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始まりの戦い 2

距離にしておよそ七キロ。遺物レリックであれば、一分弱で走破する距離まで迫っている。今まで、盆地の向こう側を走ってきたのだろう。


 望遠して部隊規模の確認を行う。

 十二体の遺物レリックが確認できる。それが指し示す部隊規模は中隊規模だ。遺物レリック中隊となれば、歩兵に換算して一個師団の戦力とみなすことができる。


 さらに、クルトは驚愕を隠し切れない事実を目の当たりにする。敵部隊の中には深紅の機体が混じっていたのである。


 軍隊の兵器は、敵に発見されにくくするために、濃い緑や茶色、黒などが一般的である。現在クルトたちが乗る「王国汎用量産遺物・ノナ一九式モデル」も茶色い塗装が施されている。それが、深紅の塗装がされているのである。


 「アートランチスの遺物オリジナル」であることは、間違いない。距離があるため細部の確認ができないため機体名まではわからないが共和国は切り札を切ってきたとみて間違いない。


 無線がつながらないのも敵部隊から出されている妨害電波の可能性が極めて高い。


「各員に通達。本小隊は、CPとの無線通信可能ラインまで後退する」


 僚機の二人に機体間通信にて短く命令をして外部無線出力のつまみを最大まで上げる。

 出力が上がれば傍受される可能性が上がるが今の最優先事項は、CPとの交信だとクルトが判断した証拠だ。


「CP、CP、こちらウルフ八四。応答願う。応答願う!」


 全力で後退しながら繰り返しコールを行う。この無線が、侵攻作戦の成否を握っているといっても過言ではない。クルトは、つながってくれと、いつしか祈っていた。


 その祈りが通じたのか、

「ザーー。こちらCP。どうしたウルフ八四」

 十一度目の呼び出しで無線がつながる。

「ウルフ八四、コンタクト! 中隊規模の遺物レリック部隊が接近中! なお、指揮官は、アートランチスの遺物!」

 簡潔に見たままの情報を送る。

「歩哨だけでは対処できない! 撤退許可を願う」

 小隊であるクルトたちでは、勝ち目がない。

「了解した。上級司令部に確認をとる。その場で待機せよ」

「ウルフ八四、了」


 クルトは、通信手の待機命令に従い、その場に停止する。その後ろに続いていたアレクシス、エトヴィンもそれに従い停止する。

 待機中でも敵は刻一刻とこちらに向かって前進してくる。たった数十秒の待機時間が今のクルトには途方もない時間に感じる。


「ウルフ八四、応答せよ」

 やっとさっきの通信手から呼び出しがかかった。

「こちらウルフ八四。撤退許可はどうなった?」


 クルトは、当然撤退許可が出るものと思っていた。しかし、

「残念ながら撤退許可は出せない。その場にて遅滞戦闘に従事せよ。繰り返す、遅滞戦闘に従事せよ。なお、増援部隊がそちらに向かう」

 無線から聞こえるのは、クルトの期待を裏切る遅滞戦闘命令。

「そんな馬鹿な! 敵はアートランチスの遺物がいる中隊規模の遺物部隊だぞ。死ねというのか! なぜ撤退命令が下りない」

 

 クルトの言うことは至極当然である。量でも質でも負けているクルトたちに対するこの命令は、いわば死刑宣告と同じなのだ。

 軍人である以上国のために死ぬことは、もちろん覚悟している。しかし、そこには納得できる理由がなければならないとクルトは考えている。


「現在、貴官らの後方には兵站部隊が展開している。本作戦にとって重要であることは貴官にも理解してもらえるものと思う」

 

 兵站部隊。侵攻軍である王国軍は常に兵站を持ち続けなければならない。クルトたちか、兵站かとなれば間違いなく兵站になるであろう。


「ウルフ八四、了。増援は、いつ頃来れる?」

「六〇〇秒後に第十四遺物レリック大隊が到着予定。貴官らに神の御加護があらんことを」

 簡単に言われた六〇〇秒は、この戦力差では途方もない時間である。しかし、この命令は、軍の優先順位から導き出された合理的な命令だ。クルトたちに拒否権はない。

「了。王国に栄光あれ」

 そう締めくくると、クルトは命令を達成するための思考に切り替えた。


 クルトの頭脳は、ありとあらゆる可能性を瞬時に考え、導き出された最適解を実行に移す。

「小隊長から各機へ。わが隊はこれより、侵攻する敵遺物レリック中隊に対する遅滞戦闘に移行する」

「やっと戦えるんですね、小隊長殿」

 アレクシスは、それを聞いて今までより活気のある声になる。一〇分後には、死んでいる可能性の方が高いのに。


 手短に作戦指示を出し、各機が指定された地点に向かったことを確認するとクルトも、迎撃地点へと向かい出した。


 もう一度アートランチスの遺物を確認する。今度は、前よりも距離が近くなったことでその詳細が確認できた。

 特徴的な、深紅の機体に大きな二本の角を備えたその機体は、共和国が保有するアートランチスの遺物としては三番目に発掘された「ミノタウロス」で間違いない。

 アートランチスの遺物オリジナルは、模造品コピーでは再現できなかった特徴を三つ持つ。

 まず、けた違いな馬力の永久機関。アートランチスの遺物は、永久機関のおかげで補給を必要としない。


 さらに必ず固有の攻撃手段を持っている。世界でもっとも有名なアートランチスの遺物であるノナは、特殊な音波によって兵士の無効かまたは、錯乱を引き起こさせることができることが知られている。


 最後に自己修復能力である。ダメージを負っても周囲のものを取り込んで修復していくのである。


 遺物パイロット教育では、アートランチスの遺物の倒し方として、パイロットの殺傷か脚部の破壊を推奨している。いくら自己修復をするとしても瞬時に治るわけではないので、脚部破壊による行動不能を狙ったものだ。


 さらに、一定以上のダメージを負うと修復を優先するようになるため、そのほかの機能を停止することが確認されている。


 クルトが知識の反芻を終えると敵が攻撃圏内に入ろうとしていた。

「各機、作戦指示通りに行動するように。王国に栄光あれ」

「「王国に栄光あれ」」

 構えた銃を握りなおす。モニターには、敵が大きく映っている。頃合いだ。

「射撃開始!」

 攻撃命令が言い終わる前に爆音が戦場に鳴り響いた。

読んでいただき誠にありがとうございます。

作者のやる気保持のため感想・レビューを書いていただきたいです。

なお、ブクマ、ポイント評価をされたら話の内容が10倍面白くなる予定です。

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