更正王女様5歳が参る!
お久し振りです。
楽しんで頂ければ、幸いです。
尚、主人公は5歳らしくありません。色々と残念な仕上がりになっておりますが、スルーして下さいませ。
昔、昔。
ある所に、とても平和な国がありました。この国は歴史が古く、周りの国とも仲良しです。
そんな王国には、知恵の神様の加護を貰った王女様がおりました。初めてパーティーに参加する王女様は、それはそれは楽しみにしておりました。
これは、そんな王女様の初パーティーで起こった出来事のお話。
◇◇◇◇◇
ごきげんよう、皆様。
私は、この国の第一王女で、ティナリアと申します。年は5歳になります。本日、初めてのパーティー、つまりパーティーデビューの日なのです♪
そして、そんな私の初めてのパーティーを、見事に台無しにしてくれた目の前の皆様には、私の八つ当たりくらい、許されますわよね?
だって、私はこの日の為に、寝る間を惜しんで勉学やら何やら頑張ったんですもの! 5歳の私が!
何せ、騒動の最初の言葉が、コレですわよ…………?
「「「「貴様との婚約は破棄する!!…………え?」」」」
何故かピッタリと息を合わせた御子息様方は、言い終わったら、今度はキョトンと、隣やら左右のお仲間を見て絶句。何でお前が!? という感じで、彼らは固まっていました。
「みんな! どうしたの? 私は大丈夫だから」
そんな彼らの場に、また一人。間違いなく、今回の元凶ですわよね? よくも私の苦労を無駄にしてくれるような真似をしてくれるじゃありませんか。国家反逆罪でもしてやろうかしら? それとも死刑台? きっちりと絞めてやりますわ!
「お父様、お母様、お兄様方、お姉様方、私、彼らとお話したいですわぁ」
ニヤリと子供らしくない笑顔、ただし目は笑っていない私を見た両親は、顔を引きつらせつつも、許可をしていただけました。お兄様方とお姉様方もいい笑顔です♪ ウフフ、ウフフフ。私のこの日の為の苦労を、よくも無下にしてくれたわねぇ?
奴ら、許すまじ!!!
さて、別室に呼ばれたのは9人。何故呼ばれたか分かっているらしい、婚約破棄を言い渡された令嬢達と、意味が分かっていない御子息達と、もう一人。可愛らしい、毒婦がおりましたわ。
「皆様、ごきげんよう―――――本日は私、ティナリアのデビューを滅茶苦茶にしてくれたみたいですわねぇ? あなた方は、私に恨みでも? それとも王家に対してかしらぁ?」
そう開口一番に言えば、男達は真っ青になりましたが、相手が幼い私と見て、どこか安心してるみたいですわね? 令嬢達は、この状況を理解し頭を抱えつつも、素直に私に対して頭を下げていますのに……………。本当にボンクラ相手は大変ですわね、お姉様方。同情致しますわ。
「姫様、ご不快にさせた事は、心より謝罪致します、しかし我々にも理由がありまして」
御子息の一人、確か貴族図鑑に載っていた公爵家のバカ息子でしたわね。三男でしたか。優秀と言われていますが、こんな事をやらかした奴等、バカ息子で十分ですわ! 因みに、長男様と次男様はとても立派な方々で、来る途中の廊下で、お説教をお願いされました。きっと許せなかったのでしょうね? いい笑顔だったのは…………えぇ、気のせいですわね。
「まあ! あなた方の私用で私のパーティーを邪魔したのですか!?」
そう叫べば、流石に不味いとは思ったのか、顔を強ばらせる男達。まあ、それだけなのが、残念バカ息子の所以ですわね。普通は理解したら、青ざめますわよ?
「あなた方は、私達王家を何だと思っているのかしら? きっとバカにしているから、そんな事が出来るのよね? 分かりましたわ、お父様達には、そう伝えますわ」
そう言ってやれば、男達は見事に固まりました。私、王女でしてよ? 私が楽しみにしていたパーティーを潰した罰は、しっかりと取ってもらいますわ(笑)
「で、あんなバカな真似をした理由は何ですの?」
婚約破棄なんてすれば、バカ息子達は間違いなく、家から勘当されるでしょうに…………。バカですの? 冷めた目になるのは、仕方ありませんわ。だって、5歳の私だって分かる事ですわよ?
「「「「それは、マリアをこいつが虐めたからです!……………え?」」」」
あら、またハモリましたわ。で、またしてもキョトンと仲間を見てる。あらあら、もしかして?
「皆様、先程から何故、不思議そうに周りを見ているのです?」
そう、まるで分かっていないのは、彼らみたいですわね。
「……………マリアが、内密で相談してくれたのです、私の婚約者がマリアを虐めていると」
「「「はっ!? 僕もですよ!?」」」
あらあら? 何故か、ハモッたバカ息子達。やっぱり、そうなのね? これは彼女に聞いた方がいいようですね。
「マリア嬢だったかしら? どういう事か説明してくれる? どうして彼ら全員が婚約破棄なんて、バカな真似をしたのか、言えるわよね?」
ニッコリと笑って見せたら、何故かマリア嬢、泣きそうになっているのですが………………。
え? 5歳の子供にソレ、します? 上目遣いで、ヒクリと怯えて見せる姿は、確かに可愛くて、思わず守ってあげたくなりますわね。それは5歳の私にも分かりますわ。
でも、その反応は間違いですわよ?
「何故、答えないのです? ―――――――貴方、礼儀作法も出来ないんですの? 5歳の私でさえ、学んだのに?」
そう言われて、初めて自分がマズい立場である事は気がついたみたいですわ。恐らく、5歳の私が相手ならどうにでもなる、なんて考えているのでしょうけれど、間違いですわよ?
