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最強の海軍 4

「アルトー元帥閣下、先ほどのご命令の意図をお教え願います!」


 ポワブールは、王国軍の新たなアートランチスの遺物との戦闘中に発せられた命令の真意を聞こうと無線にかぶりついていた。


『現在交戦中の全遺物レリック部隊は、地点一二四八まで後退せよ』


 アルトー元帥閣下から直接下された命令によってポワブールは、指揮官を王国軍の攻撃で亡くした見方を見捨てて撤退を行ったのだ。

 この命令の理由如何によっては、命令違反による銃殺も覚悟のうえで、今すぐに機体を反転させ来た道を戻るつもりでいる。


「少佐、まずは落ち着くんだ。部下にも聞こえているのだぞ」


 静かな声色でアルトー閣下が直々に無線で返答を返してくる。


「少佐、質問だ。国家とは何だね?」

「元帥閣下、小官は閣下と国家論について語ろうというのではないのです。もしも閣下が命令の意図をお答えできないのというのであれば、今すぐいまだ奮戦しているであろう味方の元に救援に向かわせていただきます!」


 既に共和国の敗北は決定的なものになっているというのに、その国の軍隊のトップがのんきに部下と国家論について論ずるなどどうかしている。


「これは、先の命令についての重要な質問だ。私は、しっかりと君の質問に答える用意がある。君も私の質問に答えるべきだ」


 ポワブールは、渋々ながら閣下の質問についての答えを考える。


「国家とは、国土、国民、主権を持つ社会的共同体だと思います」


 将校として士官学校や軍大学で学んだポワブールにしてみれば国家の構成要素など簡単にこたえられるものだ。


「いいや、違うぞ少佐」


 少しでも学のあるものなら答えられる簡単な間違えようのない問題の答えを、軍のトップにまで上り詰めた男が違うとのたまっている。


「確かに、少佐の言う通りその三つが国家を構成しているとされている。しかし、実際は違うと私は考えている」


 アルトー閣下が何を言おうとしているのかがポワブールには理解することができない。


「元帥閣下。軍大学の法学においてしっかりと明記されていることを述べたのですが…」

「それは、通常の国家成立に必要な構成要素だ。戦時下において国家の構成要素として必要なのは、軍と政府だ」


 無線の先で語る声の主は、そのまま持論を語り続ける。


「戦争中において、国土、国民は常に相手に奪われていくものだ。ならば後々取り返せばいいだけのことなのだ。主権についても元々あったのだから問題ない。であれば、国家を運営していく政府と敵と戦うための軍さえいれば国家としてのありていをなしていると言えるとは思わないか?」


 確かに、アルトー閣下の言っていることは間違ってはいない。戦争中は国土・国民共に奪い奪われするものだ。主権も宣戦布告による正式なものならば、宣戦布告自体が相手国の主権を認めていると言える。


「しかし、このまま撤退しながら戦争を続けても、いつか軍も政府も存在することができなくなってしまうのではないでしょうか?」


 軍隊を養うための土地と収益がなければ政府は、成り立たなくなってしまう。


「そこで、今回の命令の根源にたどり着くのだ。王国が容易に攻め込むことができない場所を見つけたのだよ」

「王国が容易に攻め込めない場所ですか…」


 もしも本当にそんな場所があるのであれば、最初からそこに立てこもればよいのであって、そんな場所がどこにもないことなど子供でも知っていることだ。


「…そんな場所はないと僭越ながら小官は具申せざるおえません」


 しかし、アルトー閣下は意外にも大きな声で笑いながら、ポワブールの予想のはるか上をいく回答を口にしたのだ。


「確かにあの堅牢なアルペンジェラヴ要塞も攻略されてしまった共和国内には残念ながらそんな場所はない。しかし、海の向こうのシスリー連合王国までは王国も簡単には攻め込めまい」


 ポワブールは、意外すぎるアルトー閣下の答えに開いた口がなかなか閉めることができない。


「ダメもとで参戦の打診をしていたシスリー連合王国からついに返事があったのだ。共和国陣営で参戦するという連絡だ」


 つまり、我々の味方として世界最強の海軍を持つシスリー連合王国がローゼニア王国に対して宣戦布告をしてくれたということになる。


「我々は、今から連合王国の輸送船に乗って、海の向こうで反撃の機会をうかがうのだ。政府要人と共和国軍合計十四万人が海を渡る用意ができている」


 まさしく闇夜を照らす一筋の光が現れたということだろう。


 しかし、ポワブールには一点確認しなくてはならないことがある。


「その中に、今も戦う二十九軍などの部隊は残していくのですか? 国民ももちろん連れていくのですよね?」


 今も首都を防衛するために命を賭して戦っている味方を残して自分だけおめおめと安全地帯に逃げるなどポワブールにはできない。


「もちろん、後から向かってくる。心配するな」

「そうですか。それならよかったです。この後は、示された地点にて首都からの離脱組と合流すればよろしいのですね?」


 他の軍人や国民も逃げることができるのであれば、後はできる限り素早く移動するための段取りをとらなくてはならない。


「それでよい。既に連合王国は、王国軍に宣戦布告をしているため王国軍も上陸地点に向かってくると考えられる。少佐ら遺物レリック部隊は、輸送船に乗るまでの間王国軍の足止めを主に行ってもらう。集成遺物レリック部隊の指揮は少佐が執ってくれ。よろしく頼んだぞ」

「了解いたしました。共和国のために命を賭して働かせていただきます!」


 今、地点一二四八に向かっている遺物レリックの数は、総勢で百機。二個大隊規模だ。これだけの数がいれば、いかに精強な王国軍であってもたやすく突破できるはずがない。


 ポワブールは、新たな任務がここ最近のような先のない任務ではなく、共和国の未来を照らすものであることに喜びを感じていた。

今回は久しぶりの共和国軍少佐・ポワブールの視線で書かれています。

少しの間、彼の視線で物語は進んでいく予定ですので会付き合いください。

この作品について、ご意見がある方、誤字脱字を見つけた方がおりましたら感想などにて教えていただけますと幸いです。評価、ブクマ、レビューもよろしくお願いします。

勝手になろうランキングの方もよろしくお願いします。


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