第4話 練習初日
「1・2・3、2・2・3、3・2……」
もう1時間はこの掛け声で延々と走っている。
一体今は何周目だろうか。
はじめは揃えていた足もだんだんバラバラになり、今はまったく揃っていない。
表情も余裕があるのは数人であとはもう限界を超えましたって感じだ。
まぁ、運動部にいた奴でも引退してから半年近い。
久しぶりに走るんだからきついのは当たり前だ。
「よし。あと1周したら帰って来んさい。」
ベンチの前を通るとき監督が言った。
やっと終わりだ、とみんなが安堵する様子が見て取れた。
心なしか掛け声も少し大きくなった気がする。
俺も正直言ってうれしい。
どうも同じところをぐるぐる回る走りこみは嫌いだ。
どこか単調な感じで、景色も変わらないから見飽きてしまう。
どうせ走るのなら学校の外に出て道路を走る方がまだ楽しい。
そして1周走り終えてベンチに戻ると監督が俺達は円に座らせて言った。
「お疲れさん。今お前らは大体10キロちょっと走ったわけだが、それでこんだけくたびれとる
(疲れている)ようじゃまだまだじゃな。これからしばらくの間はボールには触らさん。しっかり走りこんで体力つけんと試合は出来ん。今日は小手調べということでここまでとしておく。この後しっかり整理体操やって疲れを明日に残さんようにしておけよ。それじゃあグランドに礼して整理体操に入れ」
ため息が聞こえる。
俺もがっかりだ。
昭和の頃、すごく厳しい野球部では新入部員はなかなかボールに触らせてもらえなかったとどこかで聞いたことがあるが自分がそうなってしまうとは思わなかった。
体力づくりが重要なのは分かっているがやはり面白くない。
やっぱり野球はグランドで思いっ切り打ったり投げたりするものだ。
ただ走るだけなら陸上部と変わらない。
ここでがっかりしていても仕方ない、そう思って整列しにいこうとした時1人の部員が言った。
「監督、そういえばキャプテンは決めないんですか?」
全員が言った奴の方を振り向いた。
「キャプテンを決めないといろいろ面倒だったりすると思うんですけど…」
確かに言われてみればキャプテンを決めていなかった。
キャプテンは重要だからそう簡単に決めるものでもないがとりあえず仮のキャプテンでも決めないと監督達が全員部活に出れない時とかに練習がスムーズに進まないだろう。
しばらく監督はだまっていたが、どうやら俺と同じことを思ったらしく、
「そうじゃの、正式なのはまた今度決めるとしてとりあえず仮のを決めとこう。え〜と、それじゃあお前らで後で話し合って決めておけ。キャプテンになった奴は職員室に部室の鍵を返しに行って川本先生に自分がなったと伝えておけ」
と言ってグランドを後にした。
俺達もグランドに礼をし、整理体操をした後部室に戻った。
「キャプテン決める前にまず自己紹介せん?俺まだ名前とか知らんのんじゃけど(知らないのだけど)」
キャプテンを決めるため部室の中で円に座ったとき、俺の隣にいた奴が言った。
みんなそれにうなずき、言いだした奴からということで先ほど発言した奴から始まった。
1話あたりの文の量はどのくらいが丁度いいのでしょうか?まだ良く分からないので毎回バラバラです。これから読みやすい量を探していきたいと思います。
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