「まあ! 男性は見る目がありませんのね? 5歳の私でさえ、出来る事が出来ないなんて! これで貴族令嬢だなんて、笑わせますわ」
皮肉げに言えば、男性達は一種怒りを向けて来ましたが、常識ですわよ? こんな事。それに比べ、お姉様方はいい笑顔で微笑んでますわ。
「そもそも、婚約者がいる身で他の女性にちょっかいかけるとか、あり得ませんわ! そうそう、来る途中の廊下で、各御家の当主様達より私に説教して欲しいと頼まれましたの♪ 5歳の子供に説教されるなんて………………5歳児以下って事ですわよね? いい年して、子供に説教されるんですもの!」
そうバラせば、流石に顔色が悪くなる男性陣。ウフフ、5歳児に説教される大人。きっと暫らくは、笑い者にされますわね?
「そうそう、まだありましたわ! 男性陣の皆様? 婚約者のお姉様方と仲良くしないと、家から追放するそうですから、頑張ってくださいね?」
「「「「えっ!?」」」」
あら、当たり前の事を言ったのに、何を驚いているのかしら? 笑うしかないわ!
「後ね? マリア嬢? 貴女は、尻軽女として、今現在、社交界の笑い者になっていますわ、お陰で貴女のご両親は可哀想な事になっていますけれど、気付いてないの?」
可哀想に、マリア嬢のご両親たる男爵夫婦は、今現在、社交界では哀れみを持たれていますわ。まともな神経をしていたら、家に迷惑なんてかけないはずですもの。ご夫妻がまともであるが故に、哀れみを持たれているで済んでいるのですわ。普通なら、御家没落のカウントダウンですわよ?
「っ! わ、わたくしはただ、彼らとはお友達としてっ、仲がいいだけですっ! お友達と仲良くして、何が悪いんですか!?」
へぇー、まだ言いますのね? それも、私、健気に言い返してます! と言わんばかりに、可愛らしい姿ですわね。ただし、私のお説教を控えた男性陣は味方につけないみたいですれけど。流石に、バカでも貴族だけあって、空気は読めるみたいですわね。ちょっとだけ、認めなくもないですわ。
「あら………、男爵令嬢は私に言っているのかしら? 王女である私に?」
男爵令嬢と王女、どちらが偉いかなんて、誰でも分かるでしょうに。
「お友達と言えど、不適切な関わりは自分の首を締める存在にしかなりませんわ……………、衛兵、この者を牢へ、処遇が決まるまで入れておきなさい」
これでも私、とーっても機嫌が悪いのです。当然ですわ。私の今までの努力をこいつらが潰したんですもの! 八つ当たりくらい、させてもらいますわ。
「なっ!? 牢へなんて、横暴ですっ!」
衛兵に押さえられながら、彼女が喚きますが、気付いてないのかしら? 身分制度の事を考えれば、こうなっても当然なのですが。
「男爵令嬢風情が、ここにいる身分の者達に口答え出来る訳がありませんでしょう? 不敬罪になるのは当然ですわ」
私は王女です。此方のお姉様方も公爵令嬢を筆頭に、侯爵令嬢、伯爵令嬢、辺境伯令嬢…………と、かなりの豪華面子が揃ってますわ。御子息方だって、バカバカ言ってますが、公爵筆頭家の御子息を筆頭に、侯爵子息、伯爵子息、子爵子息と、男爵令嬢が口答え出来る相手なんて、一人もいないのです。だというのに、愚かにもバカ息子達は、それを許してしまったのですわ。貴族ならば、貴族でありたいならば、許されないそれを。
勿論、結婚するための方法はあります。彼女を相応しい家と養子縁組みをすればいいのです。けれど今回の騒動で、それは潰えました。当然です。誰が好き好んで、問題児を養子にしますか?
「さて、御子息方? お説教と参りましょうか?」
ニッコリ笑った私に、御子息方が涙目になったのは…………不可抗力と思いましょう。
◇◇◇◇◇
この後、王女のデビューを邪魔したとされる御子息達は、社交界ですっかり笑い者になりました。5歳児に説教され、自分達が5歳児以下と証明してしまったのですから。彼らはこれを気に、心を入れ替え、公私伴に真面目になったそうです。騒動で迷惑をかけた令嬢達とも仲良りはしたとの事です。しかし、何年たっても、5歳児の王女に説教されたと言う不名誉な名誉は消えず、生涯彼らを縛り続けたのでした。
そして、件の男爵令嬢は、規律の厳しい修道院へ行く事になりました。やはり、躾は不可能であったようで、令嬢は生涯を修道院で暮らしたそうです。時々、意味不明な言葉を発したと記録されています。
さて、彼らを更正させた王女様は、16歳で公爵家に降下し、3男2女を出産し、幸せな家庭を築いたそうです。生涯に渡り、彼女は更正の王女と呼ばれ、問題児を何人も更正させたと、歴史書には記されています。
これは遠い遠い国の、昔のお話。
お読み頂き、本当にありがとうございます。
お久し振りな方も、初めましての方も、ど〜も〜、秋月煉です。
本日のコンセプトは『浮気者には天誅を』。きっと浮気した方々は、いい薬になるのでは(笑)
本来なら、5歳らしくするはずが、全く5歳らしくなりませんでした。アハハ…………。
突飛な思いつきで書いた、このお話。楽しんで頂けましたでしょうか?
楽しんで頂けたら嬉しいです。
それではまたお会いしましょう。