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最強の海軍 8

一カ月ぶりの更新です。

少しづつでも今後も更新していきますので、よろしくお願いします。

 クルトは、今部隊が置かれている状況を素早く把握していく。

 遺物レリック特別遊撃大隊は、完全に後手になっていた。


 第三中隊は、たった一度の遭遇戦で敗走。貴重な戦力である第二中隊は、その援護に回さざるおえなくなってしまっている。

 第一、四中隊の攻撃も周囲の警戒のために本来の攻撃速度が発揮できていない。


 逐次入電される第三中隊の状況は、深刻なものだ。先ほど撃破された一機を含む三機が行動不能になってしまっている。パイロットの安否は不明だ。

 今クルトにできることは、クルトを囲む敵を確実に撃破し、少しずつでも敵の数を減らしていくことだ。


「三時の方向より射撃確認!」


 テトラの警告と共に射撃音とマズルフラッシュを伴った射撃がクルトを襲う。

 クルトは、近くの木に素早く身を隠してその射撃を回避する。マズルフラッシュの瞬いた方角に向け、威嚇射撃をすることも忘れずに行う。


「テトラ、敵の詳細な位置を教えてくれ」

「こちらになります」


 モニター上のマップに、赤い点が四つ示される。徐々にクルトとの距離を詰めてきている。


「ありがとう」

「このぐらいお安い御用です」


 クルトは、手に持つ得物をアサルトライフルから二本のロングソードに持ち替えた。


 そのまま、先ほど射撃を行った敵のいる方向めがけて駆け出していく。時節、敵の射撃が加えられるが、クルトは右へ左へとジグザグに進むことでその射撃を回避していく。大きな木々が生い茂る林の中では、ライフル銃は取り回しが悪い。さらに、木々が遮蔽物となってクルトへの射撃は制限的になるのだ。


 あっという間に距離を詰めたクルトは、まずは左手の剣を横なぎに振るう。空気を切り裂いて繰り出された一撃を敵の機体は、機体の上体を後方に倒して無理やり回避した。


「死ね!」


 体制の崩れた敵に向かって右手の剣を容赦なく振り下ろす。

 剣先が頭部にのめりこみ、装甲もろとも機体を真二に切り裂いた。

 クルトは、すぐさま次の敵に向けて駆け出す。


 相対した敵も射撃をやめて、白刃の剣に獲物を切り替えたようだ。

 敵から振り下ろされた刃をクルトは、受け止めずに剣を握る手首を斬り飛ばした。切り離された手首と剣は、遠心力に従ってあらぬ方向に飛んで行ってしまう。


 クルトは、得物を持たなくなった機体に対しても容赦なく二つの剣をねじ込んだ。

 胴体に二つの穴をあけた敵は、クルトが剣を抜くのに合わせて前のめりに倒れ込んだ。


「周囲に敵影ありません。既にレーダーの圏内から離脱した模様です。予測逃走経路を割り出しますか?」


 どうやら、敵は、戦闘に勝ち目がないとみて離脱してしまったようだ。


「いや、しなくてもいい。それよりも味方航空艦隊の情報はないか?」


 今回の戦争において、航空機の陸上戦力に対する効果は、とてつもなく多きことが判明している。

 既に、王国軍は共和国首都ペチカの制空権すら掌握している。そろそろ、この戦場に航空艦隊が来てもおかしくはない。


「現在、航空レーダーの圏内に航空機は、確認されておりません」


 テトラのレーダーに映らないということは、この戦域には敵も味方も航空機が来ていないことを示していた。


 クルトには、知る由もないことだが、この時、王国軍航空部隊は、海上にて連合王国海軍所属の航空艦隊と熾烈な制空権争いを行っていた。


 このまま敵のゲリラ戦に付き合っていては、撤退を許してしまう。既に二つの中隊が強襲を行っているがそれだけでは、足りないのは明白だ。

 クルトは、この状況を打開するための一手を打たなくてはならないのだ。


「フェンリル二〇、三〇。状況をおくれ!」

「こちらフェンリル三〇、既に後退は完了いたしました。先ほどの失敗を挽回するチャンスを!」

「今そのチャンスを下達する。第三中隊の残存兵力は、体勢を立て直したのち、全灯火を点灯したのちに前進せよ。第二中隊はその周囲を警戒。敵を各個撃破せよ」

「囮作戦でありますか?」

「そうだ。確実に撃破せよ」

「了」


 居場所の分からない敵ならば、敵に自らで来てもらえばいい。そのためには、囮作戦が最も効率がいいのだ。

 敵から見ても既に一個小隊が壊滅した第二中隊は、格好の的だ。あとは、それにつられて出てきた敵を周囲に展開する第三中隊が各個に包囲殲滅していく。


 クルト自身も打って出るために新たな行動を開始する。


「テトラ、我々も打って出る。オープンチャンネルで俺の存在を喧伝してくれ」

「了解しました」


 これも囮作戦としての側面を持つが、さらにもう一つの意味合いがある。


 テトラ、要するにアートランチスの遺物という超兵器がこの戦場にいることを示す事で、敵の精神的ダメージを狙うのだ。

 オープンチャンネルでクルト自身を喧伝する音声が流れ始めた。

「私は、神聖ローゼニア王国陸軍第八近衛師団、遺物レリック特別遊撃大隊所属、アートランチスの遺物パイロット、クルト・ベッシュ大尉である。共和国軍兵士は隠れながらしか戦えない腰抜けか! 正々堂々勝負しろ! 私は、逃げも隠れもしない、死にたい奴は、かかってこい!」


 テトラの考えた文章は、どこか中世の騎士の名乗りのようなものだが、まあ、問題ないだろう。

 クルトは、さらに、自らの位置を暴露するためにエンジン音を闇夜に轟かせる。

 そして、堂々と海岸に向かって一歩を踏み出した。

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