第7話 入部試験の真相
マネージャー入部試験の翌日の放課後、合格したマネージャーが部活に出てきた。
俺が着替えを終わらせてグランドに出ると3人はすでに来ていて、ベンチに座っていた。
「マネージャーに決まった人?」
俺は3人に声をかけた。
そうしたら一番近くに座っていたのが、
「あ、はい。水島由紀です。よろしくお願いします」
と言った。
しかし今更説明される必要も無かった。
「お前は知ってるよ。クラスで席が近くだろうが」
と言うと、
「あっ、なんだ谷川君か。違う人に見えた」
と先ほどとは態度がさっと変わった。
「ったく。でそっちのお二人は?」
俺は残りの2人に自己紹介を促した。
「宮原絵里です。これからよろしくお願いします」
おとなしそうな人だ。
きれいでスタイルも見た感じよさそう。
多分この人はもてるタイプだ。
「小松沙織です。よろしくお願いします」
なんかもっとおとなしそうな人だ。
顔はかわいいと思うけど緊張してるのかすごいこわばってる。
あんまりマネージャーに向きそうなタイプとも思えないが…。
まあでもやることはしっかりやってくれそうではあるな。
そんなことを思いつつ2人にこれからよろしく、と言っておく。
そして俺は昨日のことを思い出し3人に聞いてみる。
「そういや入部試験って何やってたんだ?」
すると水島が、
「昨日のあれ?あれはずっとボール縫ってただけよ。1人15個で、どれだけ時間内で丁寧に縫えるかって」
と、ため息交じりに言う。
俺はやっぱりそうだったんだと思った。
「15個も縫わされてたのか。ってか昨日20人くらいいたよな?ということは軽く300個みんなで縫ったってことか」
俺がそう言うと水島が
「そういうことになるよね。なんで新しく出来たうちの学校の野球部にあんなに古いボールがたくさんあるんかね?」
と聞いてくる。
俺はふと初めて部室に入った時のことを思い出した。
そういえばあの時古いボールが大量に入った箱がいくつかあったのを見た気がする。
ここで俺はあの監督が入部試験なんてものをした理由が分かった。
あのじいさんは入部試験なんて言いながらただ古いボールの補修をさせただけなのだ。
おそらく縫ったボールなんていちいち見ていない。
マネージャーの人選もそんなに深く考えてはいないだろう。
まったく、詐欺師みたいなじいさんだ。
「あのボールは多分どっかの高校のお古だよ。あの監督は昔は超有名だった人だからいろんな高校に顔もきくだろうし」
俺がそういうと水島は少し驚いたようで、
「へぇ〜、そうなんだ。ただのどこにでもいるおじいちゃんかと思った」
と言った。
まぁ確かに高校野球が好きな奴じゃないとただのじいさんにしか見えないだろうな。
あの人が活躍してたのは相当前の話だし。
そんな話をしていると少しずつ部員がグランドに出て来始めた。
そろそろ始まるかな、と思ってグランドに行こうとすると、
「谷川君、うちら今日何しとけばいいんかね?」
と水島が聞いてくる。
「さぁ、ベンチにでも座っとけばいいんじゃない?どうせ今日も走るだけだし。多分しばらくこんな感じが続くからマネージャーは退屈だと思うよ」
と言ってグランドに出た。
案の定今日も走るだけだった。
女子達が一生懸命に縫ったボールが使われ始めたのはこれからさらに2週間も後のことだった。
更新が遅くなってすいません。次の更新も今週から来週にかけて期末テストがあるのでおそらく相当遅くなると思います。テスト勉強なんてどうせほとんどしませんが、宿題が悲惨なくらい多いのでそっちをまずは頑張ります。ご迷惑をおかけしますがこれからもよろしくお願いします。