第2話 運命の出会い
入部の手続きが始まったのは入学してから1週間が経ってからだった。
俺は入部届けをもらうとすぐ次の日に入部届けを出しに行った。
「失礼します、1年2組の谷川です。川本先生いらっしゃいますか?」
職員室に入るときは必ずクラス、学年、氏名を言いようのある先生の名前を言うのがルールらしい。
中学校のときもこうだったがいちいち面倒くさい。
まぁ職員室なんて遅れた提出物を出しに行くぐらいで、ほとんど近づかないし(近づきたくないし)別にいいが。
「俺が川本だ。なんの用だ?」
そう言って近づいてきたのはジャージ姿の男の先生だ。
歳は見た感じ30代で、背は普通で170くらい。
体育科の先生らしくそれなりに引き締まった体つきだ。
「野球部の入部届けを出しにきました。よろしくお願いします」
俺は持ってきた書類を渡した。
すると先生はさっと目を通して、
「早速入部か、嬉しいねぇ。すぐにでも部として活動したいがまだ届けてきたのは君だけで練習も何もできない。部室の鍵を借しておくから人数集まるまでしばらくは自主練をしておいてくれ」
やっぱりか。
さすがに今年から始まるできるかどうかもわからない部活に初日から出しに来る奴はいないみたいだ。
俺は鍵を受け取って職員室を後にした。
俺はバッグを持って部室に向かった。
体育館の前を通りかかると女子バレー部やバスケ部の掛け声やボールの跳ねる音が聞こえてくる。
ここは女子バレー部が強いことで有名らしく、かなりハードな練習のようだ。
掛け声に混じってコーチの怒声や檄を飛ばす声が聞こえてくる。
他にも演劇部の発声練習や卓球部のピンポン球が跳ねる音も聞こえてきた。
どこの部もしっかり部活をしているんだなと当たり前のことを思いながら体育館を通り過ぎた。
部室はわりと新しいらしく、床はきれいだった。
道具はまだほとんどビニール袋に入っていて段ボール箱も部屋に積み上げてある。
とりあえず俺は着替えてボールをさがした。
段ボール箱の中を見ると、新品の道具に混じってどこかの高校のお古と思われるかなり使い込まれた感じの大量の硬式ボールやキャッチャーのレガースも入っている。
それらを整理しながらふと棚の上をみるとかなり古い硬式ボールが飾ってあった。
サインが書いてあるがよく読めない。
とってみようかと思ったがかなり高いとこにあって手が届かないのでやめた。
俺は古いボールを1ケースもってグランドに入った。
かなり広いグランドで、レフトの向こうは山だがホームから80メートルはありそうだった。
ライトやセンターはサッカーのグランドがあるがそれでも十分な広さがとれそうだ。
しかし、今はサッカー部もまだ活動しておらず、陸上部が遠くの砂場のほうで幅跳びや棒高跳びをしている以外人はおらず、閑散としていた。
俺は予想以上に広かったグランドに満足しながらサードの横にあるベンチのところまで行った。
ベンチに腰掛け、グランドを眺めた。
バックネットは当然ちゃんとあるが、さすがにホームベースやマウンドはまだ整備してないらしい。
グランドもまだ固そうだし、部活がちゃんと始まってもしばらくはグランド整備に費やされるだろう。
さて、何をしようかと思って何気なくバックネットの方にふらっと行ってみるとそこにはマウンドが作ってあった。
グランド整備さえできてないのになぜブルペンだけ…?と思ったがありがたく使わせてもらうことにした。
ホームベースをベンチから持ってきてネットをその後ろにおいて投げ込みをはじめた。
俺は小学校の少年野球クラブ時代からずっとピッチャーで、もちろん高校でもやる。
他のポジションもそこなりのよさがあるのだろうが、俺はピッチャーしかする気がしない。
このマウンドで投げる気持ちよさというか、そういう感覚は他のポジションにはないだろう。
それにしても久しぶりにマウンドで投げる。
去年の夏引退してからは受験勉強ばっかで、終わった後は近くの公園で壁に向かって投げるだけだったから半年以上マウンドで投げてなかったことになる。
なにか懐かしい感じだ。
一箱投げて、ボールを拾いに行こうとすると後ろに視線を感じた。
振り返るとそこには1人の男子生徒が立っていた。
「ナイスピッチング」
彼はそういってこちらに歩いて来た。
「俺は古谷拓磨。忠海東中から来た。ポジションはキャッチャーだ。よろしくな」
野球用語が少し出てきましたが、分からない方は多いのでしょうか?少しずつルールとかについても解説を後書きとかでしていこうかなと考えたりもしています。
このような用語などの点も含めてご意見・ご感想を待っています。それらを下にどんどん改善してよりよい作品作りに励んでいきたいと思っています。よろしくお願いします。