わしい文字列が。こんなやつうちの学年にいたか?もしこれが転校生だったら、間違いなく関係を疑われるぞ。今ほど自分の名字を呪ったことはない。佐藤とか鈴木だったらどれだけ楽だったことか。あ、全国の佐藤さん、鈴木さん、悪気はないんです。許してください。
まあここで悩んでいても仕方がない。久々に面白いことが起こりそうだし、教室に向かいながら考えるとしよう。濡羽色の髪をかいてから、ヒナの数歩後ろを同じスピードで追いかけ、掲示板を後にした。
改めましてどうも、鷹隼 籠です。本小説を手に取っていただきありがとうございます。
いかがでしたでしょうか、なんて言葉は今は言っても仕方ないと思うので、こうご期待ということで。
さっそくですが、今後の不定期を予想して、言い訳を作っておこうと思います。
現在、シナリオを書かせてもらっていて、なかなか自分の小説に手を出せるという状態ではなかったり。はい、そんな感じです。興味ある方はハナハノアオバ/ハナハノで検索していただければと思います。
話がそれました。という訳で、今回で興味を持たれた方はもちろん、なんだこの駄作、クソワナビ帰れと思った方も次回を見て貰えたらな、と思います。物語は始まったばかりです。
では、またお目にかかれますように。