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世界偉人伝★えらいひとのはなし!  作者: 拝 印篭 
第一章 立志編
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 第一話  島へ……

 漁船の上から、並走する客船のデッキを見上げていた。

 そこに佇む少女から、目が離せなくなっていた。

 間違いない。

 今、俺は初恋をしたのだと。

 少年は確信した。

 マセガキである。しかし、そんな勘違いを正当化できるほど、デッキの上の少女は神がかった美しさを披露していた。

 東海汽船「さるびあ丸」総t数5000t余り、全長120mほどの客船である。その本日の最終便。夕陽を受けた少女の金髪。染められたような不自然さの全くないナチュラルなストレートヘアーは、風にあおられ大きく揺れている。その下の顔は、遠目にも、ちっちゃ可愛えぇぇ! と唸ってしまうほど可憐で、しかし、憂いを湛えた瞳は、少女を実年齢より大人びて魅せている。年の頃は12~13歳位だろうか? この島に来るにしては、やや場違いな程フォーマルなえんじ色のワンピースと大きなつば広帽子が印象的である。

 逆光となっているため、よく見えないが、金髪碧眼の外人さんなのだろうなと、神童少年は妄想し、港に入ったら、真っ先に彼女のところに行こうと心に決めた。この機会を逃がしたら、男子一生の不覚である。年老いた船長に声をかける。


「なぁ、おっちゃん! あそこのデッキにいる可愛い外人さんさぁ……」


「んぁ?」


 咥えタバコの船長はデッキに目を向けると、


「誰もおらんぞ?」


 とのたまった。少女はそこにいなかった。




  その後、半分涙目で漁船が港につくや、さっきの少女を探しに乗船場へと駆け出した。


「洗剤一年分(×千載一遇だ)のチャンスうぅぅぅっ!」


 ようやく着岸したばかりの「さるびあ丸」からは、一番乗りだーっと、調子こいた小学生兄弟をつれた家族づれが最初に降りてきたところだった。

 7●pを飲みながら、待つことしばし、


(そういえば、前世でも、金髪フェチだったっけ……いや、待て! なんだ? 前世って?)


 そんな益体も無いことを考えていると、「さるびあ丸」は、復路を次の島へと移動を開始した。

 不覚!! ここで下りない可能性を考えてなかった。おろおろ狼狽してふしぎなおどりを踊っていると


「ねぇ、そこのあなた!」


 と、やたらと可愛い声で呼ばれた。振り向くと、長い金髪をツーテールに結んだきつい目つきの少女がいた。あれ? 雰囲気違わね? と訝しく思っていると、


「民宿 さくらだ ってとこに行きたいのだけど、場所を知らないかしら?」


 と尋ねられた。


「え? うちの客?」 


 正面を向いて尋ねてくる少女に 


「めーあいへるぷゆー?」


 と尋ねるのが精一杯だった。


「私は、れっきとした日本人よ!!」


 顔をまっかにして怒る少女は


「英語なんて離せないし、外国にも行ったことないわよ!」


 とキレキャラなのだろうか? 段々と顔が近づいてくる。

 よく見ると、瞳の色は日本人特有の茶系統である。が、カラコンを入れてるのか、瞳の中にハートマークが描かれている。顔が近すぎることに気づき、頬を染める少女に


「俺に、ホレた?」


 と、問うと、質問の意味を理解したのか、


「うわ、キモ」


 と蔑んだ目で見られた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 神津島は東京都心から南西約178kmの沖合に浮かぶ伊豆七島の一つである。

 行政区としては、神津島本島と銭洲(ぜにす)恩馳島(おんばせじま)祇苗島(ただなえじま)などの島嶼からなる、神津島村となる。面積は約18.87平方キロメートル、人口は1993年当時、1800人余りと、若年層を中心として減少傾向にある限界集落と化した状態であった。

 主な産業となるのは、観光と、漁業だが、そちらも、年齢層が高くなってきていたこともあり、当時の桜田少年は、そういった年寄りの漁船に乗り込み、漁業の補助をしながら、日銭を稼いでいたという。

 当時の日本で、そのような生活をしている少年がいることに、筆者は衝撃を受けたものであるが、当時世界を巡っていた筆者は、各地でそのような光景を実際目にしてきたこともあり、あぁ、日本にも、そういう世界があるのだと、思うことにしたのだ。

 誤解なき様、補足するが、彼は、不当に労働搾取されていたわけではない。常に正当な報酬をもらっていたそうである。彼が毎日そのような生活をしていた訳は、きちんとあるのである。

 更に、神津島は、その後、IT革命(笑)の波にのり、初期に高速通信網が整備され、インターネットの力で、観光客誘致に成功し、現在では、人口も1900人台まで回復している。 

~ジョー=コッカー記す~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「え? 民宿は廃業したの?」


「ああ、今年のはじめにうちのばあちゃんが心臓を悪くしてね」


 道案内がてら、島内の案内をして歩きながら、説明する。


「元々、網元だったんだけど、二年前にじいちゃんが亡くなってからは、漁が出来なくなってね。それからは、どうしてもって言う常連さんの為だけに営業してたんだけど」


 今年の正月に、ばあちゃんが心筋梗塞で倒れた時には、どうしようかと思ったものだ。


「本土に手術に行くために、お客さんを他の宿に手配して、ついでにさっさと廃業届も出しちゃったらしい。計画的な人だったんで、貯金はそこそこいっぱいあるけど、その日から、うちは、無職ってわけ」


 肩をすくめてみる。


「じゃあ、やえさんって人、ここには居ないの?」


「いや、二週間くらいで帰ってきて、うちで療養しているよ」


 ほっとした様子の少女は、集落のある方と、反対に歩き出した神童少年に訝しげな表情でついていく。


「町の方ではないの?」


「あぁ、こっちの砂浜に近いところにあるんだ」


 コンクリートの埠頭には、まだ働いている人もちらほらといるが、誰もが、少女をガン見している。そのくらいには、珍しい珍客だということだ。


「神坊、その可愛い子は誰だ?」とか、「悪さすんじゃねぇぞ!」とか、近所の人たちが口々にはやし立てるせいで、さすがに居たたまれない気持ちになってきた。

 それにしても、美少女を連れて歩くのが、こんなに気分がいいとは思わなかった。悪目立ちしている自覚もあるが、気にしたら負けだ。

 やがて、埠頭を抜けて海岸線の道をてくてく歩いていく。時間的にも日が暮れてすぐということもあり、人里から離れることに、少女の顔が、警戒色を発したように感じたので、心配無いと笑顔で告げたら、ビクッとされた。あれぇぇぇっ? 何か間違えたであろうか? 

 

「ところで、君名前は? どこから来たの? 俺は、桜田 神童、しし座のO型!」


 と、気を取り直して名乗ったら、ものっそい微妙な顔された。あぁ、あんたがあいつの…… って小声で呟いてるのが聞こえたが、スルーする。


橘 璃々(たちばな りり)、魚座のA型、こんど、あんたの兄妹になるらしいわよ」


 と、爆弾かましてきやがった!

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